043 謎のニュースレポーター
『明朝、警察官二名の遺体が発見されました。警察関係者は恢飢現象に巻き込まれたとして、恢飢の行方を捜索している模様です』
「朝から物騒なニュースね」
神代が炊きたてのご飯を食べながら言った。
「恢飢現象で人が死ぬ話は聞いた事ないな」
「確かに日本じゃ珍しいわね」
「魔法界ではどうなんだ?」
聖人はそう言ったのだ。魔法界では恢飢現象に巻き込まれて人が死ぬ事はあるのかと。
「日常茶飯事よ」
「恐ろしいな」
「聞こえは悪いけど、魔法界って広いから人間も恢飢も日本の何千倍と居るわ。その分一日の死人の数も多くなるのよ」
「俺の親父も大変だな。そんな場所で仕事してるとか」
「親父さんなら平気よ」
「どうしてだ?」
「敵無しだもん」
今まで聖人は自分の父親の話なんて興味が無かったのだが、神代と触れ合い、エクソシストの仕事を体験する内にふつふつと沸いてきたのだ……親父に対する興味が。
だから親父の話を少し聞きたいと思った聖人である。
「親父って強いの?」
「王覇師団のトップよ。強いに決まってるじゃない」
実に曖昧である。強いとだけ言われても、いまいちピンと来ない。それ故、聖人はさらに掘り下げた。
「強さで言ったら、どれぐらいだ?」
「実力・人気・人柄、どれをとってもナンバーワンよ」
ハゲ頭の親父が、魔法界の人々に愛されているとは想像もつかなかった聖人である。
「親父ってスターだったのか」
「そうよ。魔法界で知らない人はいないわ」
「あの親父が……信じられないぜ」
聖人の父親は家に帰るたびに安酒をガブ飲みして、酔っ払って倒れる事が定番である。
「知名度で例えるなら総理大臣に近いわね」
「ますます信じられない」
話がどんどん大きくなって、聖人の頭はパンク寸前であった。
「あんたは2世エクソシストになるんだから、半端な成績は残せないわよ」
「そういうプレッシャーのかけ方やめろよ」
「最低でも隊長の座に登らないと話にならないわね」
「分かった。分かったよ」
聞いた自分が悪かったという様子で、会話を止めた聖人。王覇師団に所属していない聖人にとって、出世話は気が遠くなりそうだったのだ。
『続いてのニュースです』
聖人は再びニュースに耳を傾けた。
『四大祓魔師で知られる霧登家。その霧登家の跡取りである霧登風華さんの行方が分からないとして、霧登家の使用人が今朝、行方不明届けを提出致しました』
「え!?」
聖人と神代が同時に声を発した。
『現場の臭井さん』
テレビは霧登家の屋敷に映り変わった。そこでは執事のヴォルフガングが取材を受けているのだが、何やら様子が変である。
「はい。現場の臭井で、ごぜぇます。ちょっと今ですね。こちらの執事さんにお話しを伺っているのですがね。ええ、やっこさん御機嫌斜めでありましてね。ええ」
ヴォルフガングにマイクを向けた臭井。
「神聖なる霧登家の屋敷に不法侵入するとは」
「ちょっと待ってくれませんかね。こちとらテレビの取材ですが?」
いかにも陰険そうな口調の臭井が反論した。
「黙って出ていけ。俺の逆鱗に触れるまでにな」
ヴォルフガングは怒り心頭であった。
「あなたはマスコミを敵に回すおつもりで?」
「今すぐその二枚舌を閉じやがれ!」
ヴォルフガングはあろう事か、カメラマンのカメラを引ったくり、地面に叩きつけたのだ。
無論、中継はそこで終わった。
「おいおい。何やってんだアイツ」
聖人は急いでチャンネルを切り替えた。すると、ヴォルフガングはまたもや他の記者と喧嘩していた。
「YoYo☆オイラは毎月放送のガブリエルだYo☆ちょっとお兄ちゃんのお話し聞かせてYo☆」
レゲエアナウンサーのガブリエルが、ダンス勝負を仕掛けてきた。
「出ていけー!」
「Oh no!」
ヴォルフガングの怒鳴り声に驚いた各局のアナウンサー達は、皆散り散りに逃げて行った。




