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消したんじゃねぇ消えたんだよ!

「落ち着けって。なんもせんから。イヴに服を買ってやりたいしリンにも鞘が要るんだ。あとギルドに報告にも行かなきゃならんのだが、通っていいんだよな?」


「そ、それは……」


「町を出禁になるようなことはしてないだろ?」


「ごもっともです!」


 隊長が力なく衛兵たちにハンドサインで指示をした。


 若い衛兵が「門を開くんですか隊長!? 我々は楯ではないのですかッ!?」と、悲壮感たっぷりに叫ぶ。


 隊長はゆっくりと首を左右に振った。


「閉ざしていようと門の扉ごと消されるなら……抵抗は無意味だ……ははは……あははは……はぁ」


 なんか悪いことしたような気分になる。


「ええと、おっさん元気出せよ」


 じゃらじゃらと鎖の音が響いた。城門がゆっくり上がっていく。ようやく町に戻れそうだ。


 ふと視線を戻すとリンが切っ先で隊長を威嚇の真っ最中。俺は柄を握って鎮める。


「やめろって。いいんだ。まさか町の城門閉められるとは思わんかったけど、山の上の城が消えたってんなら、こうして備えもするだろ」


 イヴがにっこり微笑んだ。


「ダーリンじゃなくてあたしが消したってわかってもらえるように、もう一度ラブホ城出しちゃう?」


「らぶ……なんだって? つーか、あの城出せるのか?」


「広い場所があればポン! って感じ」


 そんなもんが出現したら、さらにドン引きされるだろうが。


「出さんでいいから。ほら行くぞ」


「遠慮しちゃってもう。面倒くさがってると誤解されっぱだよ?」


「かもな。けど、遠くにあった城が町の目の前に引っ越してきたら、みんなびっくりすんだろ。ほら、行くぞ?」


「しょうがないにゃぁ」


 俺の肩に手を添えてイヴが背中の羽をぱたぱたさせた。



 ◆



 リンを手に、全裸マントの上級魔族を引き連れて冒険者ギルドに向かう。


 ギルドの建物に入る。賑わう冒険者が黙り込み、ヒソヒソ声すら上がらない。


 昨日、世話になった受付嬢の元に向かうと。


「あばばばばばば」


 彼女は座ったまま失神した。


 やっぱむき身の剣を手に全裸マント魔族を連れてちゃ、誰だって驚くよな。


 担当者が気絶しちまったんで、じじい一歩手前くらいの屈強な親父系ギルド長が直々に手続きを済ませてくれた。


 ちょっと訊いてみるか。


「他に仕事ないか?」


「この町は初代聖王にゆかりがあるだけのド田舎だ! これ以上平穏を乱さないでくれ! いや、くださいお願いしますから」


 俺よりも何十年と生きてる大人に号泣された。


 イヴの服とリンの鞘を調達したら、次の町に行くか。


 ここがダメでも、どこかにきっと受け入れてくれる場所がある……よな?



 ◆



 で、今回の一件で俺に新しい二つ名がついた模様。


 城消しのダリン。


 片田舎でハイハイしていた噂は冒険者ギルドの情報網を経由して、一人歩きどころか全力疾走で大陸中を駆け巡ったそうな。


 迷惑すぎる話である。

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