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落雷ゴブリンのどたばた奮闘記  作者: Nera
第一章 オレはゴブリンである。名前はまだなかった
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2話 ゴブリンのスキルは使える

-むかしむかしある所に意地悪な王様が居ました。

ある日、王様は辺境にある農村に住む貧乏な若者を仕えさせました。

若者は貧しいながらも幸せな生活を送ってましたが困惑しつつ王様に仕えました。

若者は美しい娘たちに囲まれて豪華な食事を味わって幸せな生活を送りました。

仕えさせて10日後、王様は若者を元の農村に帰しました。

一度贅沢を味わった若者は、貧乏な生活の苦痛に耐えきれず王様に土下座して懇願しました。

その無様な姿を見た王様は、過去類を見ないほどの大笑いをしたそうです。

めでたしめでたし。


これは〈人は一度、豪華な生活を味わうと元の生活を送れなくなる〉という昔話だ。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

前世の記憶の片隅から引っ張ってきたものだ。

問題なのは、格言が示すような状況下に自分は置かれているということだ。


つまり自分は、人間の価値観をもってしまったゴブリンであり、前世の記憶や経験を引き継いでしまったばかりにゴブリンとしての生活が送れなくなってしまった。

しかも前世がそこそこの物知りだったのもゴブリンとして生活するのはマイナス要素だ。


悪役で高慢ちきな【公爵家の令嬢】が悪事を暴かれて断罪されて国外追放されて平民として生きていける可能性が無いのと同じ理屈だ。

自分と周りの価値観が違い過ぎて苦痛になって生きていけないのだ。

【頭スカスカのおバカの不良】のほうが却って割り切れるから社会で適応できるのだ。


さて、前世は人間だったというのは記憶が物語っているが正直自分は異世界から転生したのか、この世界の人物から転生してきたのかわからない。

まず自分の名前が思い出せない。

自分がどんな人物だったのかどのような最後を迎えたのかもわからない。

考えれば考えるほど目の前が赤くなって頭が痛くなってくる。


【本能】は〈ゴブリンは過去も未来も気にしない!大事なのは今だ〉と騒いでいて

【理性】は〈とりあえずこれからどうするべきか考える事が重要だ〉と説いている。


全くその通りだ。

前世の記憶が中途半端で役に立たない今、どうするべきか考えてみる。

とりあえず【長生きをしてみる】のを目標としてみよう。

難しい事考えてもゴブリンじゃどうしようもないし頭が痛くなってくる。

というかゴブリンの頭脳じゃオーバーフローする。

…なんか肝心なことは思い出さないのに余計な事を知ってるのが腹立たしい。



どうやったら長生きを達成できるか考えてみる。

思えばゴブリンって繁殖力が強いけどすぐに死ぬんだよな。

『やだ、ゴブリンの平均寿命短すぎ』って驚かれるほど貧弱なんだよ。


例えるなら5歳になる女の子に両脚をクワでぶつけられると

成人ゴブリンでも複雑骨折して寝たきりになるほどの貧弱さだ。

野犬に喉元を噛まれると出血多量で死ぬし…。

ああ、これは当然か。


でも今更、ゴブリンとして生活していくのは嫌だし

かといって見かけがゴブリンである以上、人間として生活は望めない。

詰んだ。オワタ。どうすればいい!?

普段、考え事しないから頭がどんどん痛くなってくる。


転生したらどうするべきかなんて今まで考えてこなかった。

当然だよな!?


とりあえず定番の【冒険者】になってみよう。

なんで冒険者なのかオレにも分からない。

なんか【ゴブリンは雑魚】とかそういう『常識』から思い浮かんだ。

意味が分からないがこれも前世の記憶から出てきたんだろうな。


【冒険者】になる為にオレは【冒険者ギルド】に訪れるのを想像してみよう。

イメージトレーニングは重要だからな。

ほぼ第一印象で決まるからこういうのはやっても損はない。

というか自己紹介で滑ると取り返しのつかないことになる。

ましてや、自分は人類どころか亜人種の敵であり【冒険者ギルド】は、我々魔族からすれば不俱戴天である【敵対組織の総本山】だ。

ここは慎重にオレが【冒険者ギルド】に行くイメージを思い浮かべる。




「オレ、前世は人間のゴブリン!冒険者になりにきました!」

「殺せ、ゴブリンだ」

「ぬわーーっっ!! 」

【You are dead】


オイオイオイ死ぬわオレ

冒険者ギルドに訪れたオレが屈強な冒険者に殺されるビジョンを

頭を振って吹き飛ばす。


…なんか考え事で疲れた。

そして真昼間で眠い。

さっきから左目の視界が歪んでる。

ゴブリンは夜行性だから仕方がない。

ただ、右目がくっきり辺りが見えてるのが気になる。


でも寝床はまだ遠い。

何を考えてこんなに遠出したんだか。

本能が何でここまで駆り立てられたのか分からない。

まあ、ゴブリンだから仕方がない。

その一言で済む。済んでしまう。なんか悲しくなってくる。


そうして考え事しながら寝床がある洞穴を目指して林を通り掛かった時に違和感を覚えた。

()()()()()()が辺りに漂ってる。

オレは慌てて近くの茂みに身を潜めた。


なるほど、ゴブリンとしての能力(スキル)は正常に使えこなせるのか。

ゴブリンは基本的に【オス】しか生まれない。

しかし【メス】が居ないとゴブリンは繁殖ができない。

その為、【メスの匂い】に敏感だ。

その進化の過程で『嗅覚』が発達したとも夜行性なので視覚以外にも感覚が発達したともいわれる。


問題なのは、()()()()()だ。

野生動物や魔物が金属なんて身に着けているわけがない。

つまり近くに武装した人間が居るって事だ。


相手は、武装した人間。もしくは武具を扱える知的生物か。

しかも基本的に一人(ソロ)はあり得ないので絶対に仲間(メンバー)がいるはずだ。

こっちは落雷のショックで体力を消耗した一匹のゴブリン。


持ち物は、そこら辺に転がってた枝を削って作った『こん棒』で防具は『皮の腰巻』のみ。

勝てる相手じゃないし、こっちが無抵抗でもあっちは敵意剥き出しだからたちが悪い。

まあ、同族たちの行ないが悪いせいなんだけど。


【本能】は〈勝ち目はないからまともに交戦せず一目散に逃げろ!〉と騒いでいて

【理性】は〈退路を確保しつつ情報を把握する為に周囲を警戒せよ!〉と説いている。


なんだろう。死の危機が迫っているのに興奮してきた。

前世では、好戦的だったのか珍しい体験でワクワクしてるのかわからない。

ただ、自分は普通じゃなくなった…ということは分かった。


()()()()だったら一目散に飛び出して逃げるか戦うかしてただろう。

今は、人間としての経験と知識があるからまず落ち着いて深呼吸をする。

そしてオレは音を立てずに『嗅覚』を使って【匂い】が漂ってくる場所を特定する。


茂みに隠れた自分から見て18時方向から匂いが濃厚に漂ってくる。

耳を澄ましてみればなにやら声と音が聴こえる。

なにやら戦闘中のようだ。

今の所、こっちに危害が来る気配はないがこの先どうなるか分からん。

ちょっと顔を出してみてどうなってるか見た方がいいかもしれない。


でもなんだろう。

()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()

いや、ゴブリンとして今までなんなく使ってきたんだけど。

人間の記憶と知識が融合した現在で意識してみるとなんか懐かしい感じがする。

人間とゴブリンの経験がごちゃ混ぜになって頭がおかしくなってる様だ。


…って、こうやって考え込んでる場合じゃない。

オレは背後と周りを見て安全を確認した後、茂みからこっそり顔を出してみた。



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