すれ違い
父が急に入院することになった。芽生子が寝ている間に救急車を呼んだらしく、騒ぎに気付いて下に行くと、父が担架に乗せられていた。
「大丈夫!?」
「お腹痛い…」
「えっ…?」
私は、頭が真っ白になった。動けなくなった私の横を、
「待っててね。」
と母が通り過ぎた。母は、父に付き添って救急車に乗って行ってしまった。私は、裸足で外まで追いかけてしまって、足にアスファルトの砂利が付いた。ざらざらして痛かった。
父親は、別に大したことはないらしかった。でも、手術をしたから、しばらく入院するってことだった。朝、付き添っていた母がタクシーで帰ってきた。疲れ切った顔をして、そのことを伝えると、私に
「学校行きなさい。」
と言った。私は、母のことを、冷たい人だと思った。
学校から帰って来て、母に
「お見舞いに行っていい?」
と聞くと、母は、
「まだ、お父さん、寝てることの方が多いし、休ませてあげましょう。」
と言った。
「私が行ったら、休まらないの?」
と聞くと、母は、溜め息をついた。
「そういうことを言っているんじゃないって分かるでしょ。」
芽生子は、その時に、今までの家族は、父親がいたから成り立っていたんじゃないか、と妙に悲しい気持ちになって、部屋に駆け上がった。




