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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第9話 ソイ・ガストロノミー
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イン・ザ・豆乳スープ

宿に戻ったわたしはすぐにキッチンを借りて料理を始めました。もちろん不器用なわたしか粉から形作る食べ物を作るのは大騒ぎでしたが、中でも特に大変だったのはオーブンの使い方です。どんなオーブンでも場所によって火の当たり方や空気の流れに多少を問わずむらがあり、癖を理解しないと上手に焼き上がりません。

生焼けだったり焼き過ぎたりして試行錯誤を繰り返し、いくらかまともなものができたときは陽が傾き始めていました。もうオーブンの熱で汗だくです。


ちょうど夕食の支度が整った頃にアンジェリカが戻りました。テーブルの椅子にどっかと座り、わたしと負けず劣らず疲れている様子です。

「荷物が重かったわ…。消耗品を買い込もうと思ったのに、りぼんが先に帰っちゃうから。

で、何の用事だったの。くだらなかったら怒るわよ」

「ふふん、それは明日のお楽しみ。お昼は何食べた?」

「たまごサンドとりんごとミルクティー。サラダはお腹を壊すから食べないわ」

「え?まさかフランツさんのお店で痛んだ野菜が出てくるの?」

「違うわよ。わたし、生野菜が苦手なのよ。味以前に体質が合わないの。特に生の玉ねぎはだめ。お腹の調子が悪くなっちゃう」

なるほどなるほど、胃腸にも気を使う必要かあり、と。アンジェリカは決して稀な例ではなく、生野菜は冷たい水分を多く含むために体を内側から冷やします。

生玉ねぎの場合は、玉ねぎに含まれる硫化アリルという成分が胃腸を刺激します。硫化アリルは栄養分が豊富ですが、それでお腹を壊しては元も子もありません。アスリートの中には(衛生的な問題も含めて)生野菜を一切食べない方もいると聞いたことがあります。皆様方も胃腸が弱っているときは温野菜にしてはいかがでしょうか。

「あー、お腹空いた。夕食はまだなの?」

夕食と聞いて急に空腹を感じました。そう言えば、新しいメニュー作りに集中してお昼をまったく食べてません。

はっ、ということはオリバーくんもお昼寝抜き?と謝ったら、申し訳なさそうにパンとチーズを食べたと教えてくれました。必死に大豆の皮と格闘していたわたしが怖くて進言できなかったのかもしれないな…。


わたしもお腹がぺこぺこだったので、手早くスープを作りました。もちろん野菜はいい加減(アクセントは最初の『い』ですよ。お間違えなく!)にぶつ切りにした、わたしお得意の『ごろごろ野菜』です。

そしてストレートで飲むには大不評だった豆乳で野菜を煮込み、豆乳と野菜のスープの完成です。豆乳の先入観に囚われないように、わざと黙ってスープを出しました。

「いただきます」

4人揃っての食前の挨拶を終えると、わたしは皆さんがスープを啜るまでの様子をじっと見つめました。嬉しいことに、3人とも一口啜ったら眉間が緩みました。おし、とテーブルの下でガッツポーズです。

「これ、美味しいわね。何か特別な牛乳でも買ったの?いい香りだわ」

「いーえ、昼間の豆乳です。直接飲むのはきつくても、スープにすると美味しいでしょ?」

「へえ、あの青臭いトウニュウがねえ…」

オリバーくんもブラウンさんにも満足そうに食べてもらえました。もちろんパンは全粒粉製でビタミンB1、第2群の豆も1点摂れて栄養ばっちりです。欲を言えば肉や魚も食べさせたいところですが、しばらくは豆類でなんとかしましょう。

「今度からスープのベースはトウニュウになるのかしら?」

「それはちょっと…。豆乳を作るには手間も労力もかかるから。もうね、大変よ。まずは一晩水につけた大豆を細かく砕くんだけど、大豆の皮はめっちゃ固いの。貸してもらったすり鉢じゃ砕きにくくて、最初の工程だけでくたくただよ…。しばらくやりたくない」

「ふーん」

わたしたちは全粒粉の固い食事パンをちぎってはスープに浸し、ちぎってはスープに浸し、黙々と食べました。ブラウンさんも口数の多い人じゃないので、静かな夕食になりました。


本日のアンジェリカの献立

朝:ミルクティー、チーズ

昼(自己申告):たまごサンド、りんご1/4

夕:豆乳と野菜のスープ(にんじん※、かぶ、キャベツ、玉ねぎ)、全粒粉ロールパン、りんご1/4

※わたしが美味しくいただきました


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