正体不明の刺客と痺れるバーガー Lv.5(十三話)
サウザーのハンバーガーを食べ終えたアウリスはホッと胸を撫で下ろす。
今までになかった思いにまだ、浸っていたかった。しかし、悪魔が許すはずがない。
安心し切っていたアウリスの首が突然、強く締め付けられる。
「!」
首に絡みついていた縄が引っ張られてしまう。
アウリスは宙吊りの手前、僅かに足の爪先が届く様なギリギリに立たされる。
「ねぇ〜小鳥の坊や、これって少し不用心じゃないかしら?」
甘く煮詰めた様な声色が耳の後ろから話す。
蛇の様な冷たい存在にアウリスは恐怖を覚える。
「あぁ……あ……」
安心して油断し切った所に仕掛けられた。
アウリスは必死に縄を緩めようとする。
このまま、締め殺されてしまう。
今更になって死ぬのが怖くなった。
「やめろ、アシュメさん」
ハンバーガーを食べていたサウザーは杖を握り、止めようとする。
アシュメはアウリスの真後ろに隠れて手が出せない様にした。
「小鳥の坊や、忘れているかもだから、もう一度言うわね。このエルフは私たちを殺そうとした犯罪者よ。自由にさせちゃダメ、ダメ♡油断した隙にやり返されるわ」
暗闇に光る怪しい黄緑色の瞳がサウザーを指す様に睨む。
多くの罪人を見てきたアシュメだからこそ、僅かな油断が命取りになる事をよく知っていた。
「しっかり締め上げるか、噛み付くことなんて考えられない様にとことんやってしまうか、どちらかよ」
アシュメが言い終わるとアウリスの首を絞めていた縄が緩む。同時にへたり込んだ彼女をアシュメは再び、動けない様に結んだ。
「アシュメさん、貴方は強引だな」
一連の動きにサウザーはギロリと怒りを滲ませた眼差しで睨む。
「あら? ブリッジランドの方が容赦のかけらもないでしょ?」
彼女の言葉にサウザーは何も言えない。
その通りだ。
霧の国ブリッジランドなら降り掛かる火の粉は潰し、跡形もなく無くす。
邪魔をする者の命など考える価値すらない。
黙り込むサウザーを見て、アシュメは肩を窄める。
彼女はアウリスを見下ろしながら話す。
「まぁ、どうせ、私の管轄じゃないしリトラルの警官に任せるしかないのよね。ざ〜んねん♡」
機会があれば、アシュメは不敵な笑みを浮かべる。
企んでいる事が碌でもない事が誰にだって分かった。
アウリスは自分たちの命を狙った刺客。
どうなろうと知った事ではない。
サウザーもそう、割り切ろうとした。しかし、どうにも腑に落とし切れない所がある。
それが何なのか彼には想像もつかなかった。
簡単にアシュメの意見に任せようとした。その時、隣で拒絶する声を耳にする。
「ダメです!」
鳥の様な声にサウザーはハッとした。
見ると鋭い視線をアシュメに向ける幸が隣に立っていた。
アシュメが苦手なのか彼女はサウザーを盾に話す。
「これ以上、その人を苦しめないであげて下さい。もう十分、地獄を歩いて来たんです」
ぬるま湯の様な戯言にアシュメはつまらなそうに首を回す。
「幸ちゃん、本気で言ってる? 貴方に三本も矢を撃ち込んだクズよ。こんな奴、豚箱に入れて家畜の相手をさせるに相応しいわ」
「貴方がすればいい」
ピニャリと言い返す幸はスッとサウザーの背後に隠れる。
アシュメはボソリと、確かにと頷くが、そんな簡単に引く気はなかった。
後ろに隠れる幸はサウザーの方を見やる。
彼に何か意見を求めて来た。しかし、サウザーは彼女の求める物を持っていない。
首を振って答える。
「幸、アシュメさんの言う通りだ。彼女は危険で野放しには出来ない。また、雇い主の命令で僕たちを殺しにくるかもしれない。今度は反撃の隙すらないかもしれない。彼女はリトラルの警官に引き渡すべきだ」
アウリスの危険性について語った。
一度、戦ってしまった以上、簡単には終わらせられない。しかし、幸はそんな事はないと力強く首を振る。
彼女の瞳には強い意志が宿っていた。
「サウザー、言ってたよね。雇い主を覚えていないって、分からないならいないも一緒よ」
幸の言葉にサウザーは一瞬、撃たれた様に固まってしまう。
しばらくして、彼は呆れて笑い出してしまった。
「あぁ、確かに知らないならこれ以上、命をかけて僕たちを狙う意味もないね」
ゆっくりと前へ歩き出す。
アウリスの元へ行くと彼女を縛り付けていた縄を全て解いた。
唖然とするアウリスは自由になった腕を触りながら言う。
「後悔するわよ……」
「構わない。次なんてのだから……」
サウザーは静かに優しく微笑む。
「誰も傷つけさせない……守ってみせる」
アウリスはジッと睨む様に彼を見つめていた。
遠くで見つめるロトンドの方を見る。
ロトンドは煩わしそうに顔を背けて言った。
「お前たちが捕まえた獲物だ。好きにすれば良い……その代わり、そいつの顔を二度と見せるんじゃない」
彼はそっぽを向いた。やがて、風が吹いて止んだ時、自由になった動物の様に森へ駆けていく。
あっという間に姿を消したアウリスを三人は静かに眺めていた。
「襲ってきた相手を許すなんて」
信じられないとアシュメは首を振る。
「誰かが許さないと、諦めないと辛いだけです。彼女だって好きでやっていた訳じゃない」
彼の言葉にアシュメは吐き捨てる用に言った。
「綺麗事ね……」
彼女の言葉にサウザーは鼻で笑ってしまう。
「綺麗事でいいじゃないですか、本当はみんなそうしたいと思っているんだから。だからこそ、少しでも現実に変えてみたいんです」
サウザーはチラリと後ろを振り返る。
視線の先には黒いロングヘアーに前髪が特徴的に跳ねた幸が立っていた。
「貴方や僕じゃ、こんな答えに辿り着けなかった」
サウザーと目があった彼女は嬉しそうに笑って頷く。
「誰も許せないのなら、憎しみ続けるのは背中を射抜いた矢の様にずっと痛いよね。私、そんなの嫌だから……」
優しい幸の言葉は暖かな風と共に空に飛んで言った。
空は晴々としている。
清々しい気分だ。ちょうど、黄色い鳥が迎えの馬車を連れて来て来てくれた。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
ひねくれ者になってしまうと真っ直ぐな言葉すら口にする事が恐ろしいです。
それを言ってしまえる幸はすごく成長した様に見えます。もしかすると、元々、そう言う心を持っていたのかもしれません。逆にサウザーは自身の歩んできた道からそう言う綺麗事を言い切れない気持ちがありました。それでも、綺麗事言いたいと心では思っているみたいです。アシュメは論外
「リトラルの鳥使い」面白かったらぜひ、ブックマーク高評価をお願いします。
また、お気軽に感想など書いて言って下されば励みになります。
他作品も書いていますのでよろしければ、そちらも読んでいただけると嬉しいです。
よろしければ、X(Twitter)のフォローもお願いします。
https://x.com/28ghost_ran?s=11&t=0zYVJ9IP2x3p0qzo4fVtcQ




