サ店の奥で豆腐を選ぶ
皆さんは大豆と聞いたら何を想像するでしょうか。しょうゆ?味噌?豆腐?あ、納豆はチェンジでお願いします。
日本は大豆の加工品であふれており、大豆はいくらあっても使い道に困りません。まあそれでいて大豆の自給率はたかだか7%に過ぎないのですが、そんなことより大豆です。
まずは何を作るべきでしょうか。簡単に作れて、くせが少なく、たんぱく質を多く含む食品がいいです。
となると、しょうゆや味噌などの調味料は後回しです。平行して作れるだけの分量は収穫できますが、何を作るにしても、美味しく食べられるまでは練習が必要です。
となれば、ここはやっぱり豆腐でしょう。冷やしてもよし、温めてもよし、焼いてもよし、揚げてもよし、煮てもよし、崩してもよし、練ってもよし、熟成させてもよし、乾燥させてもよしと、潰しのきく食材ベスト1です。
豆腐を作る過程で豆乳とおからも作れますし、豆乳は豆乳で使い道が豊富です。飲んでよし、湯葉を作ってもよし、スープに使ってもよし、固めてもよし。
ただ、豆乳の問題は大豆特有の臭いが出てしまうことです。豆乳以外でも癖が出てしまう加工品があり、大豆をミンチにして肉の形と食感を出すソイミート(肉もどき)もやはり臭います。わたしの周りでも豆乳やソイミートが苦手な人は少なくありませんでした。もっとも、ソイミートは今後の企業努力で食べやすくなっていくでしょう。
ところで友人の彼氏は味に小うるさく、豆腐にしょうゆを絶対にかけないそうです。「『しょうゆなしの豆腐なんて味しない』と言うやつに『素材の味を楽しむ』資格はない」と少々過激な主張がうっとおしくて仕方ない、自分も豆腐にしょうゆをかけられないとこぼしていました。なるほど、と思ってわたしもしばらく試してみましたが、到底その彼氏に相手にされない舌だとわかっただけでした。
アンジュルムにはそれなりの数のレシピがあって、その中に豆腐の作り方もあります。この街の人から見たら魔術の研究に熱心に勤しむメイドかもしれませんが、その実態は豆腐のレシピを読んでるコスプレ女子です。大学の友人に見つかったら笑われること間違いなしです。
レシピを見て思わずうなりました。豆腐作りに必要な材料はたった二つ。大豆と、にがりです。
豆乳を固めるにがりの成分は塩化マグネシウムなどのミネラルを含む液体です。にがりは天日干しか釜ゆでで、塩を作る過程でできます。ちなみにこの情報もアンジュルムに書かれています。
でも、にがりなんか手に入りそうにありません。なら、にがりの代わりに何か使えないものでしょうか。ゼラチン?それじゃ豆乳プリンです。凝固させるならレモン汁や酢でできるでしょうけど、さてさて豆腐の味になるのやら。一度試してみるしかないかなあ。
「ここにいたの」
アンジェリカが来る
「ギルドの用事は済んだの?」
「ええ。宿に戻ったらりぼんがいなかったから、買い物に行ったと思って、先にお昼を食べて待つつもりだったのよ」
「わたしに?」
「ええ。アンジュルムとにらめっこしていたようだけど、何か調べ物?」
「大豆の使い道を探してたの。いろんな食材に加工できるからね」
「ふーん。スープや煮込みばかりじゃないのね」
アンジェリカは手を上げてウエイトレスさんを呼びました。




