異質
お父さんは、
「芽生子ちゃんは、手芸部なんだよ。」
と、お兄ちゃんに言った。
「手芸部か…何を作ってるの?」
「えっ…。あ、レジンとか。」
「レジン?」
「これ。」
芽生子は、通学リュックに付けているストラップを見せた。
「きれいだね。」
と、お兄ちゃんは、優しく言った。
「お兄ちゃんは…何部なんですか?」
と芽生子が聞くと、
「僕?僕は、美術部。」
と、言った。
「美術部。」
芽生子が繰り返すと、
「何で入ったんだか、分からない。」
と、やはりふてぶてしい感じで、兄は、言った。お父さんは、
「新ちゃんは、絵が上手かったから良かったよ。」
と言った。すると、お兄ちゃんは、
「昔は、電車を書くのが、好きだったけど…今じゃ書きたいものなんてないよ。」
と少し悲し気に言った。その言い方は、誰にも似ていなかった。どこか、自嘲的な感じがするのは、素直でのびのび育ってきた芽生子からすると、異質だった。
芽生子は、兄をじっと見つめてしまった。目やまつ毛、口や鼻、眉毛を見たけど、お父さんのほのぼのした感じはなくて、切れ長な目や長いまつ毛、筋の通った高い鼻や、整った眉だけが、ただ目に入るばかりだった。
お兄ちゃんは、
「お父さん、元気そうで良かったよ。」
と言った。父は、笑って、
「元気そうに見えるなら、良かった。まだ、本調子とはいかないが、すぐに退院だ。新ちゃんたちから、力を貰ったな。」
と言った。
「今の奥さんにも、でしょ?」
と兄は、笑った。
父は、少し間を置いて、
「お母さん、元気か?」
と言った。兄は、
「元気だよ。」
と、普通に答えた。
「良かった。」
と父は言ったけど、何か、割り切れない感じがした。芽生子は、気まずくて、下を向いていた。
「僕、そろそろ、帰る。」
兄は、言った。
「送ります。」
芽生子は咄嗟に言った。




