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黒星レストランと薄明昇るタルト Lv.4(二話)

 森の中にある小さなレストランへ入ったマチルダと幸は、中の光景に驚いてしまう。


 悪質なレストランと聞いて、小汚い店だと思っていたのだが、清潔感ある落ち着いた店内が広がっていた。


 外観と同じ様に黒い木材と白い壁で作られた室内に、細やかな緑が飾られている。

 外の暑苦しさはなく、ひんやりと気持ちのいい涼しい空気に包まれていた。


「「……」」


 呆然と立ち尽くす二人は互い見合って肩をすくめる。


「素敵な雰囲気のあるお店ね」


「えぇ……そうですね」


 本当にここで悪質な料理を提供しているのか、信じられなかった。

 森の中に隠れたお洒落なレストランでしかない。


 あのビナスと言う人が誤ってリストに加えてしまったのか、それとも偏見でいれてしまったのか、疑ってしまう。


「取り敢えず、誰かいないか探してみましょ」


 マチルダの言葉に幸も頷く。

 二人はゆっくりと室内を見ながら、誰かいないか呼びかける。不意にパシャンと割れる音が響く。


 奥の厨房の方からだ。


 二人は慌てて、中へ駆け込んでいく。

 水を張った洗面台の前でしゃがみ込む少女が顔を上げて、こちらを見ていた。


 駆け付けた幸と少女の大きな瞳が合う。


 ピンクと水色が交互に並んだ髪色の少女は、大きな目と口をこれでもかと開けて叫ぶ。


「わぁ、お客さんだ。いらっしゃいませ!」


 可愛らしいフリルの付いたエプロンを身に着けた彼女は目を瞬かせながら、お客さんへの案内を忘れない。


「二名様ですね。お好きな席の方でお待ち下さい。今、ちょーっとだけ、手が離せなくて……あぁ、すぐに片付けるので心配しないで下さい」


 少女はハキハキと言いながら床に散らばった破片を拾い集めようとする。だが、洗面台の足に肘をぶつけてしまう。


「あっ」


 上に乗せていた山積みのお皿がまた落ちてしまう。その時、幸の隣に立っていたマチルダが何処からともなく杖を取り出して魔法を発動する。


 落下する食器は地面に落ちる前に空中で止まった。

 間一髪、片付けの手間を増やさずに済んだ。


 ヒヤリとした幸は、胸を撫で降ろす。

 食器を受け止めたマチルダに驚く。


「すごい……」


 素直に驚いてくれる幸にマチルダは得意げに鼻を鳴らす。


「でしょ〜まぁ、こんなの魔法使いなら朝飯前よ」


 二人はもう一度、少女の方を見る。

 身を屈めて目を覆っていた少女はゆっくりとこちらの方を覗く。

 申し訳ないと頭をかきながら話す。


「いや~お恥ずかしい、お皿を取ってくれてありがとうございます! あたし、ちょっと抜けてる所があるみたいで、ごめんなさい」


 謝る少女にマチルダは宥める様に言った。


「気にしないで、困った時はお互い様よ。それより、あなた一人? オーナーは?」


 辺りを見渡しても目の前の少女しか店にはいない。

 小さな厨房には洗面台と机、調味料と調理器具が収納されていた。


 厨房の奥には大きな暖炉が一つ、備えられている。

 ここで大きな料理を作るのだと幸は勝手に想像してしまう。


(あれ? なんか、ついてる?)


 暖炉の奥に線が見えた気がした。しかし、深く考えるよりも先に少女がマチルダの問いかけに答える。


「はい、あたし、一人です! ようこそ、アビレストへ。ここのシェフのデセール・マリーヌと言います」


「あなたがシェフ⁉︎」


 シェフを名乗る少女、デセールにマチルダが目を見開く。

 彼女はすぐに冷静を装うが口に手を当てて動揺を隠していた。


「驚くのも無理はありませんよね」


「あぁ、気を悪くさせてごめんなさい」


 しょんぼりするデセールにマチルダは謝る。


「いえいえ、こんな失敗をしてちゃ、そう思われても仕方ないですよね。でも、ご安心を、腕はありますので!」


 ほっそりとした腕に力を込めて、鼻息荒く胸を張って見せた。

 可愛らしい仕草にマチルダと幸は見守りたくなってしまう。


「さぁ、さぁ、お客さん、席に座ってください。あたしがすっごーく美味しい食事をご馳走させて見せましょう」


 デセールは言いながら料理の準備を始める。


「マチルダさん、本当にここで悪質な料理が提供されているんでしょうか?」


 幸は少女に聞こえない声でマチルダに尋ねてみた。

 自分にはどうにもビナスの偏見の様に思えたのだ。


「さぁ、まだ分からないわ」


 マチルダは肩を窄めて言う。


「もしかすると、リトラルのレベルに合わないって理由だけの可能性もあるわね。ともかく、まずは食べてからにしましょう」


 彼女はくるりと向きを変えて、料理人の聖域から出て行く事にした。


 幸も後をついて行く。


 不意にデセールが困っていないか心配になってしまった。


 幸はもう一度、振り返る。しかし、彼女は先程とは違って落ち着いた様子でテキパキと料理の支度をしていた。


 まるで別人の様だ。


(あれ? あの子、どこかで……)


 記憶の片隅で彼女に見覚えがあった。

 デセールとどこかであった様な気がする。


 引っかかる所があるが、すぐに思い出せそうにない。

 幸はマチルダの元へ行き、料理が来るのを待つ事にした。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

森の中のレストランと言ったら注文の多い料理店が有名ですよね。

他にはどんなのがあったかな? さて、このお店は一体料理がでてくるのか?

あぁ、あと、サウザーたちはロトンドさんの依頼現場まで向かっています。ただ一つ問題があって、近づくなと言われていたアウリスをどう扱ったらいいのか話し合う事になりました。

アシュメ、その黒くてテカテカなマスクを置きなさい暑いから。

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