う、うまれりゅ!
粘膜がふれあい淫魔の舌が俺の舌に絡まる。
「んっ……嬉ひぃ……らーりん……しゅき……しゅきいい♥」
サキュバスの腹部の魔印からピンクの光があふれた。
玉虫色の瞳に涙が浮かぶ。
俺の背筋がビクンとなる。イヴが欲しい。このまま、もっと――
「ダーリン……できちゃった」
上目遣いで淫魔は言う。彼女は自身のお腹のあたりを愛おしそうに撫でた。
「で、できたって……なにが?」
「チューしただけで(想像)妊娠しちゃったかも」
「ええと……おめでた? ってことか」
「うん。ダーリンとあたしの愛の結晶。今なら生まれそうなの……っていうか産んじゃう! 産ませてよ!」
俺の腕から離れるとイヴの足下に彼女の魔印と同じ魔法陣が描かれた。
「出でよ! ラブラブ召喚獣! ドラマラゴン!」
少女が勇ましく右腕を天に掲げると、呼応して魔法陣から巨大な影が飛び出した。
小山ほどあるドラゴン(?)だった。
全身ピンクで鱗はなく、なんというか……絶妙にチンコである。
巨大なチンコ風ドラゴンだ。
召喚されるやいなや、ドラマラゴン(?)は尻尾をブンと振るってフォーボスを吹き飛ばした。
「ウグルオオオオオオオオオ!」
墓場の丘を巨体が転がる。
ドラゴンは勝ちどきのように咆哮。そのまま白いブレスをあたりにまき散らした。
世界が白く染め上げられる。
やや粘性のあるブレス(?)が墓にぶっかけられると、緑が芽吹き色とりどりの花々が咲き乱れた。
殺風景な墓標の丘が、匠の技で草原に早変わり。
その白いやつで生命があふれるのは間違ってないけど、間違ってんだろ! 色々と!
クロエがブレスを避けつつ吠える。
「ハグからベロチューした結果がこれか!? 貴様ら頭がおかしいぞ!」
イヴがお腹を抱えて笑った。
「キサマラとマラがかかってるのね! あっひゃっひゃっひゃ! 超すき!」
かかってないだろ。白いのがかかりそうではあるけれど。
大笑いするイヴに訊く。
「なあ、あのドラゴンってもしかして……」
「ダーリンのたくましい男のシンボルをモチーフにサキュバスのあたしが考えた最強の性姦獣……じゃなくて召喚獣よ!」
つまり俺のチンコがフォーボスの作り出した世界の中で暴れて蹂躙してるって状況だ。
わけがわかんねぇぜ!
すっかりキメラになった四本角の魔族は、重そうな体をやっと起こして周囲を見回す。
殺風景な墓場の丘は、今や命の輝きにあふれた春の園と化していた。
中心で白い生命エネルギーブレスを噴水のように吐き出し続けるドラゴンによって、泡界は書き換えられ続ける。
ビキン! と、空間に亀裂が入った。
「お、俺様の世界壊れるうううう!」
頭を抱え悶絶するとキメラ牛男はバタリと倒れた。
巨体が隅々まで白くなり動かなくなる。
死と恐怖の世界を生命と愛が蹂躙し、フォーボスの泡界は崩壊したのだ。
ふと思う。
強さにも色々あるんだな……と。
世界を上書きしたドラマラゴンだが、白いブレスの垂れ流しが止まらない。
イヴはうっとり顔だ。このまま放置はできんだろ。
「おい止めろ! 止めてくださいお願いします!」
ぶっきらぼうの代名詞たる俺ともあろうものが、口調が丁寧になるほどの危機的状況である。
「あははははうふふふふ♪ ダーリンのご立派様が世界を楽園に作り替えるの♥」
話聞けよ。玉虫色の瞳にハートマーク浮かんでるぞ。
クロエに向き直るが、彼女も飛び散る白濁の何かを避けるので手一杯だった。
身から出たさびだ。製造の片棒を担いだ俺がドラマラゴンどうにかせねば……。
と、思ったんだが、なんだか攻撃しづらい。情が移ったとかじゃなくて、なんというかアレを殴るのにも勇気がいるし、不思議と自分の股間を強打しそうに思えてならないのだ。
アレは俺のナニじゃない。
わかっちゃいるけど殴れない。
じわじわと花畑が広がる。森を呑み込みこのままじゃ街道も……下手すると町まで広まりかねない。
「ねえダーリン。このままあたしと世界を蹂躙支配征服しちゃいましょ?」
「それはダメだぞ。いいかイヴ。エロいことと同じだ。他の人の同意もなく誰かに押しつけるようなことをしちゃいけない。それが綺麗な花園だったとしてもだ。そういう悪い魔族はお仕置きだぞ」
「エッチなお仕置き?」
「んなわけないだろ。俺はお前にだけは悪い魔族になってほしくないんだ」
サキュバスの瞳からハートマークが消えた。正気に戻った(?)みたいだ。
寂しげな顔をする。
初めて会った時、俺の名前を聞いて一瞬見せた憂いの表情だった。
「そっか。そうだよね。ダーリンはあの人の……」
「あの人って誰だよ?」
「な、なんでもないわ! けど残念ね。ドラマラゴンちゃんなんだけど、あたしがコントロールしてるんじゃないの。ダーリンの平和を愛する美しい心が楽園を常世に顕現させようとしてるから、あたしじゃ止められないわけ」
「俺の意思だってのかよ!?」
「むしろダーリンがメインみたいな? あたしは欲望を受け入れただけだもの。ドラマラゴンちゃんはダーリンの清らかさの象徴ね」
確かに綺麗な景色だけど、生み出してるのがチンコドラゴンだからな。
ダメだろ。常識的に考えて。
俺は拳を握りしめた。
きっとあのドラゴンの急所は……全身だ。どこ殴っても効くという確信があった。
「ちくしょおおおおおおお! どうにかなれええええええ!」
地を蹴り白濁ブレスを避けながら、迫る。
ドラゴンの逆鱗というか金的を狙い、正拳突きを――
打てない。寸止めだ。
だってよぉ。こいつを殴ったら俺の股間もなんか……痛そうじゃあないか。
手を止めたその刹那――
銀剣が宙を舞い煌めき閃くと、ドラゴンの首の周囲をぐるりと巡った。
スパッと竜の頭が落ちる。
俺は思わず股間を押さえた。
痛みはない。
けど、目の前で大事なところを切断されたピンクのドラゴンに、ありもしない幻肢痛を感じてしまったのだ。
切り口から白い液体があふれて周囲を真っ白に染め上げ、雨を降らせて霧のように広がった。
むせる。なんかやばいものを肺に取り込んじまった気がしてならない。
イヴが「亀頭が……じゃない竜の頭がああああああ!」と声をあげた。
いらんこと言い直すんじゃねぇよ。
片手で股間をかばいつつ、俺は天に舞うリンにサムズアップを送る。
よくやってくれた。お前がいなきゃ世界が終わってたかもしれん。
白い霧が消え美しい花園は吹き飛び、周囲は元の森に戻った。
な に こ れ




