決着
額が熱い。
力が満ちる。
目の前の醜悪な肉のオブジェがぴたりと攻撃の手を止めた。
細かく震えている。
恐怖だなんだと言ってたくせして、まるで子兎みたいにぷるぷるしてんじゃねぇよ。
震え声でフォーボスは言う。
「な、な、なんだその力はッ!? いや待て! それは……魔印なのか!?」
「急になにをほざきやがる」
「そこの淫魔の反転印ではないかッ!?」
「はぁ? なんだって?」
「反転印だと言ったんだよ!」
「うるせぇ知るか。つーか覚悟しやがれよ」
リンを振るった。
たった一太刀浴びせただけで、肉塊から生えたすべての腕や足が吹き飛んでいく。
虚構が剥がされフォーボスの体が元の牛の姿に戻った。
「ひいっ! やめろッ! 頼む! 命だけは!」
「そうやって降参した連中を殺したんだよなぁ?」
「俺様は役に立つぞ! 魔族に悪夢を植え付けて殺し合いをさせたりもできるし! そうだナルシスをおびき出してやろう! あいつに近づけるか? 人間どもの中じゃ地位も名誉もあるんだろぉ? もし俺様を殺してもやつの権力の前に屈するだけだぞ? なあ手を組もうじゃ……な……い……いいッ!?」
おしゃべりしてる間に全身を斬り刻む。
銀剣のあまりの鋭さにフォーボスは自分が斬られていることにも気づいてなかったようだ。
こっちは時間がない。こいつにかまけている間にもクロエが手遅れになりかねん。
「黙らねぇなら黙らせてやるよ」
「いぎゃあああああああああああああ!」
絶叫するフォーボス。口を開くとデロンとした舌の上に魔印が光っていた。
首を落とし舌を切り捨てる。
じっと睨むとフォーボスが口から泡を吹いた。
「お、おひゃ、おひゃすけぇ!」
魔印を失って俺の圧に屈したようだ。
「恐怖で支配するんだろ? ならせめて、最後くらいはお前ん中に生まれた恐怖を御してみせろや」
「むりれひゅぅ! なんれもしまひゅからぁ!」
「こっちはテメェに頼むことなんて何一つねぇよ」
四本の角にリンの刃を立てる。
火花を散らして角を断った。
「んぎょああああああああああああああああああああああ!」
フォーボスは恐怖に歪んだ顔のまま、白化して砕け散った。
何が恐怖で世界を支配するだ。
今度こそ完全に魔族を消し去ると、俺はイヴに告げた。
「クロエを助けてくれ」
横たわった黒衣の少女の元に歩み寄る。
フォーボスが死んで白化した腕も消えつつあった。
イヴが手のひらから癒やしの粘液を全力注入して穴を塞ぐ。
額に汗しながらピンク髪のサキュバスは俺に告げた。
「ダーリンの命も聖印の力も一気に使うわ。その間、ダーリンは意識を保てないと思うけど……あたしを信じてくれる?」
「当たり前だろ。さあ、どうすりゃいい?」
「あたしの手の甲に上から手をかぶせて、目を閉じてクロエの復活するイメージをして」
「わかった。やってみる」
俺はイヴの手の上に自分の手のひらを重ねた。
目を閉じ祈る。
どうか甦ってくれと。
途端に意識が遠のいていった。
短いです
ごめんね




