魔族のみんなおっまたせ~! ぼこす☆
人里離れた森の中。藁の家と木の家とレンガの家が並んで建っていた。
わらの家のドアをイヴがケリ開ける。
「おらおらぁ! 魔族狩りの時間だぞぉ!」
イキリながら不法侵入すると、藁のベッドに転がった白豚魔族が眠そうな目をこすった。
「う~ん、もう食べられないよぉ」
「町の食料庫を襲った不届き者に天罰を下しに来てあげたわ。先生……お願いしますッ!」
イヴは入り口からスッと下がって俺に道を譲ると、腰から頭を下げた。
先生つーか、用心棒つーか、裏社会の大物扱いすんじゃねぇよ。
「先生じゃねぇつーの! で、豚野郎……調べはついてるんだ。食った分、わび入れて働いて返すつもりはあるか?」
白豚魔族が鼻息を荒くした。
「ぶひー! 雑魚人間が偉そうにボクチンの安眠を邪魔しやがって! そのエロいねーちゃんをおいてったら見逃してやるぶひー!」
イヴがあっかべーで返す。
「あんたみたいな豚に興味ありませーんべろべろば~!」
豚の背中がごりっと筋肉の鎧をまとって盛り上がった。
「ならまとめて死ぬぶひー!」
岩のように巨大な豚魔族の拳が目の前に迫る。実際に肉体強化でもしてんだろうか。
拳の圧で藁の家が吹き飛んだ。自分で壊しちまうのかよ。
威力十分だが、まっすぐ軌道の読みやすいパンチだ。軽く手で払って勢いを殺した。姿勢を崩して前のめりに倒れた。勢いが付きすぎて床に埋まる勢いだ。
動けなくなった豚の顔面を蹴る。蹴る。蹴る。
「うぎょ! ぎょは! やめっ……ちょ……ま!」
俺の背後からひらりと銀剣が宙を舞う。リンはなにを思ったのか、剣の腹で豚魔族の尻をスパンキングし始めた。
「あっ! あはん! らめぇ! も、もっとぉ!」
俺が顔を蹴ればリンが一発ぶちかます。
視線を淫魔に向けた。
「お前も働けよ」
「あたしってほら、軍師ポジ? みたいな」
「じゃあなんか献策してくれ。急募、この豚を黙らせる方法」
「豚は鳴くのが仕事なんだからいいじゃない?」
足下で豚魔族が鳴きながら……もとい泣きながら「勘弁してぶひー! 痛いのと痛気持ちいいのは別腹ぶひー」とのたまった。
イヴの尻尾がピンと立つ。
「板気持ちいいって……つまりそれってリンちゃんのツルペタを押しつけられて気持ちいいってこと? ま、負けてられないわ!」
「よくわからん勘違いでやる気だすな。あとリンは待て。イヴに切っ先向けるなオーブ真っ赤にすんなって」
銀剣怒りの連続スパンキングで豚のケツが赤く晴れ上がった。
一方、淫魔は手のひらからヌルヌルを出して豚の脇腹をくすぐり追撃する。
「おう! おふう! ん! い、いぐうう! ぎもぢよずぎでじぬううううう!」
なんてあられも無い声を出すんだこの豚野郎は。
サキュバス少女はどや顔だ。
「ダーリン! 今よ! すっかり弛緩したこの瞬間にトドメね!」
真顔でなに言ってんの? 繰り返す、真顔でなに言ってんの?
「二人して気持ち悪い声出させてんじゃねぇよッ! つーか、テメェも魔族ならシャキッとしやがれこの豚野郎がッ!!」
「罵って! もっと罵ってぇ!」
豚に豚というのは人間に人間というのと同じじゃねーか。
つま先を豚魔族のこめかみをピンポイントで打つ。と、豚は「ぴぎゃ!?」と、短く声を上げて気絶した。
藁の家は吹き飛んだ。木の家は燃やした。レンガの家は壁を砕いてお邪魔した。
それぞれの家の主がどうなったかは、言うまでも無い。
三匹の豚魔族(白、黒、カレー色)を青い空の下に並べる。
額に生えた子供サイズの小さな角をリンが切り落とした。
イヴが目を輝かせる。
「子供のおちんちんみたいでかわいい♪」
「思ってても言っていいことと悪いことがあるんだぞ。淫魔だからなんでも許されるわけじゃねぇからな」
ピンク頭のこめかみを親指と中指できゅっとする。
淫魔の尻尾が彼女のお尻の方でビタンビタンとのたうち回った。
「痛い痛い痛いダーリンのおちんちんは大きいですから許してください~!」
「大きさの問題じゃねぇよッ!! ちんこに例えるなって話だ」
銀の刃がゆっくりと俺に近づき、水晶球が俺の下腹部をじーっと見つめる。
「お前もお前でどこ見てんだリン?」
視線を逸らすように銀剣は自らさらしにくるまって、革のスリングに収まった。こいつら俺の下半身に興味津々すぎんぞ。
銀の剣を口にくわえて池の中からゆっくりと近づき、浮島に潜む半漁人魔族の元にやってきた。
いや、半漁というか魚に人の手足がついているタイプのアレである。
「ひいッ!? なんだお前は!?」
俺は剣を手にして魔族の喉元(えら元?)につきつける。
「角置いてけ。活け作んぞコラァ!」
「ひいいッ! 鱗で許して! 鱗で許してぇ!」
問答無用で魚の額に生えたトゲみたいな角をリンの光る刃でスパッと落とす。
俺が剣を扱えなくとも、握って振ればリンが調整して勝手に上手く斬ってくれた。
その場でビタンと倒れると、地面に二~三回跳ねてからしばらく……半漁人魔族は動かなくなった。
上空からパタパタと偵察担当――イヴが降りてくる。
「わは~お魚さんだ。イヴお刺身より塩焼きがいいなぁ」
浮いてる淫魔は幼女である。
「魔族ってのは魔族を喰うのか?」
「もしかしておにーちゃん、イヴのこと食べちゃうの? や、やだぁ……怖いよぉ」
「い、いや食べねぇから。悪かった。ごめんな怖がらせちまって」
イヴは着地すると俺に抱きついて頬に唇を寄せてくる。
「んちゅ~! やっぱり食べて食べて! ダーリンにぱくっと丸呑みされたいかもぉ」
「うわテメェ急に元に戻るんじゃねぇよ危ねぇだろ」
淫魔が密着すると同時に、俺の手からリンが離れて彼女の首筋に刃をぴたりと吸い付かせた。
イヴがぷるぷる震える。
「そ、そうよね丸呑みフェチはやりすぎよね。っていうか、むしろあたしがダーリンの息子さんを丸呑みにやめてごめんなさい刃を立てないでぇ」
「リン、そこまでにしておけ」
淫魔はしぶしぶ俺から離れると、首筋をそっとなぞった。赤い線のような傷がぴたりと閉じる。
こんな中身で顔も体もパーフェクトな美少女だ。本当に残念でならないし、見てるこっちが心配になる。




