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敵と戦ってる時にするXXXって最高よね興奮するわ(淫魔曰く)

 イヴの護衛からクロエの加勢に方針転換。俺は銀剣を手にフォーボスを挟撃した。


 瞬間移動ができなくなったフォーボスを斬りつける。


 鉄みたいな硬い肌だ。だが――


「リンッ! 俺の力を食らってもっと輝けッ!」


 呼応してオーブが光を放ちまばゆい刀身が牛鬼の首を取りにいく。


「ふざけるなあああ! 下等生物どもがああああ!」


 フォーボスに悲鳴を上げさせた。


 俺の刃が届く寸前で、牛野郎は腕で防ごうと身構える。その上腕ごとぶった切った。


 腕一本。こんなもんじゃ済まさん。


 よろける牛鬼だが――


「今まで食らった連中の力をまさかお前らごときに使うとはなぁ」


 泡界をイヴが中和していても、相手は超級魔族ってことらしい。


 切り飛ばした腕が再生した。


 獣毛に包まれた腕だ。大きさこそフォーボスサイズになってるが、見覚えのある毛並みは――


「さっきのケモショタの腕かよ……悪趣味だなオッサン」


「だ、誰がオッサンだと!? 俺様はまだ生まれたばかりのぴっちぴちだぞ」


 切っ先を向けて告げる。


「うるせぇよ図体デカくてそんなしゃべり方してりゃあオッサンでいいだろ」


 俺の隣にクロエが並び立った。


「返答はいらぬぞクソ野郎。すぐにその口、きけなくしてやる。その前に……クロエちゃんかわいいって言え」


「はぁ!? 突然なんだ? イカレたか駄犬が」


 フォーボスはきょとん顔だ。まあ、そうなるわな。


 俺は視線をクロエに送る。彼女は小さく頷いた。


 事前の打ち合わせはないが、彼女とはついさっき殴り合ったから呼吸も挙動もなんとなく体が理解してる。


 あいつの動きたいようにさせて、振り回す鎖の範囲に入らないようにしながらフォーボスの後背に回り込む。


 刹那――


 斬りつける。リンの光刃が黒い背中に斜めの傷を刻み込んだ。


 血が噴き出すも、すぐに閉じていく。


 いや……まてよ。なんか違うぞ。閉じたっつーか、別の生き物の皮で塞いだみたいだ。


 ヌメヌメとした海洋系の肌が傷を上書きした。そういやこの前、こんな肌質の魔族をわからせた気がする。


 命までは取らなかったけど、そのあとフォーボスにやられちまったんだな。


 つまり――


 これまで餌食にした連中の体でつぎはぎできるってわけだ。


 牛鬼の表情が切迫した。


「ぐぬ! 二対一とは卑怯だぞ!」


 イヴが吠え返す。


「三対一よ! 3Pよ! 三人に勝てると思ってるわけ?」


 ツッコミどころだが、余計な一言で淫魔の妄想を止めるわけにはいかない。我慢だぞ俺。


 戦いは加速した。


 フォーボスの正面をクロエの炎鎖が常に撹乱し、翻弄し、隙あらば鞭のようにしなって打つ。


 回り込む俺に対してはほぼ無防備な背中をさらし続けた。


 銀剣を構え直して訊く。


「どうした牛野郎? 手も足もでないってか?」


 その間も回り込み、徹底的に視覚をついた。正面から堂々と渡り合うのはクロエに任せて、俺は「削り」に専念だ。 


「クソどもが! うろちょろと小バエみたいにまとわりつきやがる。うっとうしいぞ小僧! 王国騎士流の使い手が死角からとか恥ずかしくないのか?」


 剣の構えや振り方で流派なんてわかるもんなのか? 知らんけど。


 にしてもよ。ドスの利いた声が震えてんぜ。笑い返す。


「ばーか。うっせーよ。テメェみたいなクソ野郎に正々堂々とか片腹大爆笑だろうが。俺は騎士でも剣士でもねぇんだからな」


 握り方も足裁きもじじいに仕込まれたけど、半分くらいはリンに導かれてやってる感じだ。


 柄が手に吸い付いて腕の延長線上にあるみたいに、剣は自由自在だった。


 羽ペンみたいに重さをほとんど感じない。なのに斬撃の威力は岩真っ二つレベルだもんな。


 人馬一体。そんな言葉を耳にするけど、今の俺とリンはさしずめ人剣一体だ。


 地を蹴り剣を振り上げフォーボスの背骨を唐竹割りに両断……するはずが。


「ウグルオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 牛鬼は怒声とともに腕を「増やし」た。


 広背筋のあたりからにょっきり二本。そいつでリンの刀身を白羽取りして防ぐ。


 フォーボスの後頭部に、ぱっちりとした目まで開く。


 頭部の形状そのものがいびつに歪み、牛の頭と識別できないほどに崩れた。


 尻尾も牛から蛇の頭に変わる。


 原型を止めてんのは四本の角くらいなもんだ。


 いよいよもって化け物じみてきた。


 クロエの炎鎖が怪物フォーボスの体を焦がした。


 俺もリンと心を合わせて敵の反撃を封じ、いなし、斬って斬って斬りまくる。


 一太刀浴びせる度にフォーボスの体に腕やらなんやら増えるのだ。


 切り飛ばした四肢は白化して地面に落ちると、砂糖菓子みたいにもろく砕けた。


「これじゃいくら斬りつけてもキリがねぇ」


 イヴが俺を指さしてお腹を抱えて笑った。


「あっひゃっひゃっひゃっひゃ! んもう! こっちは真面目にエッチな妄想してるのに、ダーリンってば激うまギャグやめて!」


「いきなりどうした!?」


「だって斬りつけるとキリがないがかかってるんだもの」


 笑いの沸点が低すぎだろうが。


 淫魔の妄想の泡が次々はじけ飛び、エロで埋め尽くされていた空間が歪む。


 先ほどまでクロエの故郷だった場所が、一面墓標の丘に変わった。辛気くさいフォーボスの泡界が再展開されたってとこか。


 打ち消さなきゃ不利になる。


「おいイヴ! 笑ってないでもっとエロいこと考えろ!」


「エロだけに!? 考エロって……こと!? あひゃひゃひゃ! それツボるんですけどー!」


「お前普段はダジャレになんぞ反応せんだろ?」


「妄想全開モードだと感性が敏感になっちゃうの。ダーリンがあたしのこと、もっとエッチな気持ちにしてくれないと。エッチパワーが薄いわよ! なにやってんの! 役目でしょ?」


 悠長にやりとりしてる場合じゃあない。


 クロエがフォーボスとタイマン張ってるが、手足が増えた化け物の攻撃を防ぐので手一杯になってやがる。


「くっ……パワーだけでなく速度まで上がるとは……できるというなら早くどうにかしろイヴイヴにダーよ!」


 俺の手に握られたリンは大人しい。


 視線を地面に落とすと切っ先が震えて文字を書いた。


『許す』


 クロエを救いリンを振るってフォーボスを倒すには、イヴの「泡界を上書きする力」が不可欠。と、リンですら思うんだな。


 けどよ――


「ど、どうすりゃイヴが……き、気持ち良くなれるんだ?」


 淫魔はピンク髪を揺らす。尻尾がきゅんっと天をいた。


「ダーリンにならなにされても気持ち良くなっちゃうかも! 期待感でビンビンなんですけど!」


 そっちがビンビンになるんかい。


 こうなりゃ覚悟を決めるしかねぇ。


「わかった。どうなっても、し、知らんからな!」


 俺はイヴを抱き寄せぎゅっと抱きしめる。


「あん♥ ダーリン情熱的すぎる。強引にされるとあたし、弱いかも。ねえ、ぎゅーで終わり?」


 桜色の唇がぷるんと揺れた。


「こんな形で……いいのか?」


「もっと普通に恋に落ちてムード満点のところでしてほしかったけど……いいよダーリンなら。あたしを助けてくれて、リンちゃんも解き放ってくれた。これからももっとずっと、みんなでおもしろおかしく冒険したいもんね」


「ああ、そうだな」


「ダーリンを寂しくさせない」


「俺も……お前を失いたくない」


 見つめ合う。


 吐息が近づく。


 二人の距離は限りなくゼロだった。


 俺は――


 イヴにそっと唇を重ねた――

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