デブとガリのあいだ
「わたしたちは様々な食品からたんぱく質を摂っていますが、特に卵と肉と魚には良質なたんぱく質が豊富に含まれています。できれば毎日摂れるといいです」
「ふむ…。肉も魚も供給量が少ないフロレンスの冒険者の体格が劣るのは必然か」
「そうですね…。手に入らないものは致し方ありません。ただ、肉や魚に届かないまでも、実は豆がたんぱく質を結構含んでいるんですよ。フロレンスではレンズ豆などの豆類がよく食べられてますよね。きっと皆さん長年の経験で知っているんでしょう」
「そうかあ?最近は豆料理も全粒粉と同じで貧乏人の飯扱いだぞ?仕方なく食ってただけじゃね?」
「うっ、そうですか…」
「先程エダマメを紹介してもらったが、確かエダマメの元であるダイズという豆が『畑の肉』と呼ばれているという話だったね」
「はい。それについてはあとでご紹介します」
「たんぱく質以外の二つ、『脂質』と『炭水化物』は『体を動かす』エネルギーになります。これがですね、意外と複雑な栄養素なんです。
『脂質』はその名の通り『油』です。脂質を摂ると体脂肪として体に蓄えられ、体内のエネルギーが少なくなると、体脂肪はエネルギーに変わります」
ちなみに、『脂質』は英語で "fat" です。あとはわかるな?
「油を摂ったら体を動かさなけりゃデブまっしぐらってわけだ。納得だな」
フランツさん…わたしがせっかくはぐらかしていたのに台無しです。
「もう一つの『炭水化物』は穀物に多く含まれる栄養素で、食べると即エネルギーになります。お腹が減ったらパンを食べればすぐに元気が出るでしょ?パンは炭水化物がたっぷりだからです。しかし、脂肪と同じく摂り過ぎれば体脂肪になってしまいます」
「パンの食べ過ぎたら体を動かさなけりゃデブまっしぐらってわけだ。納得だな」
「…。ただし、炭水化物はすべてが消化吸収される栄養素ではありません。消化されない『食物繊維』という栄養素が含まれてまして、食物繊維は腸の働きを活発にしてくれます。食物繊維は、えーと、フロレンスだと…」
アンジュルムを開いて確認します。きくらげ、寒天、こんにゃく、干しわらび、ひじき、おから、干ししいたけ、昆布、抹茶…。全部市場になかったぞ…。
「…いんげんや豆類や穀物に多く含まれています。レンズ豆やパンを食べて入れば自然と摂れているかと」
「りぼんさん、腸の働きとは何を意味するのでしょうか?」
何を恥じらう歳でもありませんが、ちょっと口ごもってしまいます。
「…排泄です」
「なんだうんこか」
「店長、もう少しオブラートに包んでください」ウエイトレスさんがたしなめます。
「うんこはうんこだろ。うんこうんこ」
男子小学生か!女子高生か!OLか!おばさんか!
「…とまあ、脂質と炭水化物については以上です。太り過ぎていたりダイエットでもしなければ、あまり気にかける必要はないと思います」
ちなみにマラソン選手が大会の前日や当日に食べるメニューは炭水化物が中心だそうです。肉のほうが体力になりそうなイメージがあるかもですが、炭水化物が少ないために持久力につながりません。
ですので、今流行りの糖質制限で極端に炭水化物を減らすと、簡単にカロリー不足になります。体力も落ちます。やせる…いえ、やつれるのは当然です。しかも、大きく弱れば弱るほど当人は満足してしまい、聞く耳を持たなくなるのが厄介です。
もう一つ気にしておきたいのは、脂質と炭水化物もその他の栄養素についても、最新の研究によってガンガン常識が変わります。健康ブームで栄養についても情報過多で、一般人は何を信じていいのかわからなくなる世界ですが、どんな情報を見聞きしても、食べ過ぎ、怖がり過ぎに注意する姿勢が大事だと思います。
あくまで個人的な見解ですからね、その点ご了承ください。




