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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第10話 はじめてのおつかい
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夢と知りせば覚めざらましを

…夢を見ました。

わたしは銀髪を黒く染め直した彼に手を引かれ、あの禁断のお店に足を踏み入れました。あのお店は彼にとっては夢にまで見た憧れでしたが、しかし、わたしには生き地獄に等しい場所でした。彼はわたしの気持ちなど露知らず(言ってないし)、喜び勇んで由緒ある商品の数々を紹介してくれました。

綺麗に染めた銀髪がトレードマークだったちょいワルな彼は、「現地の生徒に絡まれるから戻しなさい」と生活指導の先生に言われて、修学旅行当日には黒髪になってました。その素直さのギャップにきゅんとしたわたしは、同じ班だったのがこれ幸いと、彼が家族旅行で訪れたことのある某県テーマパークの案内を自由時間に頼んだら、彼は顔を赤らめて一つ返事で引き受けてくれました。実は女子慣れしていなかったそんな姿にわたしはより一層きゅんとし、一緒に見て回る予定だった友だちに拝み倒してついに二人きりになれました。

「どこに行きたい?」と聞かれ、「オススメ教えて」と即答すると、あろうことか「チーズは好き?」と聞かれました。嫌な予感がしつつも、嬉しそうな彼の期待を裏切れなかったわたしは「好き!大好き!」と心にもない返事をするほかありませんでした。嘘も方便と言いますが、男子慣れしていないスクールカースト中の下女子の嘘は墓穴を掘る結果にしかなりません。


彼に連れていかれたのが、別名「チーズの熊本城」と(彼が勝手に)呼ぶ、あらゆる種類のチーズが置かれた、チーズマニアのチーズマニアによるチーズマニアのためのチーズ店でした。ドアが閉まっているのに、外からでも強烈な臭いが漂ってきます。もうそれだけでも気絶しそうな勢いです。

彼はわたしの反応を探りながら、くせの少ないチーズから順に紹介してくれました。でもダメです。わたしが耐えられるチーズは5つ、レアチーズケーキのクリームチーズ、マルゲリータのモッツァレラチーズ、チーズフォンデュのグリュイエールとエメンタール、パスタにかける粉末パルメザンチーズ(塊は無理です。別次元の臭いがします)のみです。チーズ好きの人が好んで食べるような、名のあるチーズはてんでだめです。

最初のうちは何とか耐えましたが、さらにロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトン…俗に言う三大ブルーチーズの試食のつまようじをいっぺんに持ってこられたとき、ついに限界を迎えました。トイレに飛び込んでキラキラ、キラキラキラ…。


「…きなさい。起きなさいったら」

頬をぺちぺちと叩かれる感触があります。ぺちぺち程度で眠気は治らず、されるがままでいると、今度は両側の頬を交互にぺしぺし叩かれて目が覚めました。

「やっと起きたわね。いつまで寝てるのよ」

「あ…?」

「よだれを拭きなさい。みっともない」

言われるがままに寝ぼけ眼で口を手の甲で拭いました。ああそうだ、わたしは疲れてしまって休憩をお願いして、座った途端に眠ってしまったのです。それにしても嫌なことを思い出しました…。


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