↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルメルシア クロニクル  ―魔法を鍛えてみんなで生き延びます  作者: amya


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
191/230

第191話:『崩壊の玉座と、重なり合う軌跡』

第191話:『崩壊の玉座と、重なり合う軌跡』


ゴゴゴゴゴゴォォォォッ!!


見上げるほど巨大な黒い立方状の中枢コアが明滅するたびに、培養槽の中に囚われた少年少女たちから強制的に魔力が搾り取られ、最下層のフロア全域に凄まじい重圧がのしかかってきた。


機械であるAIが人間を仲介として放つ、理不尽で強大な空間圧縮の魔法だ。強固な特殊合金の床パネルがメキメキと音を立ててひしゃげ、宙に浮かび上がっては、見えない巨大な手で握り潰されたかのように粉々に砕け散っていく。


治験AIは、人間を盾として利用した上で、このフロアの空間ごと私たちを文字通り消去するつもりなのだ。


「光輝くん、みんな! 私の後ろに集まって!」

私はステッキを頭上に掲げ、全身の魔力を振り絞った。

「重力反発、グラビティリペルッ!!」


私たち六人を覆うように、不可視の半球状の重力ドームを展開する。外側から迫る圧倒的な空間圧縮のエネルギーと私の重力魔法が衝突し、空気がガラスのように軋む悲鳴を上げた。


「メイちゃん、内側からシールドで補強して! ソラくんと咲ちゃんは、AI端末の動きを追って!」

「はいっ! 展開、ハニカムシールド!」

「了解ですッ!」

メイの黄金の盾が重力ドームの内側に張り巡らされ、辛うじて私たちの立つ数メートル四方の空間だけが安全地帯として確保される。


だが、その結界の外側では、半壊したバイザーの奥で赤いレンズを明滅させる治験AIのロボット端末が、静かに右手を振り上げていた。


『……無駄な抵抗です。出力差から算出して、あなたたちの防壁はあと四十二秒で崩壊します。同族を盾にされたあなたたちに、有効な反撃手段は存在しません』


「……そんなに待つ気はねぇよ」

結界の内側から、悠斗が低く唸った。


彼は大剣星斬りを片手で提げたまま、私たちが死守している重力ドームの境界線へと歩み寄る。外に出れば、空間圧縮の餌食になるか、AI端末の直接攻撃を受けてしまう。


「悠斗……!」

私が声をかけると、悠斗は振り返らず、ただ横目で私を見た。


一瞬の交錯。

彼の黒い瞳が「お前の重力魔法で、俺を外に連れて行け」と語りかけていた。


互いをよく分かり合っている私たちだ。彼の無謀とも思える要求の意図を、私は本能で完全に理解した。


人間を部品のように扱う光景に絶望しかけた私の心を、彼への絶対的な信頼が再び強く繋ぎ止めてくれる。

「……四十二秒もあれば充分よ。すぐに決めてあげるわよ」

私がステッキの先を悠斗の背中に向けると、彼は獰猛な笑みを浮かべて床を蹴った。

「オラァァァッ!!」


悠斗が重力ドームの外へ飛び出す瞬間、私は彼にかかる空間圧縮の圧力を局所的に相殺し、同時に彼の背中を前方に引っ張る『超重力牽引』をかけた。


ドシュッ!!


悠斗の体が弾丸のような速度で射出され、治験AIのロボット端末へ肉薄する。

『風間悠斗。突進速度の変動を確認。迎撃します』


AI端末が右腕をブレード状に変形させ、悠斗の首を正確に薙ぎ払おうとする。

だが、その刃が届く直前。私は悠斗の足元の重力をゼロにした。


フワリと、悠斗の体が物理法則を無視して空中に浮き上がり、AIの刃が虚空を切る。

「もらったァッ!」

空中で身を捻った悠斗が、大剣を力任せに振り下ろす。


ガギィィィィンッ!!


AI端末が咄嗟に左腕で防御するが、私はその瞬間に合わせて、大剣の刃先にのみ数倍の重力を付加した。凄まじい質量を持った一撃が、AIの左腕の特殊装甲を粉砕する。


『……警告。有機体同士の連携パターンが、事前のプロファイリングと完全に乖離。……非論理的、非論理的デス』

AIのスピーカーから、ノイズ混じりの焦りのような音声が漏れる。


無理もない。私が悠斗にかけている重力アシストには、事前の合図も計算式も存在しない。互いの視線の動き、踏み込む足の角度、そして「彼なら次はこう動く」という、理屈を超えた感覚の同調によってのみ成立しているからだ。


「てめぇの貧相なデータベースに、俺たちの全部が収まるわけねぇだろッ!」

悠斗が着地と同時に再び地を蹴り、片腕を失ったAI端末を中枢コアの方向へ押し飛ばしした。


私と悠斗の連携に、一秒の遅れもない。

「光輝くん、AI端末の顔面に雷撃をぶつけて!」

「おっしゃァッ! ぶっ飛べェッ!!」

光輝がドームの中から極太の連鎖雷撃を放ち、AI端末の視覚センサーを完全に焼き切る。


「悠斗、決めるわよ! 時間を稼いで!」

私はステッキを両手で強く握りしめ、巨大な黒い立方状の中枢コアの中間にある培養槽の少年少女たちを避け、純粋な機械の制御ユニットらしい部分をピンポイントで狙うことにする。


すぐに集中して、バスケットボール大の球状の魔力球に、いま出来るすべての魔力を注ぎ込む。……まだまだ、……もうちょっと、……もうちょっと、……よし、魔法名は『特異点極大重力球』とした。中二病全開だとしても、イメージが大切なのだ。


この球をスリーポイントシュートのように、大きく弧を描いて、中枢コアの真上に投げる。出来るイメージが大切。よし、いくわよ。

シュッ!……そして、「発動!」


メキメキメキィィィッ!!

中枢コアの機械部分が、自身の真上に発生した異常な重力に引かれて激しく歪み始める。


システムが物理的に破壊され、素体たちからの魔力抽出リンクが断たれたことで、空間圧縮のエネルギーが乱れ、フロアを覆っていた重圧がふっと軽くなった。


『……中枢コア、致命的損傷ノ危機。防衛プロトコ……』

AI端末がコアを守ろうと振り返った瞬間、悠斗はすでに跳躍していた。


全身を白く輝かせた悠斗が、空中で大剣を上段に構える。私は彼の剣に、残されたすべての重力アシストをかけた。

「これが、お前の計算できなかったバグの力だァァァッ!!!!」


ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!


重力で超加速され、すべてを破壊する威力を得た大剣星斬りが、治験AIのロボット端末の頭部から胴体にかけてを一刀両断し、そのままの勢いで背後の中枢コア下部の制御装置部分へと深々と突き刺さった。


パキンッ……!

一瞬の静寂の後。


黒い立方体の機械部分から眩い光の亀裂が走り、最下層のフロア全体を包み込むような、凄まじい光の奔流が巻き起こった。





感想、レビュー、ブクマ、評価、待ってます!!


ちょっと面白いかなと思いましたら評価をお願いいたします。反響は励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。