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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第12話 不思議の芋の錬金術士
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胃袋はつかむもの、掃除は頼むもの

「ところで、りぼんさんに一つお願いがあるのですが…。お暇なときで構いませんから、アトリエの掃除をお願いできませんか?意外に思われるかもしれませんが、実はわたし、掃除が苦手な人なんです」

うん、見ればわかります。

「りぼんさんはメイドの仕事もなさるとお伺いしましたので、部屋の掃除もお手の物と思いまして。いかがでしょう?あまり多くは出せませんが、時給でお支払いいたします」

「掃除、ですか。この部屋を。マジで」

「いいじゃない。ギルドの仕事もりぼんの出番も毎日あるとは限らないし」

「この部屋を。マジで」

「わかりました。では、報酬に加えて食材またはまかないつきでいかがですか?」

クラリッサさんは、再びかがんで棚をがさごそ探し、透明なガラス瓶をわたしたちに見せました。ガラス瓶はオリーブ色の液体で満たされており、白い大きな塊が沈んでいます。

えっえっ、まさかホルマリン漬け…?

「ご安心ください、怪しいものではありません。この白い塊は牛肉です。低温の油で長時間煮た食品で、コンフィと言います」

「コンフィ…?わたしの知ってるコンフィと違う。油ぎとぎとの肉だったような…」

「さすがはりぼんさんです、ご存知でしたか。おそらく、りぼんさんのおっしゃるコンフィは美味しさを目的として作られたのでしょう。本来のコンフィは肉を十分に煮てからそのまま冷やし、固まった油脂で肉を覆って雑菌の侵入を防ぐことで長期保存を可能にした保存食なんです」

あの中性脂肪の強い味方が保存食だったとは知りませんでした。何を作るにもバターと生クリームを欠かさないフランス人のことですから、油好きが高じてついに油に漬けちゃったとばかり思っていました。

「このままソテーにしても美味しいのですが、おすすめは地元産の赤ワインとはちみつをたっぷり使ったデミグラスソースの煮込みハンバーグです。わたしは付け合わせに甘い卵焼きとソテーしたじゃがいもを添えて一緒に食べるのが大好きなんですよ」

「デミグラスソースの…!煮込みハンバーグ…!」

「ハンバーグってなに?」

「牛や豚の肉をミンチにしてよく練り、パン粉を混ぜて丸めて焼いた料理です。わたしの国では定番中の定番の料理です」

「肉をミンチに…おぇっ」

また肉と聞いただけで、アンジェリカは気持ち悪そうな顔になってえづきました。

「あら、肉はお嫌いでしたか?」

「ごめんなさい、肉とつく食材は魚も含めてちょっと苦手で…。小さい頃に父が狩ってきたうずらを解体するところを見てしまって、それ以来肉を見ると、うずらのふさふさの肌が剥がれて肉がむき出しになった瞬間を思い出してしまうの。

魚も、特に舌平目なんかただでさえ気味の悪い形をしてるのに、皮を剥ぐと目玉が残って、こっちを見ているようで…」

ああ、アンジェリカの気持ちはわからなくもないです。わたしもフランス料理の授業で、細長い舌のような形をした赤舌平目を初めて見たとき、舌平目には大変失礼ながら「キモっ」と口に出してしまいました。形だけならかれいに近いのですが、舌平目はかれいと違って三角形の尾ひれがありません。そこがどうにもだめでした。

でも、舌平目のデュグレレ風は美味しかったです(材料費がとんでもなかったけど)。一度美味しいとわかると気持ち悪いと思わなくなるから不思議です。

しかーし!アンジェリカには悪いけど煮込みハンバーグが食べたい!甘い卵焼きも食べたい!じゃがいもも食べたい!

というわけで。

「最低週1、ヘルプは都度相談でお願いします」

「まあ、ありがとうございます。それでは、いつでも作れるように準備しておきますね。うふふ」

「にへへ…」

ハンバーグ、ゲットだぜ!

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