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正体不明の刺客と痺れるバーガー Lv.5(五話)

 森へ向かったサウザーは、急いで襲撃のあった場所へ向かっていた。

 巨大な雷鳥に乗る二人の周りを小さな雷鳥が飛び回る。


 現場にたどり着いた二人は目を見開く。


 左右を森で囲われた通りの端で木にぶつかって横転する馬車を発見する。

 馬車の車輪の一部は赤く血に染まって、線を描いていた。


 側にはぽっちゃりと丸い男が倒れている。

 気前のいい青い服に見えの這った宝石が身につけられていた。


「大変! 人が倒れている」


 巨大な雷鳥から降りた幸は慌てて近づこうとする。


「待て!」


 突然、サウザーが叫び出す。

 男に近づいていた幸は慌てて振り返る。


 サウザーも振り向く。


 遠くから何かが近づいてくるのが見えた。

 マゼンタピンクの髪を靡かせて、不敵に笑みを浮かべる女。


 サウザーは長い杖を構えて戦闘態勢に入る。


 構えを取るサウザーを目の前に、現れた女は馬の手綱を力一杯引っ張る。

 走っていた馬は急に引かれて、慌てて後ろ脚で立ちあがろうとした。


 太陽を背にした彼女は逆光で姿を暗ます。


 一瞬、見えなくなったサウザーは慌てて雷鳥を仕向ける。しかし、馬の背中を通り抜けるだけだった。


「サウザー後ろ!」


 幸の言葉にサウザーは振り返る。

 ちょうど、馬に乗っていた女が地面に着地する瞬間だった。


 マゼンタピンクの長い髪に怪しく光る黄緑色の瞳をした彼女は、腰に携えたレイピアを素早く抜く。

 一瞬でサウザーの首を取りに掛かる。


(なんて素早い剣捌きだ。この人、強い!)


 ここへ来て突然、仕掛けてくると言う事はこの人が襲撃者だ。

 サウザーは依頼を終わらせる為に旅の杖で攻撃を受ける。


 流れる様に攻めに転じていた。


「え、待って! 待って、待って、あは〜ん♡」


 女はサウザーの強さに驚くがもう遅い。

 あっという間に旅の杖が彼女の喉元まで突き立てられる。


「何者だ?」


 睨みを効かせて尋ねたが彼女は余裕な態度で舌舐めずりをした。


「この棒をしゃぶればいいの?」


 何を言っているのか分からないサウザーは眉間に皺を寄せる。

 女は平然とサウザーの後ろにいる幸に手を振る。


「はぁ〜い、幸ちゃん。追いかけてきちゃった♡」


 仲の良い友人に話しかけているみたいだが、幸の方は悪質な人間を見る様に軽蔑と恐怖の入り混じった目線を送っていた。


 口をつぐむ幸に女は肩をすくめて、サウザーの問いかけに甘ったるい声で答える。


「挨拶が遅れてごめんなさい。神の国バシレイア、ファドン刑務所看守長のアシュメ・ダイちゃんで〜す♡」


 両手をピースして舌を出して見せる。

 サウザーの胸の内から湧き上がるのは嫌悪感だけだった。


(この人はなんなんだ……いや、刑務所って事は幸を追って来たに違いない……)


 考えを巡らせるサウザーにアシュメは不敵な笑みを浮かべる。

 まるで彼の頭の中が見えている様だ。


「あなたの思っている通り、私はそこの脱獄囚を捕まえに来たの。でも、無駄足になっちゃうわね」


 彼女の言葉にサウザーは違和感を覚える。

 アシュメは手で覆いながら口を大きく開けて驚いてみせた。


「あら、気づいてないの? あの子、死ぬわよ」


 彼女の言葉を聞いた。次の瞬間、何処からともなく風を切る音が鳴った。

 サウザーの背後で幸の胸に矢が突き刺さる。

 一瞬、何が起きたか理解できなかった。


「幸!」


 幸が撃たれた事にサウザーは声を荒げてしまう。


(弓使いが側に隠れていたのか!)


 自分がいながら守りきれなかった事に全身が湧き上がる程の怒りを覚える。

 ビリビリとサウザーの周りに電気が帯びて行った。


 雷鳥たちが連鎖する様に鳴く。


「まぁ……」


 肌をひりつかせる様な気迫にアシュメは驚く。しかし、一瞬で制圧されてしまった。

 周囲を飛んでいた雷鳥はことごとく撃ち落とされていく。

 サウザーが気づいた時には周囲の雷鳥は全て撃ち落とされていた。


「馬鹿な……」


 驚かされる彼だったが、弓使いはさらにサウザーを追い詰める。

 空高く一本の矢が打ち出された。


 ヒューっと音を響かせる矢は、刹那、花火の様に大きな爆発を起こし粉をばら撒く。

 雷を浮き上がらせていたサウザーだったが、彼の周りから痺れる様な気迫は消えていった。


 彼は慌てて雷鳥を作り出そうとする。しかし、上手くいかない。


「!」


 体から力が無くなった事に驚く。


 ここまで追い詰められる事はそう多くない。

 サウザーは能力が使えない状態で二人組の相手をどう対処するべきか、考えを巡らせる。

 一人はまだ、姿を見せていない。


 彼は致命的なミスをしてしまった。


 大きな隙を敵の前で晒してしまう。


「何ぼさっとしているの!」


 思考に気を取られていた隙をアシュメは見逃さない。

 黄緑色の瞳が蛇の如くスピードで近づいて来た。


「しまっ……」


 急いで迎え撃とうとする。だが、杖は見事に見透かされてしまう。さらに腕を掴まれてしまった。


(この! う、抜け出せない?)


 振り払おうとしてもアシュメの手は離れない。まるで、取り外せない枷を付けられた様だ。


(このままじゃ、やられる!)


 暖かな暖炉が、走っていく少女が、タンスの中で怯える自分が、頭の中で走馬灯として蘇る。


 もうお終いだと思ったサウザーだった。しかし、アシュメは彼の腕を引っ張り、その場を走り出してしまう。


 彼女は降り注ぐ矢を掻い潜りながら森の中へ飛び込む。


 強く引っ張られた彼は体制を崩し、アシュメと共に僅かな傾斜に滑り込むのだった。

 危うく地面に落ちると思った彼だったが、柔らかなクッションに受け止められる。


 視界が塞がり、彼は慌てて起き上がろうとした。しかし、何者か、おそらく、アシュメに頭から押さえつけられてしまう。


「……!」


「あはぁ♡ そんなに吸い付かないで〜」


 自身の胸にサウザーを押し付けながらアシュメは話す。


「あそこの倒れている馬車の主人。彼、まだ生きているでしょ。あれは罠よ。仲間を助けに来た獲物を取る為のね♡ あなたもハンターなら、知っていたんじゃない?」


「……」


 尋ねるアシュメだったがサウザーからの返事がない。

 ゆっくりと彼の顔を覗き込むとものすごい腱膜でアシュメを睨みつける。


「死ぬかと思った」


「ごめんなさい♡」


 アシュメは悪びれもなく謝るのだった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

救助依頼に来たサウザーたちに最初に襲い掛かって来たのはアシュメでしたが、一瞬でサウザーに制圧されましたね。サウザーは杖を大きく振り回して相手の攻撃を巻き取るようにして戦ったりもします。

あやかし、レイピアも好きだけど、こう言う棒術キャラも好きなんです。

皆さんはどんな武器を使う子がすきですか? 良ければコメントいただけると幸いです。

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他作品も書いていますのでよろしければ、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

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