放課後ティータイム
アンジェリカはわたしたちを見つけると聞いてきました。あ、わたしと同じクッキーの袋を掲げてます。
「どなたかしら?」
「こないだの植物採集の依頼人の方」
「初めまして、錬金術士のクラリッサ・フォン・ベルツと申します。3ヶ月前にこちらに越してきました。リディス通りで錬金術のアトリエを経営しております。どうぞお見知り置きを」
「アンジェリカ・ペトラ・マクミランと申します。彼女はタカハシ・りぼん、わたし付きのメイドです」
「まあ、りぼんさんはアンジェリカさんのお付きだったんですか。どうりで振る舞いに気品があるはずです」
あからさまなお世辞でも実際に言われると嬉しいです。
アンジェリカはテーブルにあるティーカップをちらりと見ました。
「お茶のおかわりはいかがかしら?美味しいクッキーを買ってきたの」
「まあ、嬉しい。お言葉に甘えさせていただきます」」
「りぼん、お茶の用意をお願い」
「かしこまりました、お嬢様」
「…やっぱり砕けていいわ。気持ち悪い」
「お嬢様、本日の夕食は前菜ににんじんスティック、スープににんじんのポタージュ、メインににんじんのキッシュの健康優良メニューになっております」
「あなたクビ」
「お茶淹れてきます」
3人分のティーカップをてきぱきと用意しました。ティーカップを温めておき、お湯を満たしたポットに静かに茶葉を入れて蒸らします。だいぶこなれてきましたね、わたしも。
茶葉はアンジェリカの指示通りにアールグレイを選びました。アンジェリカは顔に似合わず、渋みのある銘柄が好きなようです(アールグレイは香りをつけたブレンド茶で、メーカーによって様々な味があるそうです)。
「粗茶でございます」
クラリッサさんはカップを軽く持ち上げ、上品な仕草で香りを吸い込みます。
「いい香り…。上質なアールグレイですね」
「ええ。違いのわかる方で嬉しいわ」
「ポンコツで悪かったな、でございます。こちら、お茶菓子にどうぞ」
さっき買ってきたばかりのクッキーを乗せた小皿を二人の前に置きました。
「あら?わたしの分は結構よ。みんなの分がなくなっちゃうわ」
「実は、偶然わたしも買ってきたの。また十分あるから大丈夫」
「なんか癪」
「お嬢様、お客様の前ではしたないですよ」
「あなたの顔には負けるわ」
「表に出やがれ、でございます」
クッキーを一口かじったクラリッサさんは、驚いた様子で言いました。
「美味しい!こんなに美味しいものを食べたのは久し…ぶり…で…」
と感激するや否や、クラリッサさんは突然力なく椅子から崩れ落ちました。
「ど、どうしました!?大丈夫ですか!?」
わたしとアンジェリカが慌てて駆け寄ると…ぐぐぅ〜、ぎゅう〜とお腹の虫の盛大な鳴き声が聞こえました。
「…お腹、空いてるんですか?」
「はい…。ここ三日、何も食べていなくて…」




