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落雷ゴブリンのどたばた奮闘記  作者: Nera
第一章 オレはゴブリンである。名前はまだなかった
3/56

3話 初戦 ~ゴブリン VS 魔狼~

茂みから顔を出してみると遠くで二人組が必死に取っ組み合いをしていた。

正確にいうと、狼系の魔物と一人の人間だが。


獲物を押し倒し喰らおうとしてる魔狼の口を必死に抑えてる冒険者と思われる人間が必死に攻防してる姿だった。

辺りには俊足鈍鳥(クイック・ドードー)の死骸が2匹転がってることから

依頼を受けた冒険者が俊足鈍鳥(クイック・ドードー)を狩り終えて油断したら魔狼に襲われたという事だろう。

()()()()()()()()()()()()なら『勝手に戦え』と呟くところだが…。


問題なのは、あれは森牙狼(フォレスト・ファング)という魔物で

立派な黄色い体毛と牙を有してる何でも喰らう狂犬であり近場で生息してる魔物の主ともいえる狼だ。

前世の記憶が無いなら俊足鈍鳥(クイック・ドードー)は鈍感の癖に足が速いチキン野郎。

森牙狼(フォレスト・ファング)は、片っ端から喧嘩を売ってくるいけ好かない暴食の狂犬と思ってた。


…が前世の記憶と思われる知識からは、森牙狼(フォレスト・ファング)は成長すると火炎魔法をぶっ放してくる【Bランク討伐対象】と言われる結構ヤバい魔物になることが分かった。


冗談じゃない!

こんな奴を放置したらおちおち安心して眠れやしないし

目が覚めたら虫の息で『上手に焼けました』状態だったら最悪だ!

いつかは討伐されるとはいえそれがいつになるか分からない。

幸い獲物に夢中の魔狼はこっちに気付いていない。


【本能】は〈馬鹿な冒険者を嘲笑しつつ逃げた方が良い〉と騒いでいて

【理性】は〈勝てない敵に挑まずにさっさと逃げた方が〉と説いている。


正直、間抜けを馬鹿にしつつこの場を去った方が良い。

だが、次の間抜けは自分なのかもしれないのだ。

この世は弱肉強食。

敵に隙を見せた方が負けだ。

そしてアイツは隙だらけ!あの無防備な後頭部に一撃を入れてやる!


殺られる前に殺っちまえ!

先手必勝と言わんばかりに茂みから飛び出して間抜けを狙ってる森牙狼(フォレスト・ファング)に向かう。

そして思いっきり踏み込んで両手で振り絞った『こん棒』を遠心力を利用して

森牙狼(フォレスト・ファング)の後頭部を上から思いっきり叩きつけた。


鈍い音がして叩きつけた振動が自分の腕を通して全身に行き渡り少し遅れて激痛が迸った。

一瞬、目の前が暗くなって体中が感電した感覚がした。

この時、ようやく自分は落雷で体力を消耗して瀕死だったのを思い出した。

オレは後悔した。


目の前の森牙狼(フォレスト・ファング)は全く痛みに動じずにゆっくりこっちへ視線を向ける。

その顔は敵意と怒りと残虐な顔をして自慢の【牙】を見せつけるかの様にゆったりと口を開ける。

思わず後ずさったが時遅し。

森牙狼(フォレスト・ファング)はオレ目掛けて飛び込んできた。


どうやら()()()は獲物を押し倒して首元を噛み千切るのがお好きのようでオレの首元を執拗に狙ってくる。

押し倒されたオレは当然、『さっきの獲物』と同じように口を必死に抑えてるが力がほとんど入らない。

手足に限界がきて激痛が迸って感覚がつかめないのだ。

本能で慌ててなんとか生き延びようと足掻いてるがパニックで有効打がわからない。


このままだと喰われる!

そう思った時、奴の首元が見えて何故か怒りを感じた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


オレは噛むのに夢中で隙だらけだった奴の首元に右腕でしがみ付いて噛み付いた。

森牙狼(フォレスト・ファング)はオレの反撃が予想外だったのかそれとも相当痛かったのか反撃せずに動きが止まった。

その隙を見逃すわけも無く空いた左手の人差し指と中指で奴の左目を思いっきり貫いた。

水っぽい音となんかが小さく破裂した音がした。

奴が悲鳴を上げたのは言うまでもない。


ははっはっはは!ざまあぁみろぉ!

いくら何でも眼球は鍛えようがない!

奴の悲鳴が本当に心地いいいいい!

心にゆとりができて少し落ち着いたようだ。


お前らと違ってゴブリンや人間は肉を噛み切れるようにできてない。

葉で圧し潰して練って噛むようにできてんだ!

このままかみ殺してやるうううう!!


オレはそのまま喉元を気力と体力が持つまで噛み続ける。

奴がオレに焦ったのか爪で背中を引っ掻き始めた。

…が喰われたり内臓に届かないならどうってことは無かった。

既に激痛で感覚がおかしくなっているのだから。

さっきはオレが奴にしがみ付いていたが今度は奴からしがみ付いてきた形となった。

なので空いた手を使って残りの目を潰そうとした。


だが奴も馬鹿ではなかったようで転がってオレを潰そうとしてきた。

慌てて腕をぴったりと胴体に回して噛み続けた。


身体中が打ち付けられて意識が飛び掛かる。

目の前は血がぶち撒かれたように真っ赤に染まっている。

痛みは既に麻痺して感じられなくなったがそれでも必死に意識を保つのが精一杯。

それでも噛み続ける。

だが肉体はあっちの方が頑丈なので不利だった。

打ち付けられる度に【死】がどんどんオレに迫ってるのが分かる。

意識がどんどん遠のいて思考が鈍くなっ て く る。



どんどん目の前が暗くなってきて痛みが薄れていく。

ああ、死ぬのか。

視界が狭くなり瞼が閉じて意識が闇に沈む前に何かが光った気がした。

そ し て 意 識 が 闇 に 沈…。






ふと目が覚めた。

視界がぼやけて何も見えないが仕方がない。


【本能】は〈寝てないで立てよ!動けよ!〉と騒いでいて

【理性】は〈寝てないで状況を把握して!〉と説いている。


…なんかデジャブがする。

というかさっきまで森牙狼(フォレスト・ファング)とやりあってたはずだが。

全身が痛みで動けないが生きているってことだ。

なんで助かったか疑問だ。何故だ。

次々と思い浮かんでくる疑問は、次の一言で解消されることとなる。


「おっ!起きた!」


さきほどの冒険者と思われる人物が目を開けてるオレに気付いたようだ。

いつの間にか視界のゆがみが収まっていた。


動けないので仕方なく現状を把握してみる。

どうやら真夜中のようだ。


そして奴は鍋からスープらしきものを皿によそうと

右手にもってうつ伏せの状態のオレに近づいてきた。


Fランク討伐対象:ゴブリン =5歳児の攻撃で複雑骨折するレベル

C+ランク討伐対象:森牙狼  =ベテランのC級冒険者10人分の戦闘力


ただし森牙狼はただのゴブリンだと侮って舐めプレイだった。

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