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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第11話 家庭用石臼式大豆粉砕機
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テルマエ・フロレンティア(後編)

「は、はい。どうしてわかったんですか?」

「常連は座る前に火鉢に水をかけるのよ。こうやって」

おばさんは再び火鉢に水をかけました。

「そ、そうですか。すみません」

「別に堅苦しいマナーじゃないから安心して。慣れた人の手癖みたいなものよ」

ほう…。試しにわたしも真似をして水をかけてみました。うわ、噴き上がった蒸気があっつい!あっついけど、確かに癖になりそうな熱さです。

「初めては無理しちゃだめよ。『もう少し』と思ったらがんばらずに上がりなさい」

結局ーー初めての蒸し風呂は5分と持ちませんでした。おばさんにアドバイスのお礼を言ってふらふらになってお風呂を出ました。テレビじゃこのあとに芸人が極寒の湖に飛び込むのが定番ですが、あれやって病院送りにならないのが不思議です。


木のシャッターをくぐって戻りますと、そばに大量の水が張ってある水風呂がありました。蒸し風呂のあとは、この水を桶ですくって汗を流すようです(あやうく飛び込みそうになりました)。毛穴に詰まった汗と土がばっちり流れ出てすっきりです。欲を言えばやっぱり湯船に浸かりたいなあ…。

ん、水風呂の脇に看板が立てかけてあります。なになに…銭湯を出て右手に水屋あり?水ならここでも飲めるけど…何のお店だろ?


ベンチにうつ伏せになって背中に何かを塗ってもらっている人がいました。そこからバラの香りが漂ってきます。あれは香油を塗ってもらっているそうです。そうです、というのは、これからわたしは料理をしないとならないので、強いにおいのする化粧品は避けました。でも、マッサージも兼ねているようですごく気持ちよさそうで羨ましい…。後ろ髪を引かれる思いで銭湯をあとにしました。


心身共にリフレッシュしたら、世の中のすべてが美しく見えました。朝陽が眩しく、通りのお店の客引きの声が楽し…ん?オープンテラスのお店のおばさんがこっちを見て何か言ってます。

「お姉さん、ちょっと寄っていかない?いい水あるよ!」

真昼間からキャバクラですか?ここそういうとこ?ベンチに座っているおじさんがぐっと飲んでいるコップの中身ってお酒?

いや、おばさんは水って言いました。…あ、水風呂の脇にあった看板はここのことかな?

ものは試し、一杯買ってみました。渡されたコップを覗くと、おや、ぽこぽこと泡が出ています。これは…炭酸水?

ずずっと一口啜ってみると、やっぱり炭酸水でした。それもただの炭酸水ではありません。冷たい!のです。しかもほんのり甘じょっぱく、サイダーみたいで喉越し爽快です。蒸し風呂で火照った五臓六腑に染み渡ります。水屋とはその名の通り水を売ってるお店なんですね。見れば銭湯から直行する人が頻繁に訪れて、あらかじめ握りしめていた硬貨をおばさんに渡すと同時にコップをもらい、その場で一気にあおってコップを返し、げっぷしながら去る光景が珍しくありません。まるで江戸っ子です(知らないけど)。確かにこれはくせになる美味しさです。

飲みながらおばさんに水の出所を聞いてみると、秘密だと自信ありげに笑って教えてくれませんでした。なんでも水源の場所がばれないように、夜明け前の暗いうちに汲んでくるそうです。おばさんの商売上手に感心しました。

「おいおいじいちゃん、やめとけって、年寄りなんだから無理すんなよ」

「黙っとれルカ。わしゃまだまだ若いもんには負けんわ」

ちょっとした喧騒と聞き覚えのある声がうしろから聴こえてきました。

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