慣れない日々と孤島の食材 Lv.1(七話)
綿雲キャベツを集めていたサウザーたちは、籠を持った巨大な雷鳥に荷物を積み込んでいた。
もうそろそろ、引き上げるつもりだ。
不意に荷造りをしていたサウザーの手が止まる。
「マズい……」
ボソリと呟くと突然、彼は坂を駆け上がり丘の上を目指す。
「サウザーどうしたの!」
走っていく彼に幸は慌て尋ねる。
サウザーは短く一言だけ叫んだ。
「油断した!」
次の瞬間、丘の上からティーレの悲鳴が響く。
丘の上の白い花畑では、ティーレが腰を抜かしていた。
彼女は空いた口をパクパクとして震えている。
目の前には今までに見たこともない様な魔物が彼女を静かに見下ろしていた。
細長い棒状の足の上に、真っ黒な巣の様な丸い塊が乗っている。
羽毛のない羽は枝の様に細く、折りたたまれていた。
ぐるりと長い首を捻りながら黒い鳥の甲冑の様な頭がこちらを見ている。
死を司ったような鳥はティーレをその穴の空いたような白い目で覗き込む。
次の瞬間、風切り音すら置いていく程のスピードで羽が伸び、ティーレに目掛けて打ち出される。
花びらが舞う。
間一髪の所で大きな雷鳥に乗ったサウザーが助けに入った。
ティーレを抱えたサウザーは、息を吐く。
「間に合った。すまない、怖い思いをさせたね」
抱きかかえられたティーレはギュッとサウザーに掴まっていた。
驚いたと思いきや、気がついた時、サウザーに抱えられていたのだ。
あの瞬間、怖かったのだと後から気づく。
「サウザー!」
遅れて来た幸の元にサウザーは雷鳥を向かわせる。
彼はティーレを乗せたまま、雷鳥の背中から降りると事情を簡潔に説明し始めた。
「魔物に見つかった。悪いがティーレを連れて先に戻っていてくれ」
「貴方はどうするの?」
幸の問いかけにサウザーはクスッと微笑みを浮かべる。
「奴を狩る」
彼は言い終えるや否や幸を雷鳥の背中に乗せる。
「さぁ、飛べ!」
間髪入れずに彼は巨大な雷鳥に指示を出した。
彼女たちが何か言うよりも先に雷鳥は霧を潜り抜け、遥か遠くまで飛んでいってしまう。
「さて……」
幸たちを見届けたサウザーは一人呟く。
くるりと向きを変えると静かに白い瞳を怪しく光らせる黒い鳥がじっとこちらを見ていた。
彼は口角を僅かに上げて話す。
「上陸に成功したハンターが、この島に訪れなくなった訳はこれだった様だ」
彼はくるりと長杖を振り回して持ち直す。
周囲をぐるりと偵察に行っていた雷鳥たちが集まり、周りを飛び始める。
「ストリッシャウッチェロ……硬い外皮に包まれた鳥。主に植物の樹液を食べて、一日も微動だにしない。だけど、一度、縄張りに入った者がいれば容赦なく鋭いクチバシと羽で穿つ、獰猛な魔物と聞いている」
様子を見る為、辺りを歩いていた彼は足を止める。
ストリッシャウッチェロと呼ばれた鳥も長い首をぐるりと捻り機会を伺っていた。
風が流れるのが止む。
次の瞬間、目にも止まらない速さでストリッシャウッチェロが首を伸ばす。
飛ぶ事を辞めた奴は代わりに硬い殻と強靭なバネを手に入れる。
限界まで引き絞った弓矢の様に放たれたクチバシはサウザーへ一直線に向かう。
サウザーは慌てて、雷鳥を身代わりに防ごうとする。しかし、素早く放たれたクチバシは止まらずにサウザーへ迫っていく。
彼は慌てて身を交わした。
マントが少し破ける。
彼は走り出しながら、手に雷を放電し雷鳥を次々に生み出していく。
生み出された雷鳥は力強く羽ばたき、空に舞い上がる。
高く飛んだ雷鳥は落っこちる様に裏返り、真っ直ぐにストリッシャウッチェロへ突撃する。
風を切る音と共に一直線に向かう雷鳥は標的にぶつかった瞬間、黄色い閃光と共に弾け飛ぶ。
ぐらりとストリッシャウッチェロの細い足が揺らぐ。しかし、硬い殻に守られた奴は平然とした様子だ。
それどころか、折り畳まれた退化した羽まで使いサウザーに襲いかかる。
まるで無数の矢が連続して打ち出される様だ。
当たれば一溜りもない。
走り抜けていくサウザーの背後で真っ白な花が散っていく。
「雷鳥だけじゃ力不足か……」
サウザーは自身の周囲に無数の雷鳥を飛ばす。
彼の姿が見えなくなっていく。
だが、逆にストリッシャッウッチェロの視界には巨大な塊の様に見える。
これならば、狙いを定めなくても打ち抜ける様になった。
狙いを定めた奴は、折り畳まれた羽を二本同時に打ち出す。
雷鳥の群れに風穴を二つ開けた。
危険を感じた雷鳥は散らばっていく。
雷鳥の群が晴れた場所にサウザーの姿はいなかった。
真っ白な花畑に隠れる場所などない。
姿を消したサウザーにストリッシャウッチェロは辺りをグルングルンと見渡した。
それでも見つからない。
慌てる奴はとてつもない気配が何処からともなく近づいてくるのに気づく。
上だ。
奴が見上げた時、太陽の様に眩い光が視界を奪う。
高く飛び上がったサウザーが稲妻を長い杖に纏わせて、力強く打ち込んできた。
雷鳴が鳴り響き、土煙が上がる。
風が吹き荒れ、花が飛んでいく。
灰色の土煙が上がった場所には優雅に雷鳥を腕に乗せるサウザーと、地面に転がって痙攣するストリッシャウッチェロがいるだけだった。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
鳥の群と棒術で戦うサウザーはトリッキーなタイプです。
戦い方って言うのはその人の性格が出るのかもしれません。
大雑把な人だと大胆に慎重な人だと的確な戦闘を好む。
サウザーは着実に動きながらも決め所は大胆に行く性格です。
皆さんのキャラクターはどんな戦い方と性格ですか?
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