マクミラン家のエプロンドレス
お腹がいっぱいになって元気を充電したわたしたちをブラウンさんが出迎えてくれました。ブラウンさんも休憩を取られていたそうです。オリバーはあなたに頼まれた計量スプーン作りに熱中していますよ、と嬉しそうに微笑みました。オリバーくんに一つ楽しみを見つけてあげられて、わたしも我が事のように嬉しくなりました。
ブラウンさんが出迎えてくれたのには理由がありました。アンジェリカ宛に大きな荷物が届いたので、ブラウンさんの部屋で預かっているから取りに来て欲しいとのことです。どうも大きな箱らしく、よければ部屋まで持っていきますよと申し出てくださり、アンジェリカはごく当然のように頼みました。
ブラウンさんに運んでもらった箱は実際大きく、現代の一般的な衣装ケースより一回り大きなサイズです。一切歪みのない形といい、つやのある木材といい、見るからに高級品です。アンジェリカがゆっかりとふたを開け、不敵な笑みを浮かべて引き出したのは…なんと、モノトーンのエプロンドレスでした。つまり…メイド服です。
嫌な予感がしつつも、聞かざるを得ませんでした。
「お嬢様、それは、なんでしょうか…」
「メイド服に決まってるでしょう。うちの屋敷から借りてきたわ」
家にメイドいんの!?
「りぼん、あなたろくな服を持ってないでしょう。昨日の服はオオウサギの血で汚れたから捨てたし、今着ている服もわたしの予備でしょ。元はと言えばわたしのせいでもあるから、新しい服を用意してあげたわ」
「お気遣いに感謝しますが…なぜゆえにメイド?」
「あなた、他の人間からすれば身元の怪しい立場に置かれているのよ?信用のあるアオイが身元を保証しても、それだけじゃ納得しない人は大勢いるはずだわ。だから、うちで雇ったわたし付きのメイドということにすれば、ほとんどの人は疑わなくなるわよ」
クリスさんから、ギルドは信用社会だと言われました。アンジェリカの言う通り、地元の名家に雇われてるなら信用レベルが全然違うのでしょう。
「だからって、メイド服じゃなくてもいいじゃない…」
とは言いましたが、ちょっぴり心惹かれてしまったのを認めないわけにはいきません。モノホンのお嬢様に仕えるモノホンのメイドの制服は、コスプレメイド服にはない品格とプライドを漂わせています。
取り繕うように慌てて疑問を呈しました。
「そ、それに、メイドが魔術書を持ってたら変じゃないの?」
「別におかしくないわ。メイドが武闘派でも魔法使いでも、主人の役に立てばいいのよ、役に立てば。ほら、着てみなさい。ほらほらほら」
うっ…逃げられません。
アンジェリカはメイド服を持ってグイグイ迫ってきました。この強引さ、間違いなく支部長さんの血筋です。
結局、根負けしてメイド服を着る羽目になりました。




