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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第6話 ロハスのすヽめ
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注文の少ない喫茶店

 『情熱のたまごサンド』は、たっぷりのタルタルソースを薄いパンで挟んだサンドイッチでした。タルタルソースの酸味は強めですが、はちみつでマイルドに抑えられて食べやすく、パンに塗られたマスタードがめりはりをつけて飽きさせません。これは絶品です。

 なんということでしょう。食べるそばから涙が出てきました。

「おいおい、どうした。泣くほど美味かったか?」

「はい、こっちに来てからまともな食事にありつけてなくて…美味しいです!」

「…お嬢様、あんた付き人にどういう暮らしさせてんだ?」

「わ、わたしのせいじゃないわよ。昨日も今朝も自分の食事を買い忘れたのよ」

 わたしは泣きながらもあっという間にたまごサンドを平らげてしまいました。お腹もいっぱいになり、カフェラテのおかげで涙もおさまりました。

「落ち着いたか?」

「はい。お見苦しい姿をお見せしました」

「気にすんな。あんた、えい、えい…栄護士ってのやってんだろ?お嬢様を太らせるっていう」

「もう知ってるの?というか太らせるって何よ」

「今朝、支部長さんがコーヒーを飲みに来てな。あんたのことを機嫌よく話してたから気になってたんだよ」

「まったく伯父様は朝からサボって…」

「それでよ、一つ相談があるんだ。聞いてくれねえか?」

「はあ、何でしょう」

「うちのフードメニューなんだが、新しいメニューを増やしたいんだよ。わかったと思うが、自分で言うのもなんだがバリエーションが少ねえ。そう思うだろ?」

「確かに、ハムのサンドもチキンのサンドもないと物足りないですね」

「そうなんだよ。うちは開店してからまだ5年も経たなくて、肉や魚は優先的に老舗に行っちまうんだ。肉も魚もないとなると、食事になるメニューが限られちまう。なんとかたまごサンドを開発したが、それだけじゃ昼の営業が厳しくてな。肉も魚も入らないのは仕方ねえから、それ以外で目玉を作りたい」

「それとりぼんがどう関係するのよ。結局、食材が変わらないなら無理じゃない」

「あ、大豆のことですか…?」

「ダイズ?なんだいそりゃ?」

 かくかくしかじか。

「へえ、畑の肉ねえ。それも面白いそうな食材だな。でもそっちは置いといて、俺が気になるのは栄養バランスってやつだ。ぶっちゃけ、店の売りに『健康』を加えたいのよ。言い換えると『体に優しい食事』だな」

 おお、現代風です。

「なにそれ?そんなのが売りになるの?」

「わかんねえ。けど、肉が手に入らないなら他の店と同じメニューは用意できねえし、仮に用意できても客の奪い合いになるだけだからな。『体に優しい』ならどことも競合しねえ」

「どうして『体に優しい』なんですか?」

「なあに、一つはあんたの仕事が健康を扱うと聞いてよ。ギルドのお墨つきがあれば売りになると思ってな。気を悪くしないでくれ」

「いえ、別に気にしませんよ」

 でも、この世界にはカロリーやビタミンの概念がありません。というかビタミンは発見されてないと思います。例えば某有名企業のヘルシーな食堂のメニューを実現できたとして、500kcalとか、塩分控えめとか、糖質50%オフとかの宣伝文句でこの街の人のお客さんの気を引けるとは思えません。それに現代の問題は過食による栄養過多なので、分けて考えないとならないでしょう。

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