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ファーストキス  作者: 梅子


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8/9

異質

 お父さんは、

「芽生子ちゃんは、手芸部なんだよ。」

と、お兄ちゃんに言った。

「手芸部か…何を作ってるの?」

「えっ…。あ、レジンとか。」

「レジン?」

「これ。」

芽生子は、通学リュックに付けているストラップを見せた。

「きれいだね。」

と、お兄ちゃんは、優しく言った。

「お兄ちゃんは…何部なんですか?」

と芽生子が聞くと、

「僕?僕は、美術部。」

と、言った。

「美術部。」

芽生子が繰り返すと、

「何で入ったんだか、分からない。」

と、やはりふてぶてしい感じで、兄は、言った。お父さんは、

「新ちゃんは、絵が上手かったから良かったよ。」

と言った。すると、お兄ちゃんは、

「昔は、電車を書くのが、好きだったけど…今じゃ書きたいものなんてないよ。」

と少し悲し気に言った。その言い方は、誰にも似ていなかった。どこか、自嘲的な感じがするのは、素直でのびのび育ってきた芽生子からすると、異質だった。

 芽生子は、兄をじっと見つめてしまった。目やまつ毛、口や鼻、眉毛を見たけど、お父さんのほのぼのした感じはなくて、切れ長な目や長いまつ毛、筋の通った高い鼻や、整った眉だけが、ただ目に入るばかりだった。

 お兄ちゃんは、

「お父さん、元気そうで良かったよ。」

と言った。父は、笑って、

「元気そうに見えるなら、良かった。まだ、本調子とはいかないが、すぐに退院だ。新ちゃんたちから、力を貰ったな。」

と言った。

「今の奥さんにも、でしょ?」

と兄は、笑った。


 父は、少し間を置いて、

「お母さん、元気か?」

と言った。兄は、

「元気だよ。」

と、普通に答えた。

「良かった。」

と父は言ったけど、何か、割り切れない感じがした。芽生子は、気まずくて、下を向いていた。

「僕、そろそろ、帰る。」

兄は、言った。

「送ります。」

芽生子は咄嗟に言った。

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