慣れない日々と孤島の食材 Lv.1(八話)
大きな雷鳥に乗って街の港街まで戻ってきてしまった幸とティーレ。
二人はぼんやりと揺らぐ海を見つめている。
孤島でティーレが遭遇した魔物は、歪な羽のない鳥で、黒い姿は死神を思わせる物だった。
鶴の様な長い足にキリンの様に伸びた首をしたヤツを鳥と言って良いものだろうか。
幸には疑問である。だが、それ以上にサウザーが無事なのか心配だった。
魔物と遭遇した直後、ティーレを幸に預け、あっという間に二人を孤島から脱出させてしまったのだ。
(あぁ……まずい、こうやって待ってたらまた……)
クラクラと意識が曖昧になっていく。
体が疲れて眠りたいと叫ぶ。しかし、こんな時に居眠りなどしていられない。
途切れそうな感覚を必死に堪えている。
「お兄ちゃん大丈夫かな?」
ティーレの声に薄れかけてしまっていた意識が引き戻される。
ハッとした幸は首を降り、少女の方を向いて笑って見せた。
首を振ったのがどういう意味か、分からずに見守るティーレに幸は胸を張って答える。
「サウザーならきっと大丈夫! 彼はとっても強いのよ」
幸の言葉にティーレはほんの少し微笑んでくれた。
安心してくれた事にホッと胸を撫で下ろす。しかし、本当は彼女もサウザーが無事なのか心配で仕方なかった。
孤島で見たあの魔物は、まるで死神の様な悍ましさで見るものを萎縮させる。
もし、正面で向き合っていたとしたら、幸は動けずに鋭いクチバシと翼に貫かれていたかもしれない。
それに見た目からも分かる様に光沢のある黒い殻に覆われていた。
サウザーがアレに勝てるのか、幸には全く想像がつかない。
助けに行くべきか。
幸は思わず立ち上がる。
「お姉ちゃん?」
ティーレに見上げられながら、幸は漠然と立ち尽くしていた。
雷鳥に連れられて港街まで戻ってきているのだ。今更、何を言っているのか。
孤島へ行っても手遅れかもしれない。だが、行かなければ無事なのかすら分からない。
迷って動けずにいた幸だったが、ティーレが袖を引っ張る。
「お姉ちゃん、見て!」
遠くを指差すティーレに、幸は目を凝らして見た。
周りからもザワザワと人々が近づいてくる。
遠くに見える影に気づき始める。
黄色く輝く鳥が群れを成して、黒い塊をぶら下げながらこちらに向かってきていた。
幸は思わず、重たい瞼をこれでもかと開く。
隣にいたティーレと共に彼女は大きく手を振って彼の帰りを喜んだ。
「おーい! おーい!」
何度も叫んで手を振って見せる。
魔物の上に乗っていたサウザーは幸たちや港にいた人々が手を振っているのを望遠鏡で見ていた。
「たく……そんな、大騒ぎしなくても」
呆れてため息をこぼす彼だが、すぐに立ち上がり手を振り返してみせる。
「おーい! 今、戻ったぞ!」
サウザーは無事に暖かな港に戻ることが出来た。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
食の国リトラルはこの世界で一番心暖かい国かも知れません。
帰って来た青年を何も知らない港の人たちでも自然と迎え入れてしまったりと
いい人たちですよ。北西部のどこかの国とは大違いでサウザーたちが訪れた時、ご飯と一緒に喚起したみたいです。
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