黒星レストランと薄明昇るタルト Lv.4(三話)
料理を待っている間、二人は最近、読んだ小説の話をして盛り上がっていた。
「主人公が四苦八苦しながらも頑張る姿が可愛かったの」
「うんうん、選んだ選択が全部裏目に出ても、それでも前に進んでいくのが痛ましのに、愛おしく思ってしまいます」
「あぁ、あと途中で出てきたフルーツタルトがとても美味しそうだった。いつか、食べてみたいわ」
「あはは、マチルダさん。ずっと言ってますね。でも、すっごく分かります。キラキラな果物がまるで宝石の様に見えて、私もいつか、食べてみたいです」
二人は一つの小説をこれでもかと話し続けた。書かれた内容の十倍は話しても、止まる気配を見せない。
カランと音を響かせて、レストランの入り口が開く。
思わぬ音に二人は口を閉じてしまう。
「わぁ、素敵なお店。ルイ、見つけてくれてありがとう」
「どうって事ないさ。すみません、二人です」
男女の二人組は落ち着いた様子で入って来た。
男性の腕にギュッとしがみつく女性の姿を見て、付き合っているのだと一目でわかる。
厨房にいるデセールに呼びかけた。
「二人なんですけど、予約とか必要でしたか?」
「はい、はーい、大丈夫ですよ。好きな席に座って下さ〜い」
料理をしながらデセールは案内を行う。
急に話を止めてしまった幸とマチルダは話の続きをしようとする。しかし、どこから話せばいいのやら、あやふやになってしまった。
妙な沈黙が上れてしまう。
気恥ずかしくなった幸はチラリと離れた場所に座るカップルの方を見る。
店内の雰囲気を楽しみながら楽しそうに話しているのが見えた。
(そう言えば……)
不意に浮かんだ疑問をそのまま、マチルダに尋ねる。
「マチルダさんとサウザーって長い付き合いなんですよね。どう言った関係なんですか?」
何気なく聞いた質問にマチルダはニンマリとした笑みを浮かべて見せた。
「何、気になるの〜サウザーは今、フリーだから安心して」
茶化す様な言い方に幸はムッとする。
「別にそう言う意味で聞いたわけじゃありません!」
「うん、うん、分かってるわ」
軽い返事をするマチルダだったが、笑い終わるとため息をこぼす。彼女は目を背けながら言った。
「あいつとはただの腐れ縁」
腐れ縁と聞いて幸は意外に思ってしまう。
仲良く同棲しているのだから、恋人でないとしても、友人や義理の家族などと、もう少し仲が良い関係を言うと思っていたのだった。
「腐れ縁……ですか?」
幸は思わず、繰り返してしまう。
「そう、たまたま、あいつを見つけちゃったのが運の尽き。そのせいでサウザーの師匠から押し付けられちゃったの」
憂鬱そうに肘をつきながら息を吐く。
「サウザーの師匠……ってことは、魔法を教えてくれた人なんですよね? どんな人なんですか」
サウザーに魔法を教えた人が一体どんな人なのか、気になってしまう。
きっと、聡明で頼れる人なのだと勝手に想像してしまう。だが、あまり、聞かれたくない話題だったのかもしれない。
マチルダは大きく目を回して、嫌な顔をする。
「ただの飲んだくれよ。昔はもう少しまとも……でもないわね。今の忘れてちょうだい」
思い浮かんだ雲を彼女は手で払いのけてしまった。
代わりに自分の事を話す。
「サウザーのお目付役として一緒に飛ばされちゃったけどね。行き先が観光地で本当に良かったわ。お陰で楽しく過ごさせてもらっているもの」
椅子に深く座り込みながらマチルダは言う。
話を聞いていた幸は、マチルダの前向きな所に惹かる。
自分も同じ様に前向きに過去を受け止める事が出来たなら良いのにと思ってしまうのだった。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
サウザーの師匠は結構年が近く、マチルダと同期です。あやかしの作品を読んでいる人ならきっとわかるはず! 是非ともコメントで当ててもらいたいです。
ロトンドさんとの待ち合わせ場所に向かったサウザーたち、おや、見慣れない姿が一人。
純白の仮面に深々と旅のフードを被った美女がサウザーの隣を恥ずかしそうに歩いていた。
ロトンドさんは眉を顰めて睨むが深くは聞かずに仕事の話を始めるのだった。
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