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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第10話 はじめてのおつかい
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ノー紅茶、ノーライフ

「たかだか2時間歩いたくらいで情けないわね。そろそろ行くわよ。もたもたしてるとお昼になっちゃう」

今朝は朝食もそこそこに宿を出て、依頼の薬草を採りに街の南にある山へ出発しました。日帰りだと聞いていたのでもっと近場かと思ったのですが、ここの人たちは元の世界と距離の感覚が違い過ぎました。休みなしで2時間も歩けば現代っ子は足が棒のようになります。そんなこんなで、アンジェリカに泣きついて休憩させてもらったのです。

車も自転車もないこの街の方々は非常に健脚で、細身のアンジェリカでもジョガー並みです。朝の電車に乗り遅れそうなサラリーマン並みの早足で歩き続けても全然疲れる気配がありません。それにしても、とてもお嬢様だとは思えない体力ですが、日々がんばってきた成果はそれなりにあったのでしょう。スカートで隠れた足は絶対大根足に違いありません。


しかし、この疲れはわたしの運動不足だけのせいないのです。

「半分はアンジェリカのせいですぅ。あんたの重い荷物を抱えて歩けば疲れますぅ。だいたい、この陶器の水筒が重過ぎるのよ。ステンレス…はまだないか、薄い鉄で作るとか、革袋を使えばいいじゃん」

わたしは今回の仕事に必要な装備の他にも、陶器でできた水筒を背負っていました。わざわざ重い上に壊れやすい陶器を歩きで持ち運ぶなんて頭に虫が湧いてます。しかも、白地に華やかな花が描かれたようなきらびやかなデザインではなく、赤茶色の地味な色をしています。あとから葵さんに聞いた話では、この地方では陶器作りの材料も技術も発展途上とのことでした。宿でアンジェリカが使っている乳白色のティーカップは、陶器・磁器製作において最新の技術を持つ遠方の東の地方の名産品だそうです。

「何度か試したわ。でも、鉄の水筒に入れた水で淹れた紅茶は色が変わっちゃうから嫌なの」

「ああ、鉄分か…」

最近は鉄分が手軽に摂れるからと鉄瓶でお茶を淹れる方もいらっしゃいますが、タンニンが含まれる紅茶は鉄分と相性がよくありません。鉄分がタンニンと結合して黒ずみ、紅茶の色がくすんでしまいます。

それにしても、外出先でも紅茶が飲みたいとは…さすがお嬢様です。

「いつも重たい水筒を持って遠出してたの?紅茶への執着心に感心するよ…」

はてさて、フランツさん率いるコーヒーショップがより一層繁盛したら、フロレンスはコーヒー文化と紅茶文化のどちらが勝者になるのでしょうか。なんとなくコーヒーが勝ちそうな予感がします。

「普段は現地調達ね。綺麗な川の水をようく煮沸して紅茶に使うわ」

「今日もそうしようよ…。現地に着く前に力尽きそう」

「今日は山の中での仕事で、近くに川がないのよ。それに、今回から荷物持ちがいるんだし」

「はいはい。つーか、どうしてメイド服で行かなきゃならないのよ。外出用の汚れてもいい仕事着とかないの?」

「そのほうが自分の立場を自覚できるでしょ。そのエプロンドレスを着てなければ、あなたは誰がどう見てもどこぞの馬の骨よ。感謝しなさい」

「こいつ…絶対にんじん食わせるからな」

「煽られて真っ赤になったマンドラゴラみたいな根菜なんか、引っこ抜かれて叫び苦しみのたうち回って滅べばいいわ」

そう言ってにんじんの存在をばっさり切り捨てたとき、アンジェリカのお腹がかわいい音を立てました。真っ赤になったのはクソ生意気な小娘のほうでした。

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