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滅式

 イヴが俺の顔をのぞき込んでにんまり笑う。


「ダーリンにぴったりね」


「変な勘違いするんじゃねぇよ」


 名は体を表すってことなら、聖力絶倫はすっげぇ聖なるパワーを秘めてるってことかもしれん。


 実際、淫魔のイヴを封じてたんだし。


 ピンクの髪を揺らして少女はグッと拳を握る。


「カチカチ坊ギンギン丸って名前に改名しましょ! 硬いし銀色だし」


 聖力絶倫がぶるりと震えた。


「しねぇから安心しろ」


 イヴが銀剣に首をかしげる。


「じゃあなんて呼べばいいの?」


 カチカチ坊ギンギン丸……もとい、聖力絶倫は部屋の壁に切っ先をガリガリとさせた。


『ダークネスエヴォリューションファイナルデスクライシスジェノサイドブレイド・滅式』


「長ぇよ」


 中身思春期男子か。しかもなんかまがまがしいし。


 俺が呼び名をつけてやろう。


 そうだな――


「聖力絶倫から一文字とって……リンなんてどうだ?」


 銀剣が宙を舞った。柄の水晶球は七色に輝き、喜んでるみたいだ。


 イヴが「リンちゃんかぁ……ギンギン丸の方がかっこいいのに」と、残念がった。


 本気でギンギン丸にしたかったのかよ。


 さて――


 セントイナカに戻ってもいいんだが、外はすっかり暗い。


「どっかで野営せんとな」


 イヴが部屋の真ん中にあるベッドに尻から飛び乗って、マットレスをパンパン叩いた。


「ダーリンの目は節穴なの? ほら、ここにぴっかぴかのベッドがあるでしょ? あーんでもぉ、一つしかないからぁ……あれれぇおっかしいなぁ枕はふ・た・つ」


 ベッドの枕はたしかに二つ並んでいた。


 見えている罠である。


「まがりなりにもダンジョンだろ。どこに危険が潜んでいるかもわからんし」


「ちがいますーダンジョンじゃありません安全ですからー。この城の主が言うんだから間違いないんですー」


 淫魔は自分の居城に封印されていたようだ。


 しかしまあ……部屋はゴージャスで金銀財宝ざっくざくなのに、これまで賊(冒険者含む)に入られなかったのはなぜだ?


 あんなペラペラな城門未満の暖簾で守れるとは思えんが。


 ベッドの上で仁王立ちになり少女は腰に手を当て胸を張った。全裸で。


「つーかいい加減服着ろよ」


「昔から言うでしょ? 持ってない服は着れないって」


「無い袖は振れないの間違いじゃねぇか?」


「袖なしってことはやっぱり全裸じゃない?」


「うっせぇよ! 上手いこと言ったつもりになんな」


「細かいことは気にしたら負けよ! それにリンちゃんだって鞘無しの真っ裸じゃない!」


 途端に銀剣がふらふらしながら水晶球をピンクに光らせる。


 イヴは続けた。


「ダーリンは人間の物差しで測るけど、サキュバスにとって着衣とは人間の女の子に脱衣を要求するのと同じなのよ?」


 あっ、やっぱそうなのか。


「お前はドMだから辱められて正解なんだろ? 着ろ、服を。人間と同レベルになれ」


「はうぁッ! それならせめて露出度の高いエッチな衣類でお願いします。マイクロビキニとか逆バニー歓迎!」


「わかった。みなまで言うな安心しろ。質実剛健な冒険者らしい服を見立ててやるぞ。ズボン穿け。長袖着ろ」


「そんな地味なの着せられたら、こ、こここ興奮しちゃうじゃない」


「うるせぇぞ自称清楚系はぁはぁすんな」


「あんあん♪」


 処置無しである。


 とりま、今晩はこいつの部屋で一泊してあとのことは明日考えるか。


「ここをキャンプ地とする」


 俺はベッドで横になる。


 右手に聖力絶倫――リンを握って。


 イヴがぽかんと半口開けた。


「はへ? どうして? どうしてリンちゃんも一緒なの?」


「三人並んで川の字じゃ不満か?」


 銀剣のオーブが白く発光点滅した。これは喜んでる……のか?


 俺はイヴに告げる。


「いいか。俺が寝てる間に変なことすんじゃねぇぞ」


「わかったわ! 約束する! 絶対にしないって!」


 淫魔はキリッとどや顔で応えた。

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