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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第12話 不思議の芋の錬金術士
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片づけられない錬金術士

「…きったな」

アンジェリカがそう漏らしたのも無理はありません。アルストロメリアとラベンダーで飾られた扉の奥は、ひいき目に見ても「ごめ〜ん、ちょっと散らかっててさ。あ、適当に座って☆」では片づけられない有様でした。巨大な五右衛門風呂のような釜?が部屋の中央に陣取り、その周りの床にいくつもの汚れた雑巾が放置され、山積みになった分厚い本が鎮座し、くしゃくしゃに丸まった紙が散乱し、机の上には黒いインクがこびりついたペンが転がり、食べかけのりんごのタルト(ホールサイズだ…)はフォークが刺さったまま変色しています。

片づけられない女だったとは…。花の世話はまめなのに。というか、Gの発生はこれが原因では?

「散らかってて申し訳ありません。故郷にいた頃は、アトリエを常に綺麗にしておけと父によく叱られましたものですが、気が回らなくて」

クラリッサさんはたんすの引き出しを片っ端から開けて、がさごそと手でかき回しました。しかも手に取った物を戻すのではなく、ぽいぽいと床に落としています。

「あった。この鈴を持っていってください」

やっと見つけたお目当ては大きめのハンドベルでした。クラリッサさんがハンドベルを振ると、信じられないことに耳をつんざく大きさの音が部屋中に響き渡りました。

「な、なんなの!?」

アンジェリカは両耳を抑えたまま大声で叫びました。音が収まったあとも、耳がじんじんと痺れています。

「これは『黒い悪魔』を追い払うのに使われる特別な鈴です」

「黒い悪魔?」

「赤い頬と身軽さが特徴の熊です。今回採取をお願いしたい山では、ときどき出没するんです」

「く、熊!?そんな危険な場所に行けというんですか!?」

「黒い悪魔は、普段は大人しくて非常に臆病な魔物です。特に音に敏感で、定期的にこの鈴を鳴らせば寄ってきません」

「でも、熊は熊ですよね!?熊本のアイツと違って中の人はいませんよね!?」

「クマなんてわたしは初耳の魔物だけど、その鈴の音に怯えるくらい臆病なんでしょ?明るいうちに行って、長居せずにさっさと採取を済ませればいいじゃない。クラリッサさん、危険があるからには、報酬もそれなりと考えていいのかしら?」

「もちろんです。前回以上の報酬をお約束します」

「それなら引き受けましょう。今回の仕事は評価につながりそうだし」

「ええ…」

「ありがとうございます。明日にでもギルドに申請しておきますので、詳細はそちらで確認をお願いします」

「交渉成立ね。他に用はあるかしら?」

「前払いというわけではありませんが、お近づきの記しとしてじゃがいもをいくらかお分けします。ご夕食にどうぞ」

「ありがとう。りぼんは何かある?」

「あのう、あのお釜は一体何に使うんでしょう?お風呂…ではないですよね」

部屋の中央に鎮座する巨大な釜は、分厚い木の板でふたがしてありました。まるでかまどに設置するお釜みたいです。

「あの釜は錬金術に欠かせない仕事道具です」

「仕事道具…?」

「はい。釜に材料を入れ、混ぜてモノを生み出します。わたしの場合は薬ですね」

「ど、どういった原理で…?」

「ふふ、それは企業秘密です。魔法ではありません、とだけ言っておきます」

…もう考えるのをやめましょう。そういう世界もあるんだということでファイナルアンサーです。この世の中、自分の中の当たり前をアップデートしなきゃついていけません。

「ところで、りぼんさんに一つお願いがあるのですが…」

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