正体不明の刺客と痺れるバーガー Lv.5(十二話)
馬車から食材を貰ったサウザーは料理の準備に取り掛かる。もちろん、馬車の主人ロトンドからは許可をもらっていた。
「すみません、助けに来たっていうのに食材を貰ってしまって」
謝るサウザーにロトンドは悪態を着くように話す。
「まさか、お前みたいな子供に助けられるとはな。ああ、持っていけ、どうせ、俺一人の報酬は減った訳じゃないしな」
ロトンドはしばらく黙っていたが、遠くに見える助手を見て静かにサウザーへ語りかけた。
「あそこでくたばっているのは俺の助手でエジレと言うんだが、俺よりも酒が飲めるからと調子乗っていたんだ。まったく、少し飲めるぐらいでだ。いつまでもヘラヘラ笑っていて何が面白かったなんてもう聞けやしないな」
ロトンドは寂しそうに俯く。
悪態を着いていても仲が良かったのかもしれない。
彼は吹っ切るように話す。
「あいつの事だ。いつもの様に笑って許してくれるだろ!」
持ってけ、持ってけ、と彼は手を払う。
パンと形の悪くなった肉、これさえあれば、後は近くの薬草を使えばいい。
「これなら……アレが作れそうだ」
ちょうど作りたい物が作れそうでサウザーは笑みを浮かべる。
隣で見ていたアシュメが驚いた様子で話す。
「小鳥の坊やはなかなか、家庭的なのね。さぞ、モテるのでしょ?」
サウザーは特にどうとも思うことはなく答える。
「食の国リトラルでは誰でも料理が出来ますよ。美味しい物が多いのに出来ないのは勿体無い」
「サウザ〜私にも何か手伝わせて」
木陰で休んでいた幸がもの寂しそうに言う。
肩と背中に矢を受けて思う様に動けない彼女だが、何もせずにいるのは落ち着かない様だ。
サウザーはボールと取れたての薬草を手渡す。
二人は淡々と準備を整えていく。
「小鳥の坊や、ちょっと聞いてもいいかしら?」
肉をミンチにするサウザーにアシュメは話しかける。
「えぇ、答えられる範囲でなら……」
手を動かしながらサウザーは頷く。
「貴方のその力について……祝福の力なのかしら? でも、それならもっと簡単に終わらせられたわよね……魔法……が使えないのによくあのエルフを捕まえられたわね」
チラリとアウリスの方を見ながらアシュメは言う。
彼の手から無尽蔵に生み出される雷鳥は神の国バシレイアの祝福の力だと思った。しかし、魔法妨害の粉に苦しんでいるのを見て、魔法によって生み出しているものと思ってしまう。
結局、どっちなのか分からずアシュメは思い切って尋ねてみたのだ。
サウザーはあぁ、と口を開いてぼんやりとする。
「まぁ、話した所で変わらないか……」
少しして彼は、自身の能力について話し出した。
「アイツらは半分祝福の力で、半分魔法によって生み出しています。僕の祝福の力は雷を鳥にして操る程度の能力で雷自体を作り出せないんです」
「あら、神様ってケチなのね。雷を使うなら付けといていいじゃない」
同情するアシュメにサウザーは全くだと頷く。
「文句を言っても仕方ないから魔法で雷を作り出しているんですよ。だから、周りのアイツらを潰されて、魔法妨害をされた時は肝を冷やした」
肉の用意を整えたサウザーは焼く用意を始めた。
狼煙の隣で燃える焚き火に平たい岩を乗せる。
しっかり熱が入った事を確認して油を敷いた。
熱で空気が揺らぐ先でアウリスは目を丸くしてサウザーを見つめる。
「私は半端な人間の赤子に負けたのか……」
呆然とする彼女にサウザーは二、三個訂正を言ってやりたかった。
自分はもう子供ではない。ましてや、赤子なんて年じゃないのだ。しかし、エルフから見れば赤子同然だった。
中途半端な能力というのも自覚している。
石の上に平たくした肉を広げていった。
彼は雷鳥に持ってきてもらった果物を持ち上げていう。
「まぁ、これが近くにあって良かったよ」
安堵のため息を零しながら、全員に見える様に掲げる。
トゲトゲとしたパイナップルで僅かに雷が放電していた。
「何それ?」
不思議がる幸に、サウザーが話そうとする。しかし、彼の口よりも先にアウリスから出てきた。
「ヒライパイナップル……森の奥に育つ果実で、大きな木と果汁の性質で雷を引き寄せる。なぜ、そんな物があると知っていたの?」
アウリスの問いかけにサウザーはクスッと微笑む。
「なに、ある料理人見習いが教えてくれたんだ」
港の市場で出会った不思議な少女を思い出す。
大きな目玉に水色とピンクの飴の様な髪の色をした料理人の少女。
彼女のおかげで、唯一とも言える勝利の糸口に辿り着くことが出来た。
香ばしい香りが漂う中、サウザーはヒライパイナップルの皮を大胆にカットする。
円柱になった身を輪切りにしていった。
「あり得ない、触れるだけで雷に打たれるのと同じ事が起きるのになぜ、平気なの?」
驚くアウリスにアシュメが言う。
「マゾだからよ」
「違います。何を言っているんですか?」
毎度ふざけるアシュメにサウザーは呆れる。しかし、だんだん、彼女の扱いに慣れてきた様な気がした。
「単純に耐性があるだけですよ。それ以上でも、それ以下でもない」
輪切りにした実を強火で焼いていく。
さらにパンの断面も軽く焼いていった。
お肉の色が変わり、十分に火が入った頃、サウザーは丁寧にパンの上に重ねていく。
「完成、ヒライパイナップルのハンバーガー」
自信作を作り出したサウザーはいつもよりも楽しそうだった。
ジューシーな肉汁にシャキシャキの薬草。そして、トマトの代わりに黄色いパイナップルが挟まったハンバーガーに幸はよだれが止まらない。
サウザーから受け取るとハンバーガーにかぶり付く。
危うく挟まった肉がこぼれ落ちそうになる。
「ん~んん!」
「あら、蕩ける肉汁にシャキッとした野菜と痺れる酸味のパインが最高ね♡」
油で汚れた唇を拭きながらアシュメも絶賛した。
美味しそうに食べている彼女たちをアウリスは静かに眺める。
木陰にいるせいか、彼女たちがとても眩しく見えた。
「貴方も食べませんか?」
ハンバーガーを持ってきたサウザーは優しく尋ねる。
アウリスはすぐに首を振って目を背けた。
「いらない、施しは受けないわ!」
強がる彼女だが、体は正直の様だ。
くーっと可愛らしい音を鳴らして、お腹が空いている事を知らしてくれる。
返事を聞けたサウザーは迷わず、彼女の縄を切った。
体をキツく縛り付けていた縄は解けて、擦れたあざを残して地面に落っこちる。
サウザーの行動にアウリスは目を丸くした。
「なぜ、解く。私はお前を殺そうとしたのよ?」
彼女の問いかけにサウザーはしばらく答えない。
時間をたっぷり使ってゆっくりと答えを見つけて話す。
「お腹が空いたからかな? 作りすぎてしまったからかもしれない……兎も角、貴方も食べませんか? お腹が空いていちゃイライラしてしまう」
曖昧な答えに今も悩むサウザーは、キョトンと座るアウリスの前に紙に包んだハンバーガーを置いた。
彼はアウリスの返事も聞かずにその場を離れる。
ロトンドにも分けに行った。
一人、取り残されたアウリスはぼんやりと目の前の食べ物を見下ろす。
投げ捨ててしまおうか、一瞬、頭によぎった。
あんな、生温い赤子に慈悲などかけられたくない。
腑が再び煮え繰り返りそうになった。
不意に先程のサウザーの言葉が頭を過ぎる。
「お腹が空いてちゃイライラしてしまう」
そんな訳ない。
お腹が空いていようが、満腹だろうが怒りなんて消えないのだ。
数千年にも抱き続けていた怒りなど、地獄の炎の様に消すことなど出来ない。
信じ切っていたアウリスは、彼の考えを否定する為にハンバーガーを喰らいつく。しかし、彼女の炎は恵みの嵐の様に一瞬で口の中に広がった味に攫われてしまう。
舌に絡みつくお肉の油に甘酸っぱいパイナップルが口の中に広がっていく。
パサパサな携帯食料を食べ続けていたアウリスにとって、ハンバーガーは味の濃い食べ物だった。しかし、不思議と気持ち悪くならない。
むしろ、もっと食べたいと食欲が湧いてくる。
塊切った筋肉がピリピリと微弱な電気によってほぐされていった。
乾き切った心が潤っていく。
アウリスは初めての感覚を覚える。
長い旅を終えて、帰路に着いた様な安心。
帰ってきたんだ。
頭によぎった言葉に涙が出てくる。
ずっと、奪われていた物を取り戻した彼女は何千年も忘れていた涙を溢す。
アウリスはこの感覚が続く事を願って、ゆっくりと噛み締める。
よく味わってサウザーの作ったハンバーグを食べていくのだった。
トマトの代わりにパイナップルでハンバーガーを作りましたが、
サウザー内心、だいぶ、疲れてしまっていたので美味しいの食べたいで作ったアイディア料理です。
でも、すっぱいと肉汁はベストマッチなので、もし、よかったら試してください。
バーガーではなく、ハンバーグになるんですけど、びっくりドンキーで試せるのでぜひ!!
試せるので、でひ!(ヘンテコな圧)
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