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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第7話 メルヘンデビュー!
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メルヘンチェンジ!

元の服に着がえようとしたら、

「今日は着たまま過ごしなさいよ。早く慣れておきなさい」

と言われ、渋々メイド姿で夕食の準備をすることにしました。

市場で購入した野菜を持ってブラウンさんたちの部屋にお邪魔すると、案の定二人の好奇の視線が恥ずかしい…。ブラウンさんは「お似合いですよ」と微笑み、オリバーくんは目を輝かせて見るからにテンションが上がっています。子供の純粋な目がきついです…。

ブラウンさんの部屋には使い込まれた大きなオーブンと煙突がありました。失礼ながら二人とも料理が得意に見えなかったのですが、オーブンについて聞いてみると数年前までこの部屋は食堂だったのだとか。奥さんが出ていってしまって一人で食堂を切り盛りするのが難しく、利用客も減りつつあったので、食堂を住居に変えて、元の管理人室を貸し出すことにしたそうです。つらいことを何度も思い出させてしまって本当に申し訳ない…。空気読めよわたし。


野菜をキッチンに運んだとき、かすかに香る木のスプーンがいくつか置いてあるのが目に入りました。へらの先に半球形の器がついており、小さな器と大きな器のスプーンがそれぞれ2本ずつあります。この形には見覚えがありました。小さじと大さじです。何度もすり切りの練習をしたあのさじです。

「そのスプーンはオリバーが昨日から一生懸命作ったんですよ。もしかして、りぼんさんが使うものだったんですか?」

「え、ええ。でも頼んだの昨日ですよ?昨日の今日で作ったんですか?」

「オリバーは結構手先が器用なんです。りぼんさんの頼みとあって、なおさら張り切ってましたよ」

「おお…すごいね、オリバーくん!」

もじもじするオリバーくんがかわいいです。年の離れた弟みたいな気がしてきました。

半球の形までは伝えていないはずですが、どうやら天秤の皿を真似したみたいです。天秤のそばに硬貨がいくつも積み上げられていました。何度も実験したのでしょうね。

「ところで、普通のスプーンと形が違うようですが、何に使うのですか?」

「『さじ』と言って、粉や水の分量を正確に量るのに使います。こうやって…」

ちょうどキッチンの隅にあった塩の瓶を開けて、すり切りを実演してみせました。一つ目の小さじで塩を山盛りにすくってから、もう一つの小さじのへらの片側を器に当て、山盛りになった部分を削ぎ落とします。すると、器に水を張ったように塩が平らに満たされた状態になります。これで塩6gです(量る材料によって、小さじ1杯の分量が異なります)。

「大きなさじは、小さじちょうど3杯分のはずです」

小さじ3杯の塩を大さじに乗せて軽くすり切ってみました。驚いたことに、きっかり小さじ3杯分の塩が器にはまってます。

「オリバーくんすごい!ばっちりだよ!ありがとう!」

弟を褒める感覚で(弟いませんけど)オリバーくんの頭を撫でると、耳まで赤くなりました。

オリバーくんは恥ずかしさをごまかすように、テーブルの椅子をキッチンの前に置き、椅子に乗ってキャベツを1玉取って降りました。オリバーくんの背丈だとキッチンに届きません。

「あ、オリバーくん、エプロンしよっか」

オリバーくんはきょとんとしました。普段エプロンをしてない様子でした。いつもエプロンしてないの?と聞くと、こくんとうなずきます。

「…服が汚れても、どうせ洗うから…」

「ううん、エプロンは服を汚さないためにするんじゃなくて、服の汚れを食材につけないためにするの。だから、これからは料理をするときは必ず綺麗なエプロンを着けようね」

とりあえず、ブラウンさんにエプロンを1着用意してもらいました。もちろん大人用だったのでぶかぶかでしたが、紐を借りて調整しました。

「今度エプロンを作ってあげるね。これでも裁縫は得意なんだから」

…と、ドヤ顔で言って半分後悔しました。ミシンがありません。つまり手縫いで仕立てるしかなく、こりゃ夜なべコースかなあ…とため息をつきました。

「オリバーくん、まな板を用意してくれない?」

「…まないた…?」

またもやオリバーくんはきょとんとしました。知らないという感じの反応です。

「食材を切るときに敷く板なんだけど…。普段はどこで食材を切るのかな?」

オリバーくんが指差した先は、わたしが野菜を置いた台でした。そう言えば、まな板って全世界共通じゃないんだっけ?もしやと台をよく見たら、ナイフの傷が木の台を埋め尽くしています。こいつは衛生的にまずいです。かと言ってまな板代わりにできそうな板はなく、今夜は我慢しましょう。仕方ありません。

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