バランスのよい食べ方 (野菜・果物、穀物その他編)
「第3群は『野菜』と『果物』です。第1群、第2群が『体を作る』で、第3群は『体を保つ』です」
「野菜と果物が同じグループなのか?変わった組み合わせだな」
あ、本来は『芋』も含むのでよろしくお願いします。この街では芋類を見かけなかったので、もしかしたら存在しないかもしれません。変に突っ込んで混乱させたくありませんでした。
「共通点は『ビタミンC』を含む食品です。いくつかのビタミンは人が体内で作り出せるのですが、免疫力を上げて『体を保つ』ために必要不可欠なビタミンCは体内で作り出せません。そして、ビタミンCは野菜と果物にしか含まれていません。野菜も果物も口にしない生活の中で体調を崩しがちだったら、ビタミンC不足を疑ってみてもいいかもしれません」
「でも、一日に必要な野菜って、確か結構な量だったわよね。テレビで観…実際の量を見せてもらったことがあるけど、食べるのに疲れそうと思った覚えがあるわ」
「はい。先程触れましたが、野菜は一日に350g…えーと、100コール銀貨が1枚8gだから…銀貨が約44枚の重さと釣り合う量が推奨されています」
「銀貨44枚ねえ。野菜と銀貨の重さを比べてみたことがねえからピンと来ねえな。うちの仕入れは目分量だし。
一口に野菜と言うけど、どんな野菜を食えばいいんだ?」
「ぶっちゃけ、何でもいいです。普通はいくつもの野菜を少しずつ組み合わせて食べますよね。それで構いません。
もしも野菜のカロリーを種類別にいちいち計算してたら、それだけで一日が終わってしまいます。
「そうは言っても、野菜の量を考えてメニューを作るのは正直めんどくせえな」
「店長、うちの店にお見えになるお客様は、食事に付加価値を求めています。健康をテーマにしてお金をいただくからには、りぼんさんのアドバイスに従うべきです」
「わかってるよ。ばあちゃんに頼まれた店をいい加減な商売で潰すわけにはいかないからな。その辺はきちんとやるさ」
「一つ注意すべき点があります。ビタミンCは加熱したり水にさらすと減りやすいんです。野菜の中には苦味や臭みを取るために水で何度か洗う必要があるものがありますが、洗い過ぎるとビタミンCがどんどん減ってしまいます」
「ええ?でも生野菜がいいとは限らないんだったよな?」
「はい。繰り返しますが、生野菜は水分を含んでいるので、たくさん食べたつもりでも実際はたいした量にならないです。加熱調理してビタミンCが減っても、たくさん食べられれば十分です」
ちなみに芋類は加熱調理してもビタミンCが減りにくいという特徴があります。ただ、芋は糖質の塊でもあるので、食べ過ぎに気をつけましょう。あまり糖質を気にし過ぎるとカレーが食べられなくなりますけどね…。
「むむ…。さっき、野菜と果物の共通点はビタミンCだと言ってたよな。果物はどうなんだ?生でも食えるし、野菜の代わりになるんじゃないのか?」
「果物の場合、まさに生食がポイントです。ビタミンCなら果物は野菜よりずっと豊富で、しかも生で食べられますから、ビタミンCの摂取にぴったりです。
ですが、やっぱり果物一品に偏るのはよくないんです。野菜はビタミンCの他にも様々な栄養素が詰まっていますから、果物は野菜の代わりになりません」
「ほほう。フロレンスに昔から伝わることわざに、『咳の数だけりんごを食え』とある。風邪をひいたらりんごを食べさせよ、という意味だ。今では年寄りしか信じてないが、私も熱を出したときにはよくりんごを食べさせられたものだ」
「支部長さん、りんごはビタミンCが少ないらしいぜ。他で摂取したビタミンCの吸収を助ける効果があるとかで、キャベツの酢漬けと相性がいいって話だったが」
「そうなのか?しかし、私は今でも風邪気味になるとりんごを食べるようにしているんだが、次の日には治るぞ?」
「うーん…日本でも風邪の予防や治療にビタミンCが効くと一般的に信じられていますが、実際には特に効果がないそうです。
風邪のときは胃腸も弱っていて、食物繊維のある穀物のお粥より果物のほうが食べやすいでしょうから、そこからことわざが生まれたのではないでしょうか」
「ううむ…恥ずかしながら、何を信じればいいのかわからなくなってきたよ」
「ですよねー…。個人的には、常識は変わるもの、とだけ意識しておけばいいかな、と思います」
「最後の第4群は『穀物』『油脂』『砂糖』『調味料』『菓子』『飲料』です」
「やけに多いな。要はパンやパイか?でも菓子と飲み物も入るのか。うーん?」
「はい、第4群は主に『体を動かす』ためのエネルギーとなる食品です。メインは小麦やライ麦などの『穀物』です。
『穀物』は『体を作る』『保つ』栄養素も含む重要な食品です。たんぱく質やビタミンB1、B2なども含みます。穀物は量を食べますから、第1群や第2群の栄養素を補助できます。
それと、嗜好品ですね。嗜好品は大概糖分や油分を含むので、同じグループに入れます」
「コーヒーも第4群かい?何杯飲んだところで腹なんか膨れねえと思うが」
「はい、そうなります。ですが、おっしゃる通りで、コーヒー自体はカウントする必要ありません。コーヒーに砂糖や牛乳などを入れたら、内容をそれぞれのグループとしてカウントしてください。牛乳を入れたカフェラテは、第1群として扱います」
「ケーキもエネルギーに含まれるのかい?確かに甘いものを食うと元気になるけどよ、悪いがケーキで力仕事はできねえぜ?」
「ケーキの種類にもよりますが、どんなお菓子も主な材料は砂糖ですよね。砂糖のエネルギーは即効性があって、食べればすぐに元気が戻ります。ですが、それだけ早く消化されてしまうことにもなるので、砂糖を食べてもすぐにお腹が空いちゃいます。あくまで砂糖だけを食べたら、です」
「理屈はわかったが、客商売となると、はいそうですかと砂糖の量を減らせねえなあ。客は甘さを求めてうちに来るからなあ」
「店長、これは私見なのですが、街の人々の味つけの好みは元々濃いめです。しかし一方で、食糧事情が上向きになりつつあることで食事の機会が増えている現在、薄味を好む人も増えていると私は見ています。この先を考えたとき、検討する価値があるかと」
「うーん…。ソフィーさんが言うなら考えてみるかあ」
あの店員さん、ソフィーさんと言うんですね。なんだか経営戦略的に信頼されているようです。フランツさんはご自分でばっさばっさと物事を決めるタイプかと思ってたので意外です。




