正体不明の刺客と痺れるバーガー Lv.5(一話)
清々しい青空の下で雷鳥はカモメに混ざって日差しを浴びていた。
波の音と共に青い海を渡って来た船が港へ入っていく。
旅人の女性は停泊する船を眺めていた。
十分、堪能した彼女は振り返り、ごった返す人混みの中へと入っていく。
普段から賑わう港の市場だが、今日はやけに多いらしい。
人混みに揉まれながら流されていく。
市場には普段からお店を開いている場所や新しくテント建てて営業している店があった。
彼女は何気なく立ち寄った果物屋で働いている恰幅のいいお兄さんに話しかける。
「はあ〜い、性が出ますね♡」
眩しい日差しを遮りながら、お兄さんはやって来た旅の女性を暖かく返事をしてくれた。
職場ならまずあり得ない反応に彼女の頬は緩んでしまう。
「素敵なお店ね。初めて見る物ばかりだけど、とっても美味しそう♡」
旅の女性はチラリと並べたれた果物を見ていく。
まだらなりんごに宝石の様にカットされたブドウなど、神の国バシレイアでは見たこともない物ばかりが並んでいた。
「そうでしょ! どれも体にいい物ばかりなんですよ。特にこれ、ラピスグレープなんて食べれば、肌に艶が出ていいです」
「あら、そうなの。じゃあ、一つもらおうかしら」
買うことを決めた旅の女性だが、不意に背中を押されてしまう。
店員のお兄さんの方にのめり込んでしまった。
彼女の豊かな果実がとても近くに触れそうになる。
恰幅のあるお兄さんは突然の事に驚きながら、耳を赤くさせてあわあわとしていた。
「ごめんなさい」
彼女はマゼンタピンクの髪を耳に掛けながら謝る。
チラリと覗く黄緑色の瞳は悪魔の様で彼の心を惹きつけた。
「それにしても、ここ、食の国リトラルは本当に人が多いのね。バシレイアの都市でもここまでは多くないわ」
チラリと後ろを振り返りながら彼女はぼやく。
流れる人だかりは途切れることを知らず、延々と続いている様にも見えた。
店主のお兄さんは目線を泳がせながら話す。
「はは! そうでしょ、そうでしょ、何せ、食の国と言われる程、食べ物が豊富で物流も盛んなんです。それに美しい海や建物だってありますからね。お姐さんみたいに旅に来る人も多いんですよ。それに」
彼は旅の女性に気を引かせようと意味ありげに言葉を切る。
彼女はチラリと向き直って不思議そうに目を細めて首を傾げ出来た。
「もうすぐ、サグラって祭りが始まるんです」
「お祭り?」
「えぇ、日々の狩で取れた生き物や豊穣の喜びと感謝をする祭りです。三日三晩続く国一番、いや世界一の祭りでしょうね」
「へぇ〜それはとっても楽しそうね♡」
旅の女性はチラリと流れる人だかりを見つめ直す。
楽しそうに祭りの準備を進める人々やその様子を見に来た観光客など、いろんな人たちが行き交う。
その中に楽しそうに串焼きを食べながら歩く若い男女の姿を見つける。
旅の女性は少女の方に見覚えがあった。
真っ直ぐの黒髪に特徴的な跳ねた前髪。
旅の女性はニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。
「見つけた……♡」
聞こえない程、小さな呟きをした彼女は向きを戻し、親切なお兄さんに別れを告げる。
「ありがとうございます。それじゃあ、そのラピスグレープを頂くわ♡」
宝石の様に輝くブドウを買った彼女は、可憐な少女の様に手を振って離れていく。
「ふあ、めっちゃ美人だった……」
旅の女性がさった後、恰幅のいい彼は胸に手を当てて鳴り響く心臓を感じていた。
「ああ言う人と一緒に祭りの夜を過ごせたらな……」
ボソリと呟く。だが、先程の女性が人の皮を被った悪魔の様な存在だと、到底、知る由もなかった。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
リトラルでは毎年、サグラと言う祭りが行われているそうです。
毎日の様に賑わう市場もいつも以上で歩くのすら困難を極めます。そんな中、訪れた旅人は……なかなかの癖者の予感ですね。
リトラルの鳥使い第二段「正体不明の刺客と痺れるバーガー Lv.5」
ぜひ、最後までお楽しみくださいませ。
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