ごろごろ野菜と畑の肉のスープ
今日の主食は、名づけて『ごろごろ野菜と畑の肉のスープ』です(『畑の肉』は言わずもがな大豆です)。その他の主食に全粒粉のパン、デザートにりんごです。スープの具は、キャベツ、にんじん、玉ねぎ、かぶ、マッシュルーム、大豆、レンズ豆です。作り方は簡単、野菜を炒めて煮込むだけ!
しかも、野菜は皮を剥かずに乱切りで使うのが『ごろごろ野菜』です。なんと簡単なんでしょう。わたしが流行語大賞の審査員だったら、『ごろごろ野菜』の発案者に大賞を差し上げてます。皮を剥かなくてもいい、包丁はざっくばらんでいいという、野菜の下処理をサボりにサボった料理が『ごろごろ野菜』の一言で立派なメニューになるのです。野菜の皮や皮の内側には見逃せない栄養があり、様々な形で食感は楽しく、一欠片が大きいのであごの力も鍛えられ、よく噛んで消化もよくなり、満腹感も得られるという魔法のようなメニューです。…しかし、わたしの料理の腕が上がらない原因でもあります。
いくつか工夫をしました。
玉ねぎの皮にも栄養があるのですが、ちょっと食べにくいです。スープで煮込んで栄養を煮出しておいて、食べる前に取り出します。
もう一つはにんじんです。
にんじんの皮は、内側にβカロテンという、ビタミンAを作り出す栄養素を含んでいます。ビタミンAに関してはひとまず置いといて、ビタミンAは脂溶性なので、油で炒めると油に溶け出して、体が吸収しやすくなります。
しかし、アンジェリカはにんじんが苦手らしく、いきなり無理に食べさせるのはやめておきました。
そこで、乱切りにしたにんじんに十字に切り込みを入れて、βカロテンが少しでも多くスープに溶け出すようにしました。気休めかもしれませんが、やらないよりましだと思って。
野菜をまとめてバターで炒めたら、あとは煮込むだけです。
ここで最後の選択肢です。ぐつぐつ煮込んで旨みと栄養をスープに煮出すか、野菜の食感を失わない程度に抑えるか。
今回は、せっかくのごろごろ野菜が活きる後者を選びました。 以前、フランス料理の授業で一からコンソメスープを作ったとき、だしを引くのに使った肉や野菜がもったいなくて食べてみましたが、当然ながら味がすっからかんに抜けていて美味しくありませんでした。
さて、スープの皿とパンを前にして着席したとき、急に不安になりました。
この世界の文化的、宗教的に、いただきますと素直に言っちゃっていいのでしょうか?
一瞬ためらうと、3人とも両手の指を組んで目を閉じて、
「いただきます」
と一斉に口にしました。
あ…思い出した。昨日、葵さんがギルドの案内に加えて、この街の文化や宗教について軽くレクチャーしてくれたのでした。ここ一帯は太陽神である女神テスラ様を頂点とする多神教で、わたしたちがお会いしたのもテスラ様だったようです。テスラ様は親しみのある性格で人々に慕われており、実際妙にフレンドリーでフランクなお方でした。
宗教的な縛りは緩く、周りを観察しながらの生活で十分だそうです。フロレンスは十人十色の背景を持つ旅人も多いので、街の人は慣れてるから、わからない点があれば素直に聞いても大丈夫よ、と励ましてくれました。




