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全力であらがえ!

 クロエの瞳にハートが宿って俺を見る。


「ああ、ダーよ……そのたくましいマズル。黒く濡れた鼻。たくましい胸板に愛らしい肉球。ふさふさの銀毛に立派な尻尾も素敵だぞ。それに匂いがたまらんのだ。私との間に強い子を作ろう。もう二度と滅ぼされぬように。貴様には里長になってもらうぞ。そうすれば居場所もできるではないか?」


 こいつはフォーボスって魔族に家族も故郷も奪われちまった。


 取り戻したいんだ。だからナルシスみたいなクソ上司にも逆らわず、我慢し続けてきた。


 俺なんかで良けりゃあ抱きしめてやりたい。


 けど、違うだろ。クロエの弱みにつけ込んでみたいなのは、まっぴらごめんだ。


 涙を浮かべたクロエに俺は――


「ブース。こっちから願い下げだっつーの」


 実際のところ見た目はかわいいし胸もデカくてクールビューティーだが、見た目のプラスを帳消しにする性格のアレさである。足を引っ張っているのはイヴと同じだ。


「こ、こ、殺すッ! ボコボコにして子種だけ奪ってやるぞダーよ!」


 シンプルに怖ッ。


 鎖鞭が左右から俺に襲いかかる。寸前で避ける。空中で鎖がぶつかり合った瞬間、火花が散った。


 クロエが吠える。


「蒼炎ッ!」


 火花をきっかけに青い炎が鎖を包み込む。


 やべーな本気モードってとこか。


 俺はイヴとリンに命じた。


「二人ともショタ犬魔族を捕まえてスパッとやっちまってくれ」


「ダーリンの童貞を守護まもらねば……いくをよリンちゃん!」


 銀剣の刀身が光を帯びた。


 柴犬はブルリと震えて耳を伏せ尻尾を膨らませる。


「ひ、酷いよぱぱ! ぼくを虚勢するなんてあんまりだよ!」


「うるせぇよ! 切るのは角だっつーの!」


「絶対やだあああああ! ぱぱのばかー! 牝堕ちしろー!」


 闇堕ちみたいに言うなや。


 犬魔族は一目散に逃げ出した。


 追いかけたいところだが、目の前に蒼炎をまとったクロエが立ち塞がる。


「ダーよ私と熱々の関係を結ぶのだ!」


「熱々どころか焼く気満々じゃねぇか」


「今ならブスって言ったの取り消してかわいいって言ったら許す」


「お断りだっつーの」


「無理矢理が好きか。ならばその肉体に思い知らせてくれよう。蒼炎鎖弾ッ!」


 クロエが鎖を振ると青い炎が球になって俺に向かってきた。


 見れば森に引火してやがる。


 歩く森林火災かよ。止めなきゃボヤどころの騒ぎじゃねぇ。


 俺は拳を握りしめた。大地を踏みしめ蹴ると風景が吹っ飛ぶように流れる。


 想定外の速さに俺自身、つんのめりそうになりながらクロエの懐に飛び込み――


 ガチ恋距離に顔が接近した。


 このまま頭突きを食らわせたが、クロエは俺の顔面を両手でぐっと押さえて唇を重ねようとしてきた。


「おいやめろ初めてなんだぞ!」


「良いでは無いか減るものでもあるまいし」


 両手でクロエの腕を払い膝を軽く蹴り上げる。鳩尾への一撃だ。相手が並みの女子供ならいざしらず、歴戦の魔族狩り相手に手は抜けない。


「かはッ!?」


 声にならない悲鳴を上げてクロエはうつ伏せになった。


「いい加減目を覚ませクロエ」


 四つん這いの姿勢から尻をくいっとあげて女はくねらせる。黒い尻尾がなまめかしく揺れた。


 俺は生唾を呑み込む。


 いかん。女性の好みがケモ化してきてやがる。


 クロエは嬉しそうに口元を緩ませた。


「今の蹴りは良かったぞ。貴様は普段、手を抜くところがあるからな。そのまま獣になれ! お互いに爪と牙で傷つけ合う激しい交尾が強い子孫を産むのだから」


 人間だと耐えられなさそうなやーつー。


「俺にだって相手を選ぶ権利はあるだろうがッ!」


「ならば拒否の意思を力で示せ!」


 闘争本能の赴くままにクロエと戦っていったら、やばいことになる。


 持ってくれよ俺の理性。


 イヴたちがケモショタ魔族の角を落とすまで。

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