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ファーストキス  作者: 梅子


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6/8

出会い

 芽生子は、なかなか寝付けなかった。もしかしたら、お兄ちゃんも、お母さんから私と会うことについて、何か言われているのかもしれない、と思った。お兄ちゃんのお母さんは、自営業をやっている、と聞いたことがある。どんな人なんだろう。お兄ちゃんと似ているって言うけど、お兄ちゃんのことも知らないから分からない。でも、お父さんが結婚した、つまり、私のお母さんより前に選んだ人なんだから、素敵なところがある人なんだろう。


 芽生子が学校に行こうとすると、お母さんが呼び止めてきた。

「芽生子ちゃん。気を付けて行ってきてね。」

芽生子は、素直に嬉しかった。

「うん。」

母の目を見ると、ごめんね、と言っている気がした。何か言いたかったけど、遅刻しそうだったから、そのまま学校に行った。

 芽生子は、ぼんやりしている、と友達に指摘された。でも、お兄ちゃんに会うなんて言ったら、絶対に面白がられる、と思って、寝不足で…と説明した。実際に、寝不足だったし、丁度良かった。学校の時間は、いつも、ぼんやりしているけど、今日は特に、地に足がついていないような感覚で、何があっても、そうなんだ~くらいにしか思えなかった。


 芽生子は、病院が見えてくると、変にきょろきょろした。お兄ちゃん、いるかな?あの人かな?でも、誰かと目が合うことを極度に恐れて、すぐに下を向いた。きょろきょろ、下、きょろきょろ、下、としていると、視野が、ぐーっと苦しくなってきて、気分が悪かった。

 早く会ってしまおう。そう思って速足で病院を進んでいると、白いシャツに、グレーのズボンの制服姿らしい男の人が、受付近くに立っていた。芽生子は、その背中から、何となく、お兄ちゃんかも…と思った。でも、何の確証もない。不自然なくらいの勢いで横切ろうとすると、その青年も気付いたらしかった。

「内科の入院は…」

と芽生子にとっさに声をかけてきた。

「はい?」

「何階ですか?」

「2階です。」

「2階。」

「はい。」

「あの…もし違ったらごめんなさい。芽生子さん?」

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