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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第6話 ロハスのすヽめ
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パンピーに栄養は難しい

「話を戻すとよ、全粒粉にするとどう体にいいんだい?」

「えーと…ビタミンB1だから…脚気の予防になります」

 ビタミンB1が不足する状態が続くと、脚気という病気にかかります。外科医が江戸時代にタイムスリップする某ドラマでは、玄米を使ったドーナツを脚気対策として売り出していました。江戸時代になると精米技術が上がって庶民も白米を食べられるようになり、ビタミンB1が含まれていた雑穀を食べなくなったために脚気になる人が増えました。特に江戸は「三白(白米、豆腐、大根)」の食事が好まれ、脚気が流行ったことから「江戸患い」とも呼ばれました。一応豆腐にもビタミンB1は含まれているのですが、足りなかったっぽいです。

 ちなみに脚気は決して昔の病気ではなく、患者数がやっと減ったのは1950年代も後半になってからでした。それから20年後の1975年頃からジャンクフードが原因で再び患者数が増え、現在でも白米と漬物しか食べないなどの極端な食生活を送っているとかかりやすくなります。…ちなみにカップ麺類はビタミンB1が多かったりしますが、カロリーと食塩がやばいので言い訳に使わないように…。

「そう言えば、最近脚気について聞くようになったな。この街は少ないほうだと思ってたが、全粒粉をやめたのが一因だったのかねえ」

「レンズ豆にも豊富に含まれていますから、主食が小麦粉に変わっても大丈夫そうですけど…わたしは医者じゃないのでそこまではわかりません」

「ああ、最近はレンズ豆も食べなくなりつつあるんだよ。精製技術が上がって小麦粉が安く手に入るようになってな。これまで仕方なく食ってた安い飯を嫌がる人が増えてんだ。金をかけて栄養を捨ててるとは皮肉な話だ。俺もしばらくキャベツの酢漬けを食ってねえなあ…」

「キャベツの酢漬けも体にいいですよ。ビタミンCが豊富で、大雑把に言うと病気や怪我に強くなります」

「相変わらず適当ね、あなたは…」

「なーる、ばあちゃんは正しかったのか。ビタミンCってやつが大事、と」

「あ、そうだ。この街ってりんごが特産品ですよね。りんごに含まれるビタミンCは少ないですが、ビタミンCを吸収しやすくなるフラボノイドが含まれているんで、キャベツの酢漬けと相性がいいと思います。それから皮と実の間に栄養が詰まってまして、皮つきで生食するといいです。わたしの国では『1日1つのりんごで医者いらず』ということわざもあるくらいです」

 本当はイギリスです。話が面倒になりそうなので嘘つきました。イギリスの皆様ごめんなさい。

「へえ…。アップルパイでもいいのかい?」

「んー、りんごのビタミンCは加熱しても失われにくいんですけど、フラボノイドが加熱で減ってしまうので、やっぱり果物は生食がオススメです」

「なるほどな。あんたの国にはりんご先生が何人もいそうだな」と、フランツさんは笑いました。

「りんご先生?」

「昔、誰を診ても何を診ても『りんごを毎日食べなさい』としか言わない医者がいたらしいんだ。その通りにした患者はみんな病気が治ったって言い伝えがあってな。俺はてっきり、りんごの宣伝のためにでっち上げられた嘘だと思ってたが、本当に回復した患者もいたのかもしれねえな」

 どこの国にも、体験的に効能を知っている人がいるんですね。人間の感覚は不思議です。

「なら、さっぱり系として、キャベツとりんごのサラダがあってもよさそうだな」

「あ、待ってください。生のキャベツはりんごと相性が悪いんです。アスコルビナーゼという酵素が含まれていて、この酵素はビタミンCを壊してしまいます」

 しかもアスコルビナーゼは空気に触れると活発に活動するため、刻んだ生のキャベツとりんごのサラダは、期待とは裏腹にもったいない料理になってしまいます。

「うーん、栄養ってのはややこしいな。だが、見えてきたぞ。小麦粉の全粒粉のパンを使ったたまごサンドに、付け合わせにキャベツの酢漬け、デザートにりんご。ワンプレートでセットメニューにして…。おし!あったまってキタァ!すまねえ、さっそく試してみたいからここで失礼するぜ。礼と言っちゃなんだが、今日のランチは俺のおごりだ。また来てくれよな!」

 フランツさんは早足で厨房に戻っていきました。感心したり、うなったりと忙しない人です。

「話は終わった?」

「あ、ごめん。退屈だったでしょ」

「そんなことないわ。わたしには街のすべてを把握しておく義務があるもの」

「義務?」

「さ、戻りましょう。明日の支度もしないと」

 アンジェリカは席を立ち、アンジュルムとパンの袋を持ってさっさと出口に向かってしまいました。わたしはしゃべるのに夢中で半分近く残っていたカフェラテを一気に飲み干して跡を追いました。

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