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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第12話 不思議の芋の錬金術士
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綺麗な花には虫が来る

「ここがわたしの自宅兼アトリエです」

クラリッサさんがアトリエと呼ぶその家は、童話の世界に入り込んだのかと錯覚しそうなくらいに華やかでした。

家の前に赤とオレンジの色を中心にした花々の鉢植えが並び、玄関ドアの中央をくり抜いてはめ込まれた菱形のガラスがラベンダーのフラワーリース(花を編んだ輪っかです)で飾られています。陽の光が照らす鉢植えの花の鮮やかな色が、わたしの中の錬金術士の怪しいイメージを一気に払拭しました。

「わぁ、綺麗。この鉢植えの花は…ゆりかな?つつじ?」

よく見ると、鉢植えの花のほとんどが同じ形の色違いの花でした。花びらが軽く外側に反ってトランペットの先端のような筒を形作り、中心の花びらに斑点模様があります。

「アルストロメリアです。リオンを出るとき、お向かいに住んでいた姉妹に種をいただいたんですよ。この花の香りを吸い込むと、街中が花で飾られたリオンを思い出します」

「きっと素敵な街なんでしょうね」

「ええ、自然に彩られた美しい街ですよ。特に秋の季節はかえでの紅葉が美しいの。今でも目を閉じれば、紅葉が舞い、落ち葉で敷き詰められた街並みが目に浮かびます。公園にピクニックに出かけて、メープルシロップを練り込んだふわふわのビスケットをいただくのが毎年の楽しみだったんですよ」

「想像するだけで楽しそう!でも、なぜこちらに越してきたんですか?」

「…人のみならず、花はあらゆる生きとし生けるものを惹きつけてやみません。その美しさは色鮮やかな鳥を、その芳しさはかわ…かわ…かわいらしい蝶やミツバチを誘います。そう、虫が寄ってきます…。蟻、ミミズ、ダンゴムシ、アブラムシ、ナメクジ、カタツムリ、てんとう虫、アオムシ、カメムシ、カマキリ、コバエ、そしてゴ…ああッ!口にするのもおぞましい!」

「…虫、苦手なんですね」

「虫に罪はありません。ありません…が、何度虫除けの芳香剤やハーブを置いても効果は長く続きませんでした。最後の手段として、強力な駆除剤を練り込んだだんごを開発したんです。このだんごを虫が食べると、死んでも体内に毒が残ります。死んだ虫を食べた他の虫も毒で死に、連鎖的に駆除できます」

「ああ、ホウ酸だんごの類ですね」

「あれは、だんごを家中に配置してから数日経ったときでした。

大仕事を終えた翌日の朝、アトリエの大掃除をしようと思って汗水垂らして大釜をずらすと、そこには大量のゴ…ゴ…ゴ…口にするのもおぞましいので、仮にGと呼びましょう。そのGが所狭しと並んで死んでいたのです。まさにだんごの成果でした」

「うわあ…」

「あまりに衝撃的な光景に身も心も固まっていると、突然天井からアシダカグモが何匹も落ちてきて、死んだGを捕まえて食べ始めたのです。さらに遊びにきていた猫たちも、Gの山に顔を突っ込んで美味しそうにむしゃむしゃ、むしゃむしゃ…。そのとき、わたしは慣れ親しんだ街を去る決心をしました」

「うわあ…」

「さて、立ち話はこの辺にして、中でお仕事についてお話ししましょう。どうぞお入りください」

クラリッサさんは改まってドアを開けました。すると、思いもよらぬ光景が目に飛び込んできました。

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