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黒星レストランと薄明昇るタルト Lv.4(十一話)

 事件はひと段落した。

 太陽が登り、丁度真ん中になった頃。


 治療を受けたマチルダは、自室のベッドでゆっくりと休んでいた。

 ふと、甘いものが食べたいと目を覚ます。


(蜜の花でもいいから何か食べたい……)


 ぼやけた天井と風に靡くカーテンを見ながらパッと浮かぶ甘い物を想像する。

 ぼんやりと思っているとコツコツと扉が叩かれた。


「どうぞ」


 マチルダの返事を聞いてゆっくりと扉が開く。

 ドアの隙間から黒い髪を垂らした幸がチラリと眠れない子供の様に顔を覗かせる。


「マチルダさん……調子はどうですか?」


 不安げに尋ねる幸に、マチルダはクスッと笑ってしまう。

 自分よりも彼女の方が大怪我を負ったはずなのだが、もう自由に動き回れている。


 幸はスススッと素早く近づいて側にあった椅子に腰掛けた。

 しばらく、モジモジと指をこねていたが、ゆっくりと口を開けて話し出す。


「ごめんなさい……こんな時に聞くのはおかしいかも知れないんですけど」


 不安げになりながらも一息置いて、幸は尋ねる。


「私たちが戦った怪物はなんだったんでしょうか?」


 どうやら、今回の一件について気になっていた様だ。

 マチルダは少し微笑みを浮かべて頷く。

 遭遇した幸には知る権利がある。


「あぁ、マチルダさん。寝ていて大丈夫です」


 ゆっくりと体を起こすと、幸は体を労って寝ていていいと言った。しかし、話すには起きていた方が都合がよい。


「幸ちゃん、私の眼鏡。取ってもらってもいいかしら?」


 幸は手早くベッドの脇にある眼鏡をとってマチルダに差し出した。

 丸い眼鏡を受け取るとゆっくりと身に付ける。

 パジャマ姿でもこれがあればいくらか目が覚める気がした。


「さてと、どこから話しましょうか?」


 一息ついてマチルダは話し始める。


「そうね。怪物たちは元々人間だったみたいだけど、確かめる術がなくなっちゃったし」


 怪物になってしまったサラは、マチルダもサウザーも共に灰にしてしまった。

 コウモリ男は絶命と同時に泡になって消えてしまい謎に包まれてしまう。


「分かってることの方が少ないですね」


 考え込む幸にマチルダは頷く。


「えぇ、あの後、森のレストランへ、何人か派遣したみたいだけど何も無かったみたい。それどころか、何年も使われていない廃墟だったそうよ」


「そんな!」


 あの穏やかで花のあるお店が夢だったとは、二人とも信じられなかった。しかし、報告書は事実でしかない。


「デセール、彼女の目的もよく分からないけど……調査の結果、一つだけ分かった事があるわ」


 壁に寝そべりながらマチルダは息を吐く。


「アドミラビリス・アルカヌス教の痕跡が発見されたの」


「アドミ……なんて?」


「アドミラビリス・アルカヌス教。かつて、ここ、食の国リトラルに存在した宗教で今では邪教として有名なの。表向きはなんでも、海を祖として崇め奉るみたい」


 霧の国出身のマチルダにとって宗教とは縁のない組織で肩を窄めてしまう。


「裏では邪神を崇めて、世界の破滅を祈っていたとか、それで国の意向に反して滅ぼされたみたい。それも何千年も前に」


「そんな組織がどうして……」


 不思議がる幸にマチルダは首をゆっくりと振ってしまう。

 彼女はため息をついて、復帰後の書類整理に頭を悩ませる。


「分からない。はぁ、今後はデセールの動向も追わないといけないし、先生になんて報告しましょう」


 眉間に皺を寄せてこめかみを押さえ込む。


 厄介ごとの案件とは立て続けに起こりやすい。ただでさえ、ドラード家の件でも相当手間を要するのだ。


 悩みの種が今すぐに消えることを願った。しかし、願っても変わらない。

 陰鬱なため息を吐きながらマチルダはゆっくりとベッドから抜け出した。


「幸ちゃん、何か食べましょ。確か、買いだめした焼き菓子が少し残ってたはずだから」


「あ、じゃあ私、お茶入れますね」


 動こうとするマチルダを不安げに眺めながら幸は立ち上がる。

 素早く動いて、マチルダの肩を支えた。


「ありがとう。私にも祝福の力があれば良かったのだけれど。そしたら、あなたみたいに丈夫だったかもしれないわね」


 元気そうな幸を見ていると少しだけ妬いてしまう。


 厳しい環境でも耐えられる体ならこうして、歩く事に苦労はしなかっただろう。

 だが、幸は難しい顔をして呟く。


「そうですか? 風邪で休みたい時とか体が丈夫だと言い訳できないじゃないてますか」


 ちょっと腑抜けた事にマチルダは思わず笑ってしまう。


「そうね」


 二人はゆっくりと階段を下っていった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

祝福の力は他の人よりも丈夫な体になります。ちょっとやそっとでは大けがになりません。

でも、自分より大けがだったはずね人が目の前で元気にしているって何なんでしょうか?

不吉な集団が出てきましたね。ろくでもない組織は霧の国でも多いですがこっちには神がいるそうです。

海の邪神なんてろくな存在じゃないですよね。

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