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ファーストキス  作者: 梅子


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3/9

すれ違い

 父が急に入院することになった。芽生子が寝ている間に救急車を呼んだらしく、騒ぎに気付いて下に行くと、父が担架に乗せられていた。

「大丈夫!?」

「お腹痛い…」

「えっ…?」

私は、頭が真っ白になった。動けなくなった私の横を、

「待っててね。」

と母が通り過ぎた。母は、父に付き添って救急車に乗って行ってしまった。私は、裸足で外まで追いかけてしまって、足にアスファルトの砂利が付いた。ざらざらして痛かった。

 父親は、別に大したことはないらしかった。でも、手術をしたから、しばらく入院するってことだった。朝、付き添っていた母がタクシーで帰ってきた。疲れ切った顔をして、そのことを伝えると、私に

「学校行きなさい。」

と言った。私は、母のことを、冷たい人だと思った。


 学校から帰って来て、母に

「お見舞いに行っていい?」

と聞くと、母は、

「まだ、お父さん、寝てることの方が多いし、休ませてあげましょう。」

と言った。

「私が行ったら、休まらないの?」

と聞くと、母は、溜め息をついた。

「そういうことを言っているんじゃないって分かるでしょ。」

芽生子は、その時に、今までの家族は、父親がいたから成り立っていたんじゃないか、と妙に悲しい気持ちになって、部屋に駆け上がった。

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