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正体不明の刺客と痺れるバーガー Lv.5(六話)

 大自然の清らかな空気を肺に戻しながら息を整えるサウザー。

 救助にやって来た彼だったが、思う様に出来ずにいた。


 襲撃にあった馬車は大破しており、乗っていた主人は人質として馬車の側、地面に釘付けにされている。


 サウザーと一緒に来てくれた幸も人質の一人として矢で射抜かれてしまったのだ。

 自分が付いていながら何をしているのか?


 悔しさで唇を噛み締める。


 どう言う訳か、雷鳥も作れなければ、助けに行けずにいた。

 おまけに敵の位置が分からずにいるのだ。


 一つだけ、幸な事を上げるとしたら、味方がいる事だろう。

 もっとも、本当に味方と言っていいのか、サウザーには決められない。


 チラリと隣を見るとマゼンタピンクの長い髪に、怪しく煌めく黄緑色の瞳をした女が身を屈めていた。

 神の国の刑務所の職員である彼女は、荒い息遣いをしながらニヤリとひどい笑みを浮かべている。


 サウザーは目を背ける事にした。


 もう一度、状況を確認する。


 馬車の側に主人と幸が倒れていた。


 彼らは矢が刺さり、自力では動けない状態の様だ。


(あぁ、クソ! せめて、雷鳥が一匹でもいれば)


 雷鳥がいなければ、自分がここまで無力だと痛感させられる。

 反吐が出る様な思いは、霧の国を出る以前までで一生分してきたのだ。


 これ以上はいらない。


「そう言えば、名前を聞いていなかったわね」


 不意にアシュメが名前を尋ねてくる。彼女は続けて言った。


「一様、さっきまでは敵対していたけれど、私も可愛い囚人を見殺しにする程、冷たい女じゃないわ。どう、私と手を組まない」


 握手を求める様に彼女は手を差し出してくる。

 頭数が増えれば、助けられる可能性が上がる。しかし、サウザーはどうにも腑に落ちずにいた。


「いきなり襲って来たのはあなたでしょう?」


「それは……ん〜そうね。ごめんなさい。私も仕事であの子を捕まえるのに必死で、頭に血が昇っていたのかもしれないわ♡」


 唇を尖らせて、視線を外しながら言う。


「で〜も〜♡」


 黄緑色の瞳がサウザーを捉える。

 アシュメはグイッと距離を詰めて、サウザーの頬を撫でた。


(近い!)


「罠だと知らずにノコノコと近づいていたあなたを助けたのよ〜そこは忘れないでちょうだい♡」


 囁く様に耳元で呟かれたサウザーは何も言えなくなる。

 自分が気づいていれば、幸を危険に晒す事はなかった。


 両目を瞑り、彼は自分自身を落ち着かせる。良い方法はなんなのか考えこむ。


 ゆっくりと瞼を開いた。

 黄色い瞳に映る星がキラリと光る。


「ランサン郵便協会、食の国リトラル支部所属のサウザー・ピジュンです。人質の救助のご協力、お願いします」


 握手をする代わりにサウザーは自身の素性を明かした。


「サウザー……ピジュン……」


 アシュメは後に続く様に彼の名前を口ずさむ。やがて、満足した様にニンマリと笑みを浮かべて頷いた。


「よろしくね。小鳥の坊や」


 鳥使いと呼ばれる事が多いサウザーには、聞き馴染みのない呼び方だった。


「それじゃあ、あの子達を助ける話をしましょうか」


 アシュメは思っていたよりも協力的で地面に伏せながら人質の様子を窺う。


 サウザーも同じ様に覗いた。


 馬車の主人と幸は地面に倒れ、痛みに悶えている。

 主人の方は手に一本突き刺さっているだけだった。


「あれ、自力で抜けられるんじゃない。根性ないのかしら?」


 眉を顰めながらアシュメは呟く。


「無茶を言わないで下さい。あれは薔薇の木から作った矢で下手に抜いたら余計な痛みが伴います。それにあれはまだ成長を続けているみたいだ。地面に根を生やしているのかもしれない」


 すぐに動かせない事が分かる。だが、致命的な怪我をしてないだけでも良かった。


「問題なのは……」


 サウザーは拳を震わせて呟く。


「小鳥の坊や、分かっているわ。幸ちゃんの方よね。あの子も頑丈な方だと思うのだけれど、心臓の側に刺さっているわよね。ずっと引き抜こうと手を伸ばしてはやめてを繰り返している。痛みに耐えきれずにいるのね。可哀想に……」


 哀れむ様に呟くアシュメを横目にサウザーはいつ出るか、機会を伺っていた。しかし、アシュメに止められた。


「ダメよ。小鳥の坊や、敵が何処にいるか分からない以上、無闇に飛び出してはいけない。撃たれるのが趣味なら止めはしないのだけれど」


 イタズラな笑みを浮かべるアシュメを見て、冷静になったサウザーは焦る気持ちを抑える。


「安心してどちらにしても、あの子達ならすぐにくたばる事はないわ」


 アシュメは断言した。その時、反対側の森の奥から風を切る音と共に矢が飛んでくる。


 幸の足に刺さてしまう。


 痛みに堪えていた幸は新たな痛みに悲痛の叫びを上げる。


「あああ〜なんて、素敵な叫び声。しばらく、あのままにしてあげましょ♡」


「ふざけるな!」


 冗談にしては笑えない。


 アシュメにサウザーは怒りをあらわにする。


 悠長に待っていられない。


「弓使いの場所さえ分かれば……」


 ボソッと呟く。


 ヒュンッと風を切る音と共にサウザーの頬を何かが掠める。

 触れてみると僅かに痛む。手には赤い血が付いていた。


 遠くから射抜かれた様だ。


「敵は相当な弓使いの様ですね。どこから撃ってきたのか気付けない……」


「そうね。どこから見られているのか分からない……はぁ、なんて、ゾクゾクするのかしら♡」


 興奮を抑えきれないアシュメ。彼女はニヤリと邪悪な笑みを浮かべて呟く。


「本当、意味分かんない狙撃能力。もしかすると敵は伝説のエルフかもしれないわね」


「エルフ……」


 彼女のあげた名前にサウザーは思わず繰り返し呟く。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

エルフなんてこの世界にいるんですか!?

はい、大陸には様々な人種、魔物がいます。ただ、物語に出てくるのは人の方が多いですね。

仕方ないじゃないですか、人のいる話なのだから。

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