ケモショタ絶対に許さないウーマン
森の中、獣の遠吠えが響き渡った。
声のした方を見ると――
人間の子供くらいの犬系獣人が俺に熱い眼差しを向けている。
イヴが目をハートにした。
「ねぇねぇ見てよダーリン柴犬よ!」
「柴犬ってのは種族名か?」
「ま、そんなとこね。つぶらな瞳がちょーキュートじゃない?」
犬獣人は口を開いてハッハと息を吐く。
「おっ……なんだお前? もしかしてゴブリンに迷惑行為受けてたんか? そうかそうかそりゃあ大変だったなぁ。もうゴブリンどもは悪さをしなくなったから安心してくれ」
茶色い犬獣人は俺の元に駆け寄ってくる。
そうかそうか怖かったんだな。ここは優しく抱き留めてやろう。
と、かがんだ瞬間――
クロエの鎖が柴犬獣人に放たれた。
その鎖を掴んで止める。
「おいクロエ相手は子供だぞ! いきなり暴力はないだろ!?」
腕力(物理)を振るうなら一言断ってから。って、俺も大概だが。
「ダーの者の目は節穴か!?」
よく見ればちびっ子獣人の額の丸い眉みたいな部分が、小さな角だった。
肉球の手のひらに魔印が浮かんでいる。
がーんだな。はめられた気分だ。
柴犬魔族が口を開き、俺の首筋にかみつくと抱きつき密着してくる。
もふもふふさふさガジガジと。
「ぐああああああああああああああ!」
普通に痛ぇぞ! クソッ! 見た目に騙された。このまま首の骨をかみ砕かれたら死……ん? なんだこいつ。歯形をつけただけで傷口を舐め始めたぞ?
甘えたような高い声で魔族は言う。
「ぼくのぱぱになって」
「はあ?」
「おじさんぼくのぱぱになってよ」
「誰がおじさんだコラァ!」
柴犬魔族の首根っこを掴んで放り投げたところで気づく。
俺の腕は銀色の獣毛に覆われていた。なんか鼻と口がもりっと膨らんだように前に突き出て、髪も長くなりケツの方から服を突き破って尻尾が生える。
イヴが興奮気味しだした。実にやばい兆候である。
「だ、ダーリンが狼男になっちゃったー!? これはワンワンプレイのチャンス到来ね! あ、えっとリンちゃんごめんなさい嘘です冗談です刃は立てないで前髪は前髪だけは許してぇ! っていうかどうしてショタ化してないのよ責任者出てきなさいよ! あなたもショタなら噛んだダーリンをショタにしなくちゃ役目でしょ?」
「そしたらぱぱじゃないじゃん」
「口答え禁止! あっ……ごめんねリンちゃん落ち着いて。前髪何センチでそろえるか測らないでえええええええええ!」
銀剣が淫魔の暴走に待ったをかけるのはいいんだが――
カブトムシの次は獣人かよ! 魔族による支配ってやつだが、なんか逆に興奮してきたな。強そうだし。
俺はどうやら眷属化されやすい体質らしい。
胸筋が膨らみ肉厚になると服が今にもはち切れそうだ。
胸の奥から欲求がわき上がり、天に向かって口を開く。
「ううううわおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」
遠吠えって気持ちいい。
遠吠え止めますか。人間止めますか。
って、このままじゃ人間止めちまうところじゃねぇか。
俺の股の下にちょこんとお座りして、柴犬も「わおんわおおおおん!」と遠吠えする。
くっ……こいつがかわいく見えてきた。
尻尾を揺らして柴犬が言う。
「ねえねえおじさんぼくとえっちなことして子供たくさん作ってよ」
瞬間――
淫魔が少年めがけて地を這うような高さのドロップキックをぶちかました。




