ノーメシ、ノーライフ
「皆さんこんにちは、栄護士に任命された高橋りぼんです。今日に栄養についてお話ししたいと思います。栄養がわかれば、わたしの仕事の8割は説明終了です。
まずは、皆さんに一つ質問させてください。
食事を一切摂れない状況が続くと、人はどうなると思いますか?食べものがなかったり、あっても病気や体力が落ちていて受け付けない、そんな状況です」
支部長さんが率先して答えてくれました。
「それはもちろん、餓死あるいは衰弱死だろうね」
「はい。人は食事ができなくなると体力が落ちて衰弱します。当たり前過ぎて普段は意識しませんが、食事の最大の目的は『生命維持』です。『生命維持に必要なエネルギー』、それが栄養です。食事とは『エネルギーの補給』であり、栄養管理とは『生命維持計画』です」
「生命維持…ですか。確かにそうですね。人は食事以外の方法で生きることができません」
「『人は体が資本』とはよく言ったものだ。私は怪我や病気で体を壊して人生が変わってしまった者を何十人と見てきた。彼らが冒険者の登録証を返納しに来たときの目は何度見ても慣れないよ」
「『人は体がすべて』とも言い替えられます。体の機能が低下すれば病気や怪我に悩まされることになります。もちろん止まれば死んじゃいます。『体を作る』『保つ』『動かす』。これが生命維持です」
「『体を作る』ってのは、成長の止まった大人にも必要なのかい?」
「はい、必要です。子供ほどではないにしろ、大人の体も日々消耗しては作られています。歳をとると作る量が減ってくるので、意識したいところです。ちなみに必要になるエネルギー量のピークは、女性が12-14歳、男性が15-17歳です」
「あら、女性のピークは少し早いのね。私の人生のピークはいつ来るのかしら…」
葵さん、リアクションに困ります…。ここに来た時点で察せられますから…。
こほん、と軽くわざと咳払いをして続けます。
「生命維持に必要なエネルギーである栄養には、様々な成分=栄養素があります。中でもとある五つの栄養素は特に重要で、五大栄養素と呼ばれます。
そのうちの最も重要な三つ、『たんぱく質』『脂質』『炭水化物』を三大栄養素と言いまして、これらは『体を作る』『体を動かす』ためのエネルギーになります。
普通、食事と言えばこのエネルギーをイメージするでしょう。エネルギーが尽きたら動けなくなります。『お腹が減って動けない』ってやつですね。『食べ過ぎて動けない』てのもありますが、こっちは単にお腹が重いからです」
皆さんに、特に支部長さんに笑ってもらえました。順調です。
「さらに三大栄養素の中でランキングをつけると、『たんぱく質』がトップにきます。たんぱく質は栄養オブ栄養なのです。
というのも、実は人間の体はてっぺんからつま先まで、すべてがたんぱく質だからです。たんぱく質の不足は、あらゆる体調不良の原因になります。
まずはたんぱく質を摂って『体を作る』、すべてはそれから始まります」
ちなみに、たんぱく質は漢字で「蛋白質」と書きます。「蚕」じゃなくて「蛋」です。ボディビルダーやダイエッターが鶏のささみを好んで食べることは皆さんご存知でしょう。鶏のささみは良質なたんぱく質が豊富でカロリーが低く、なおかつ安いので、健康番組でも定番の食材です。
そんなボディビルダーの方々が朝食に好んで食べる食材に卵があります。卵は卵黄にも卵白にも良質なたんぱく質が含まれており、中でも卵白の主成分はたんぱく質で、卵黄よりも高たんぱくで低カロリーです。アメリカでは卵白のみのパックが売られているそうな。
実は、たんぱく質はドイツ語で "Eiweiß"(アイワイス) と書き、この単語は卵白を意味します(卵 ei + 白 weiß)。そして実は、蛋白質の「蛋」は中国語で「卵」を意味します。中国料理の前菜でおなじみのピータンの漢字表記は「皮蛋」です。そこで栄養学者の故川島四郎は「卵白質」との言い替えを提唱したりもしましたが、わたしも実際そのほうがわかりやすいと思います。




