バランスのよい食べ方 (点数計算編)
「さて、第1群から第4群まで、食品を4つに分類する方法を紹介しました。ここまでで食品の栄養素について説明しましたが、肝心の『バランス』を計算する方法はまだでした。
栄養と言うと、とかく『バランスよく』と判で押したように言われます。言う側も言われる側も適当に解釈しがちですが、四群点数法では、各群ごとに点数をつけて計算します」
「ってーと、たまごサンドならたまご3つで3点、パン2切れで2点、りんごをつけて1点、って感じか?」
「いえ、品数ではなくて、カロリーベースです。どの食品でも、80kcalを1点とします。食品によって80kcalになる分量は違いますので、品数と点数は関係ありません。
カロリーベースの点数をつけて、各群の割合が『3:3:3:11』、1日の合計が『20点』を目安にするのが基本です。推奨される各群の内訳は、
乳・乳製品2点、
卵1点、
肉・魚を組み合わせて2点、
豆1点、
野菜2点(本来は野菜1点、芋1点ですが、この世界に芋が見当たらないので以下略)、
果物1点、
穀物9点、
油脂1.5点、
砂糖1点、
です。ただし、砂糖は必須の栄養素ではありません。お菓子などの嗜好品は1点程度にしておきましょう、という意味です。
1点のカロリーが80kcalですから、20点は1600kcalです。運動強度の低い成人女性の1日分と考えてください。ここから、年齢、性別、体格、毎日の運動量などを考慮して点数を増減します。同じ運動強度の低い成人男性なら26点前後、約2300kcalが目安です」
ちなみに…400gを超える某超大盛りカップ焼きそばのカロリーは2142kcalです。1日分のカロリーに相当するからと言って、1日これ1食で済ませようなんて考えたらだめですよ。ミネラルもビタミンも全然足りませんからね。焼きそばの食べ過ぎで女神様に左遷されちゃった女との約束だぞ☆
「んんー…頭が痛くなりそうだ。食品をカロリーってやつで考えるそうだが、どうやって調べればいいんだ?」
「それはこの食品成分表…ま、魔術書アンジュルムに書いてあります」
恥ずかしい!恥ずかしい!恨むぞアンジェリカ!
「そいつはりぼんさんにしか読めないんじゃないのかい?」
「あ…」
言われてみればその通りです。日本語で書かれてるのでは、日本人にしか…あ。
「そうだ、日本人の葵さんなら読めるはずです!日本語で書かれていますから!」
「え、私?食品成分表の見方なんてわからないけど、いいの?」
「カロリーだけ読めれば大丈夫です。お願いします」
葵さんの前にアンジュルムこと食品成分表を置いて、適当なページを開きました。食品ごとにみっちりと成分が書かれており、ご丁寧に食品のイラストも添えてあります。
「…あら?」
「ど、どうしました?」
「全部黒く塗り潰されてて読めないわよ?」
葵さんはパラパラとページをめくります。
「え?」
「何か書かれていたようだけど、まるで情報公開請求で開示された行政文書みたいに真っ黒に塗り潰されてるわ。食品成分表ってこういうものなの?」
わたしもパラパラとページをめくってみましたが、黒塗りなんて一箇所も見当たりません。
「おかしいな、わたしには普通に文章とイラストが見えるのに」
「もしかして、りぼんちゃんだけが読めるんじゃないかしら。ええと、魔術書…なのよね?所有者以外に読めない魔法がかけられていても不思議じゃないんじゃない?」
女神様とか、と、葵さんはわたしにしか聞こえない小声で付け足しました。
フランツさんは頭のうしろで両手の指を組みました。
「ま、うちとしてはりぼんさんに監修してもらえばいいさ。とりあえず、素人は第1群から第3群を同じ割合で食べるように意識しておけばいいんだな」
「そうですね、はい…。で、ではわたしの話は以上です。長々と拝聴していただき、誠にありがとうございました」
わたしがややぐったり気味に頭を下げると、万雷の拍手が沸き起こりました。誰が何と言おうとわたしにとっては万雷の拍手です。無事終えられたと感じた途端、膝が抜けてじわりと涙すら出てきました。手の甲で目元を軽く拭いました。
ところが、皆さんの拍手がまばらになっても、なお拍手を続ける人がいました。少し白髪が混じった、見るからに落ち着きと威厳のあるナイスミドルでした。支部長より少し年齢が上に見えます。金ぴかに光るバッジのついたギルドの制服からすると、きっと役職のあるお偉いさんでしょう。
「ブラーヴァ!」
ナイスミドルは拍手をしながら立ち上がり、挑戦的かつ好戦的な目でわたしを見据えました。




