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アルメルシア クロニクル  ―魔法を鍛えてみんなで生き延びます  作者: amya


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第188話:『無機質な群れと、星屑の案内人』

第188話:『無機質な群れと、星屑の案内人』


ズズズズズズッ……!!


プラントの奥深くから響く地鳴りのような足音は、一つや二つではない。数十、いや数百という単位の重厚な金属音が、完璧に統率された一つの生き物のように迫ってくる。


薄暗い搬入エリアの奥、巨大なコンベアラインの陰から、青白い光学センサーの光が無数に灯り始めた。


『……非認可ノ特異点及ビ、現地レジスタンスノ排除ヲ開始シマス』


無機質な合成音声と共に姿を現したのは、全身を漆黒の特殊合金で覆われた人型の戦闘機械の群れだった。


あの潜水母艦で戦った、生身のマスターピースではない。治験AIがこの工場で新たに準備した機械兵器だろう。冷徹な処理能力と、私たちからラーニングした戦闘データを完璧にインストールされた『ロボット兵士』の群れだ。


「チッ、ロボットの大量生産ってのは冗談じゃなかったってわけかよ」

悠斗が大剣星斬りを構え直し、前に出た。


「……おい、ジン。レジスタンスの連中はどこにいる? ここから先は、俺たちだけじゃジリ貧だぞ」

悠斗の言葉通り、目の前に広がる敵の数は絶望的だった。


私たちがいくら規格外の特異点とはいえ、魔力にも体力にも限界がある。休むことなく供給され続ける機械の群れを相手にしていれば、いずれ押し潰されるのは明白だ。


「……焦るな。とっくに合図は送ってある」

ジンはフードを深く被り直し、コートの懐から古い発煙筒のようなものを取り出した。


彼はそれを乱暴に床へ叩きつける。

プシュゥゥゥッ!


発煙筒から、真っ赤な煙ではなく、青白い特殊なリン光を放つ粉塵がプラントの天井へ向かって立ち昇った。


「星屑、アストラルの合図だ。……あいつらは、必ず来る」

ジンの言葉が終わるか終わらないかの瞬間だった。


ドゴォォォォォォンッ!!!!


私たちの遥か頭上、プラントの分厚い天井の防爆パネルが、外側からの凄まじい爆発によって吹き飛ばされた。


「なっ……天井から!?」

私が上を見上げると、崩れ落ちる瓦礫の雨に混じって、数十人の人影がプラント内部へと降下してくるのが見えた。


彼らは全員、ジンと同じようにボロボロのコートや軍落ちの防弾チョッキを身に纏っている。手には旧式のライフルや、改造されたロケットランチャー。洗練された日本の防刃スーツとは程遠い、寄せ集めの装備を纏っている。


だが、彼らが放つ気迫は、あのロボット兵士たちを凌駕するほどに、熱気がみなぎっていた。


「アストラルギア、突入!! 機械の操り人形どもをスクラップにしろォッ!!」

野太い号令と共に、降下してきたレジスタンスたちが一斉に火蓋を切った。


ダダダダダダダダダダッ!!!!


旧式ライフルの弾幕が、ロボット兵士の群れに襲い掛かる。

治験AIのロボット兵士は強固な装甲を持っているが、レジスタンスたちの攻撃はただの物理弾ではないようだった。


着弾と同時に、弾頭に仕込まれた塗料が弾け、ロボット兵士の行動を一時的に麻痺させている。


「ヒャッハー! ざまぁみろ、ポンコツロボットが!!」

ロープを伝って降りてきた、片目に眼帯をした大柄な男が、改造ランチャーをぶっ放してロボット兵士を三体まとめて吹き飛ばした。


「……遅ぇぞ、おっさん」

ジンが瓦礫の陰から立ち上がり、その眼帯の男に向かって毒づいた。


「へっ、ジン。お前が連れてきたってのが、その日本の特異点か? 随分と可愛らしいお嬢ちゃんたちじゃねぇか」

男は豪快に笑いながら、私とメイをチラリと見た。


「……見た目に騙されるなよ、ガルシア。こいつらは、あの狂犬どもを殺さずに制圧するような化け物だ」

ジンが、足元に倒れている三人の「被害者」たちを顎でしゃくった。


ガルシアと呼ばれた男は、倒れている少年少女たちを見て一瞬だけ顔をしかめた後、深く息を吐き出して私たちへ向き直った。

「おいジン、こいつら言葉は通じるのか?」

「あぁ、たぶん同時翻訳イヤホンを付けているだろう。来る途中の会話も問題無かったぜ」


「……そうか。俺はガルシアという。助かったぜ、日本の特異点。こいつらも元々は、俺たちの仲間の弟や妹だったんだ。……お前らが命を救ってくれたこと、星屑の歯車(アストラルギア)は絶対に忘れねぇ」

ガルシアの言葉に、光輝が少しだけ驚いたように顔を上げた。


誰も殺さない。見捨てない。あの時、私たちが貫いた覚悟は、見知らぬ大地のレジスタンスたちの心に、確かに届いていたのだ。


「感謝は後よ、ガルシアさん!」

私はステッキを構え、次々と押し寄せてくるロボット兵士の群れを睨みつけた。


「治験AIの中枢サーバーはどこ!? このプラントの生産ラインを完全に止めるには、大元を叩くしかないわ!」


「話が早くて助かるぜ! 中枢は、このメインラインを抜けた先にある地下最下層だ! 俺たちレジスタンスがこの場のクソ機械どもを足止めする! その隙に、お前ら特異点が中枢をぶっ壊してこい!」


「了解ッ!」

悠斗が力強く応え、大剣を振りかぶる。


「行くぞお前ら! ガルシアさんたちが作ってくれた道を、全力で駆け抜けるぞ!」


「「「はいっ!」」」

光輝、咲、ソラ、メイが同時に声を上げる。


レジスタンスたちの援護射撃が飛び交う中、私たちは密集陣形を組み、工場のメインラインへと突撃を開始した。


左右から迫るロボット兵士たちを、光輝の電撃とソラの局地熱膨張の爆発が薙ぎ払い、正面からの攻撃をメイの黄金の盾が弾き返す。

そして、前方を塞ぐ強固な装甲の敵は、悠斗の大剣と私の重力魔法が粉砕していく。


「……すごい、あいつら。こんなにできるなんて……」

後方で戦うジンが、私たちの背中を見つめながら呟いた声が、インカムのノイズ混じりに微かに聞こえた。


国境を越え、価値観を越えて繋がった戦友たち。

私たちはその想いを背負い、地下工場の最下層にあるシステムの中枢へ向かって一直線に駆け抜けていった。





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