正体不明の刺客と痺れるバーガー Lv.5(七話)
エルフは長寿の生き物と聞いている。
艶やかな美しい金髪に、エメラルドの様な輝く瞳を持っていると言う。
その存在はおとぎ話の中にしかないとサウザーは思っていた。しかし、可能性としてあり得る。
アシュメの話に最初は耳を疑った。
相手がどれ程の弓の名手でも、おとぎ話の生物が出てくるとは限らない。
「でも、可能性としてはアリでしょ?」
考え込むサウザーに顔を覗かせてアシュメは言う。
「確かに祝福の力や魔法による遠隔操作も考えられる。でも、どっちも違うと思わない?」
試す様にサウザーを見つめる黄緑色の瞳。
サウザーは小さく頷いた。
「祝福の力なら標的である僕たちを射抜けていたかもしれない。直接的な能力でなくても、魔法使いである可能性はない……なぜなら、魔法妨害の粉を敵はばら撒いたから」
祝福の力が距離などを見極めると言った補助的な物で弓の技術は本物の可能性もありうる。
魔法妨害の粉も範囲から離れた場所から狙っている可能性もあり得た。しかし、どちらも違う様な気がする。
これ程、狩りに長けた相手はそういない。
もしかすると、アシュメの発言に引っ張られているのかもしれない。
サウザーは息をついて考え込む。
食の国リトラルは神の国バシレイアや霧の国ブリッジランドなど多くの国から観光や隠居のために訪れる人が多い。
可能性を上げればキリが無かった。
「なんにしても、敵が相当な弓の名手と言う事に変わり無いな」
アシュメもそれには同意する様でこくりと頷く。
「問題はどうやって二人を助けるかだ……」
助ける為には彼女たちに刺さった矢を抜かなければならない。だが、下手に抜いたら一生の傷になる可能性がある。
考えあぐねていた。その時、再び弓使いの挑発が起こる。
森の奥から矢が飛んで来た。今度は馬車の主人の足に命中してしまう。
悲痛な叫びが再び森に響き渡る。
「クソ! どうしたらいい、このままじっとしていちゃダメだ」
歯を食いしばりながら、サウザーは地面を殴った。
自分自身も耐えられないが、相手もそう長くは待つ気がない。
人質を痛ぶり、何がなんでも引き摺り出すつもりだ。
早く飛び出して二人を助け出したい。その時、目を疑う物を目撃する。
矢を受けて倒れていた幸がゆっくりと動き出す。
「まぁ」
アシュメも驚きの声を漏らした。
幸は地面を張って馬車の主人の元まで近づいていく。
彼女は撃たれた主人から矢を一本、二本と抜いていった。さらに覆い被さりながら次の攻撃を守る動きを取る。
再び飛んで来た矢を幸は背中で受けてしまった。
悲鳴を噛み殺して、必死に救助対象を守る。
その光景にサウザーの理性の糸がプツンと途切れてしまう。
「アシュメさん、すみません……」
地面に伏せていた彼は立ち上がり言った。
「僕、これ以上、ウダウダ考えられません」
静かに煮えたぎる腑にサウザーはため息を吐く。
「待ちなさい! それじゃあ、相手の思う壺よ」
一人で突っ走ろうとするサウザーをアシュメは呼び止める。しかし、サウザーは冷たく言い放つ。
「構いません」
「いいえ、良くないわ。あなたが無謀をして誰が喜ぶの?」
彼女の言葉にサウザーは皮肉めいて笑う。
「協会が喜ぶんじゃないですかね?」
彼の皮肉など気に求めず、アシュメは言い切る。
「幸ちゃんは悲しむわ。それに私も目の前でイケメンが死ぬなんて興奮一回しかなくて面白くない」
あなたの事情などどうでもいい。
サウザーが飛び出そうとした。その時、アシュメは言う。
「私が出るわ」
耳を疑った。
安全策を取ろうとしていた女が突然、危険な役を受け持つと言い出したのだ。
ブリッジランドでは信じられない話である。
アシュメは不敵な笑みを浮かべてペロリと舌なめずりをした。
「こう見えて、私、強いのよ。それに……小鳥の坊や、あなた、さっきからやりたい事があるのでしょ?」
見透かす様な黄緑色の瞳は一瞬、夜闇の様に煌めく。
視線の先にいるサウザーはほだされて真似る様に不敵な笑みを浮かべるのだった。
小鳥の坊やと呼ぶのはある少女と紐づけたからだと思います。
この世界でも、現実でも可能性は無数に広がって想像しきれない時がありますよね。
例えば、隣の席の子は家で何をしているのか……想像のその字もしきれないんです。
ただ、一つずつ読み解いて何とか答えを手繰り寄せる事は出来なくはないです。
難しい! 次回もお楽しみに
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