未知
「芽生子は、お兄ちゃんに会いたいか?」
「…。うん。」
芽生子は、自分でも驚くくらい素直に頷いた。
「じゃあ、このくらいの時間においで。明日、学校が終わってから、お兄ちゃんも来るって。」
「お母さんは?」
芽生子は、自分の言ったことに驚いた。少し前まで、冷たいって思っていたお母さんを、心配するようなことを、つい言ってしまった。
「知ってるよ。」
「…。私と、お兄ちゃんが会うかもってことも?」
「うん。」
私は、母が、何か最近冷たく感じたのは、別に私に嫌な気持ちを持っていたからではなくて、ただ、悲しい気持ちになっていたからだったんじゃないかな、と、この時、思った。
芽生子は、夜ご飯の時、
「お母さん。」
と呼びかけると、
「何?」
と母親は、素っ気なく聞いてきた。
「お兄ちゃんのこと…」
芽生子は、母親に自分の口からも兄と会うことを言っておきたいと思った。内緒で会うより、話してから行った方が、お母さんにも誠実だと思った。それに、お兄ちゃんに初めて会うっていう、わくわくと不安を、お母さんに聞いてほしかった。でも、お母さんは、不機嫌そうな顔をして、
「何でも話し合えばいいってわけじゃないわ。」
と言ったきり、黙って食べ進めていた。
芽生子は、普段、お父さんがいる時は、気が合うと思っていたのに、最近、お母さんとすれ違ってばっかりだと、また、泣きそうになった。芽生子には、お父さんとお母さんの出会いがどんなものだったのか、お母さんがお兄ちゃんのことをどう知ったのか、お父さんの前の奥さんのことを、お母さんがどう理解しているのか、何も分からなかった




