Made by Maid
「お、おお…」
「あら、よく似合ってるじゃない」
アンジェリカがこちらに向けた姿見に新人メイドが映り込んでいます。
コントラストが映えるモノトーンのエプロンドレスに、足元まで隠れる地面すれすれの長さの上品なロングスカート、かわいらしい少女趣味全開のレースのカチューシャ。
意外だったのは黒い革のローファーです。ヒールがなく、靴底のゴムが厚くて、機能的かつ快適なデザインです。『不思議の国のアリス』のようなハイヒールのローファーを想像していました。
恥ずかしいけれど、少し楽しくなってきた自分がいます。ついつい、両手でスカートの裾を持ち上げて礼をしてみました。まるで西洋の歴史ドラマの登場人物になった気分です。
「なんだかんだ言っても気に入ったようね。ノリノリじゃない」
「ま、まあ…」
でもやっぱり恥ずかしい。大学の友人と顔を合わせなくていいのが救いです。異世界でよかった…のかな…?でも異世界じゃなければ着られなかったし、現実だと乳袋を強調したミニスカのフレンチメイドドレスしかありません(偏見)。
「人前に出たときは、わたしに敬語を使いなさい。いいわね?」
「はいはい、わかりましたよ、お嬢様」
「『かしこまりました、お嬢様』よ」
「はあ?なんでそこまで」
「あなたに食事の世話をされなくても困らないのよ?何の取り柄も後ろ盾もないあなたが一人で生きて行くのには、この世界はわたしのように優しくないのではないかしら」
「…かしこまりました、お嬢様」
「よろしい」
こいつ、いつかぶっ飛ばしてやる…。
「まあ、すでに知り合いの人とはこれまで通りの普通の態度でいいわ。わたしがかしこまったら倣ってちょうだい」
「はいはい。で、どういうときに着ればいいの?メイドというからには、宿にいるとき?」
「逆よ。身分証明代わりなんだから、外出時は常に着ること。外出先が市場でもウエンツでもね。もちろんクエストで街の外に行くときも着てもらうわ。宿にいるときは普段の格好でいいわよ」
「えっ、わたしもクエストに同行するの!?」
「当然よ。あなたの手当にはクエストの参加報酬も含まれているのよ。賃金分は働いてもらうわ」
「やだやだ、危険な目に遭いたくない!」
「昨日のオオウサギなら、わたしの独断行動だから例外よ。基本的に、魔物相手のクエストは戦闘系のメンバーを揃えないと受注できないわ。わたしは戦士で登録してるけど、りぼんは非戦闘職だからソロ扱いね。それに、ペナルティでしばらく採取クエストしかやらせてくれないもの…」
「やるしかないのか…。てか、アンジェリカって戦えるの?」
「失礼ね。剣の手ほどきは昔から厳しく受けてるんだから。マクミラン家は文武両道がモットーなのよ」
アンジェリカの細腕を見てしまってはいまいち信用できません。剣の先生に手心を加えられた練習風景が目に浮かびます。それでいて人並み以上の自信を持っているのだから、支部長さんが心配するのも無理ありません。




