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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第11話 家庭用石臼式大豆粉砕機
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在りし日の石臼

お店に着くと、ルカさんは「ちょっと待っててくれ」と言って奥に引っ込みました。少しして、ルカさんはぶ厚い円柱型の石を肩に二つ担いで戻ってきました。見てるだけで疲れそうです。

石を床に置いて重ねると、ごりっとざらざらした音が出ました。

「何ですか、これ?」

「家庭用の石臼だ。豆でも籾でも手軽にすり潰せるぜ。中古だが充分使えるよ」

石臼…!

なるほど、その手がありましたか。使ったことも使う機会もありませんから思いつきませんでした。

「でも、お高いんでしょう?」

「わりといい石を使ってて高値をつけたいのはやまやまなんだが、安くしとくぜ。長年世話になった知り合いのばあちゃんが、息子夫婦の住む他の街に引っ越すってんで、ただ同然でくれたのよ。整備にかかる実費だけもらえればいいからよ」

「買った!」

「おう、まいどあり。あとでブルーベル荘に運んでおいてやるよ」

「おお、何から何までありがとうございます。ところで…どうやって使うんですか?」

「あ?あんた石臼見たことないのか?」

「(テレビで)見たことはありますが、使ったことは…」

「まったく最近の若いやつは…こうして道具は廃れていくんだ。手は動かすためにあるんだぞ」

「その発言、おじさんくさ〜い」

「いつかやってくるアンジェリカの結婚式でお前さんと会うのが今から楽しみだ」

「ア、アンジェリカはきっと早婚ですぅ。わたしも絶対ピッチピチですぅ」

「知ってるか?アンジェリカの家系は晩婚が多いんだ」

軽口を叩きながら、ルカさんは無駄のない手つきで石臼を組み立てました。円柱型の石を重ねて、上の石の側面の穴に直角に曲がった木の取っ手をつけ、木槌でカンカンと叩いて固定します。

「ここに穴があるだろ。この穴に材料を入れて、臼を反時計回りに回すんだ」

ルカさんは上の石の中央付近にある穴を指差し、取っ手を握ってゆっくり回してみせました。

「へ〜、時計回りに回すものだと思ってました」

「試してみな」

ではさっそくやらせていただきます。あ、筋肉痛がいたたたた…むむっ、できなくはありませんが、非常に回しづらいです。右利きの場合、腕を体全体で回すとなると、右腕を奥から手前に円をなぞるように水平に動かすには余計な力が入ってつらいです。例えるなら、菜箸を右手でグーのかたちで縦に握り、洗面器ほどの大きさの納豆のパックを腕全体で時計回りにかき混ぜる感じです。おわかりになりますでしょうか。…自分で言ってて気持ち悪くなってきた。

「おいおい、そんなに力いっぱい早く回しなさんな。ゆっくりやんな」

「でも、ちんたらしてると時間かかっちゃいますし」

「ペース配分を考えてやれと言いたいんじゃないんだ。ゆっくり回さないと石臼のよさが出ないんだよ。早く回すと摩擦熱が出て、挽いた粉の質が変わっちまうんだ。ウエンツでコーヒーを飲んだことはあるか?」

「入り浸ってますよ」

「なら、店員が小さなコーヒーミルをゆっくり回して豆を挽くのを見たことあるだろ?あれも摩擦熱で味が変わるのを防ぐためなんだ」

なるほど、格式のある雰囲気を醸し出すために客に見せつけてるだけじゃなかったんですね。

このあと、石臼の洗い方などのメンテナンスの仕方を教えてもらいました。今日の仕事が終わったら配達してくれるそうで楽しみです。豆乳、おから、きなこ、大豆粉、夢(大げさか)が広がります。あ、石臼と言えば、こっちにそばの実はあるのかな?気に留めておきましょう。

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