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変人だけどエロい奴じゃなかったのに……どうして……どうして……

 反応早すぎだろ。ふだんポンなのに、こんなに動けたのかよサキュバス。


 きゃん! と鳴いて柴犬魔族が茂みにぶっ飛ばされる。


 イヴは立ち上がるとビシッと柴犬の顔を指さした。


「ショタケモッ子がダーリンの貞操を奪って毎晩きゃん言わせようなんて、お天道様が許しても、このあたしが許さないんだからね! ギルティ! ギルティ! ギルティ!」


 あっ……俺がされる側なんだイヴの解釈だと。


 柴犬魔族がイヴに向かってあっかんべーする。と、ぱっちりとした黒目を丸くして俺に向き直った。


「おじさんも最初は痛いかもしれないけど、すぐに気持ちよくなるからだいじょうぶだよ! ゆっくりほぐして少しずつ慣らしてイこうね?」


 いやお前もかーい。つーか掘削作業すんのはそっちかーい。


 銀剣が俺の周囲をぐるっと回ってオーブを光らせる。


 イヴが翻訳した。


「マスターを鞘にしたい……ってリンちゃんだめよダーリンのお尻には収まらないから! お尻はおしゃれな小物入れじゃないのよ!?」


 本気じゃないよな? ないよ……な?


 ひとまず冷静な第三者に助けを求めよう。


「なあクロエ。こいつらをどうにかせんと……おい? どうしたんだクロエ?」


 黒衣の審判者は全身をぶるぶるっとさせた。青い瞳が俺を見る。


 今までにない熱っぽい眼差しだ。


 震える唇がそっと呟く。


「な、なあダーよ。その……熱くはないか? 体の中がカアアッとするような感覚だ」


「いきなり毛皮着せられて暑いっちゃ暑いが……」


「せっかくだから服を脱いだらどうだ? 素晴らしく美しい銀毛だ。体温調整機能も高かろう。そうだ私も脱がせるのを手伝ってやろうではないか」


 クロエの五指がいやらしく蠢く。


「おいどうした落ち着けって」


「お、お、落ち着いてなどいられるか!! 脱げ貴様! わ、私も脱ぐからお互い様だ!」


「お前も脱ぐな。お互い様で済ませようとするんじゃあない」


「ええい! も、もう我慢できぬ!」


 なにを血迷ったのか、クロエはスカートの下に手を突っ込むとパンツを脱いで投げ捨てた。彼女の背後に大きな黒い獣の尻尾が揺れている。


 きっと彼女の背後側では尻尾でもちあがったスカートにより、お尻がまるっと出ていることだろう。


 ショートボブに隠れていた耳がにょっきり隆起する。ケモ耳だった。


 口元で八重歯がこぼれる。


 クロエの獣人の血が目覚めた……ってこと?


「よいかダーにイヴイヴにリンリンよ。我が一族にはこのような言い伝えがある。イケメン喰わねば恥……とな。私に恥じをかかせるな牡の本懐を遂げよダーの者!」


「わけがわかんねぇぞ!」


「つまりそのだな……す、好きということだ! 一目惚れだ! 悪いか!」


 黒の審判者の顔が真っ赤になった。


 イヴが両手で顔を包むようにして玉虫色の瞳をらんらんとさせる。


「ちょ、いきなり告白ですって!? クロエあなた本当に……」


「この姿にだッ! 普段のダーには一切の魅力を感じぬからな! だが……もう……たまらんのだ」


「ダーリンが獣人になってから、二人してやばいくらいフェロモン出ちゃってるかも」


 俺の鼻が勝手にひくついた。


 なんだかわからんがクロエから不思議な匂いを感じる。


 途端に体が熱くなる。あっ……これはやばいかもしれん。


 イヴが虚空を指で殴り書くと悲鳴をあげた。


「ってことはAの式にBを代入してCが導き出されるってことは……つまりええと……クロエがダーリンに発情してるううううう! だ、ダメよ落ち着いてクロエ! そのダーリンは魔族の呪いで一時的にケモってるだけなのよ!?」


「す、すまぬイヴイヴ……故郷無き今、一族復興のためにはたくましい牡の子種が必要なのだ」


 説明するなりクロエは野獣のような眼光を俺に向けた。


「いいかダーよ。これは恋愛的な感情でもなければ、淫らな劣情でもない。人助けと思ってくれ」


「思ってくれじゃねぇよ上着脱ぐなって」


「着衣のままが良いというのかこの変態め!?」


 背後で尻丸出しの女に言われたくない言葉ランキング三位以内に入るぞその発言は。


 クロエは涙交じりに続けた。


「なあ、言ったではないか。人助けがしたいと。クロエちゃんかわいい人助けがしたいですと。膝を地に着け涙ながらに訴えたではないか!?」


「記憶の改ざんすんじゃねぇよ。これ以上やったらお前……正気に戻った時に黒歴史に殺されるぞ?」


「うううう覚悟の上だ! 来ないというならこちらから行くぞ! 身動きをとれなくしてだな……あーしてこうして……言わせるな恥ずかしい」


「じゃあ言うなよやんなよ」


「本能には逆らえぬのだ!」


 クロエの両手がだらりと下がり、鎖が蛇のように鎌首を上げた。


 俺はイヴに視線を向ける。


「得意のドロップキックでどうにかしてくれ」


「物理的に無理よ! クロエ強いし! けど、このままじゃダーリンの童貞が……ダーリンの童貞を他の女の子に奪われるなんて淫魔の風上に置けないことよね」


 サキュバスの尻尾がピンと立つ。


「けど誤解しないで! ダーリンが童貞じゃなくなった暁には、ハーレム化してもいいっていうか、むしろ促進しちゃうっていうか。最初の一人目があたしなら、そのあとはもう三人でも四人でもまとめてでも……はぁはぁ……ダーリンのどんな要求も喜んで受け入れてみせるわ淫魔の誇りにかけて!」


 めっちゃ早口。


 先ほど蹴飛ばされたケモショタ魔族が、いつのまにやら立ち上がってイヴの隣でうんうんと頷いていた。


「そんなぱぱに種付けできるなんてぼくも楽しみ」


 イヴの膝蹴りが柴犬魔族の顔面にめり込んだ。


「入ってくるんじゃねええええええええですわよ! ぶち殺しますわよ!」


 口調無茶苦茶になってるんだが。


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