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落雷ゴブリンのどたばた奮闘記  作者: Nera
第二章 死神に魅入られた少女と亡霊に見初められるゴブリン
23/56

23話 オークとはゴブリンの上位互換種である

地獄のような光景を見ながら道路を進んでいく。

あれから100人以上の死体を見てきたが未だに生存者を見つけられていない。

代わりに会うのはゴブリンと魔物たちである。

もうこの街には生存者よりも加害者が多いのかもしれない。

そう思うほどここは火に包まれた地獄の様な場所であった。


「ゴブタロウ生存者は見つかったか?」

「全然居ない、そっちも居なさそうだな」


建物から出てきたエルティアナの話から生存者が見つからなかったの察する。

とはいえまだ大虐殺から1日すら経っておらず生存者はまだ居てもおかしくはない。


「ねえグリザイユ伯爵家の屋敷に行ってみない?」

「あそこは有事の際に避難場所になるしこの辺で生存者が居ないのも納得できるよ」


彼女の言う通り、重要拠点であるその場所なら生存者がいる可能性が高い。

逆に言えばこの付近の生存者捜索を打ち切ったと考える事ができる。

もしかしたら瓦礫の下に埋もれたり物陰に隠れている生存者が居るかもしれない。


だがオレ達は憶測よりも確実に生存者が居る場所に向かわなければならない。

生存者を1人でも多く街から逃した後、オレ達もこの地獄から脱出するのだから。

グリザイユ伯爵家の屋敷の前にある中央広場を目指して駆け出していく。


「なあ、エルティアナ?()()()()が変わったと思わないか?」

「少なくともこの辺りの住民の避難は上手くいったのか兵士の死体ぐらいしかないね」

「虐殺ではなく戦闘があった痕跡になっている」


中央広場に行く道を進んでいくと民間人の死体が少なく感じる。

それは彼女が言う通り、逃げ遅れた住民が少ない事を示している。

そして兵士の死体が多いということはここで組織的抵抗をしていた事は明白である。


「しかしこの壮絶な死に様をみると大物が居ると見ていい」

「火炎魔法で焼き尽くしたり鎧を粉砕できる奴か…絶対に逢いたくないな!」

「少なくとも魔法を使えるという事は【B級討伐対象】に分類されるよ」

「不意打ちを受けないように後方や建物の隙間にも警戒して進もう」


問題なのは、兵士の死体が魔法で焼かれたような痕跡があったり等身大の鉄球で圧し潰されたかの様に原型を留めていない肉塊が多く見られた点だ。

さきほど交戦した【Cランク討伐対象】の血塗られた(ブロッドスミアード)大鷲(ホーク)が複数居たとしてもこんな無残な結果にはならない。


【Bランク討伐対象】


【Cランク討伐対象】ですらまともに交戦したら勝ち目が無いのにその上である。

もっともオレより強い訓練された王国軍の兵士達が無残に殺されると考えるとその強さは妥当かもしれないと考えてしまう自分の頭にうんざりをする。


その時、嗅覚がこの地獄のような血の匂いと死臭の中から別の匂いを感知した!

ゴブリン的本能からその匂いの正体はすぐに判明する!

女性の生存者、それも複数の匂いがした!


「エルティアナ!近くに女性の生存者が居る匂いがする!それも複数だ!」

「さすが女に飢えている事に定評あるゴブリン!この激臭の中でも性欲が勝るか」

「馬鹿にしてるのか?」

「ゴメンゴメン、それより何で匂いで生存者だと分かったの?」

「残念ながら女に飢えているとはいえゴブリンは屍体愛好家(ネクロフィリア)じゃないからさ」

「そういうことか」


納得したという顔をしてエルティアナはオレの指示に従って走っている。

鉄仮面を熱していくほどの熱風が吹き荒れており死屍累々の犠牲者と瓦礫が転がっている地獄で会話する内容ではない。

ところが彼女は至って平常運転だ。

いや、どんな状況でも取り乱すことなく普段通りにできると考えればすごい事だが。


「青い屋根の所を右に曲がるぞ!」

「そのまま進むと馴れ親しんだ宿屋があるね。女将さんの料理は美味しかったな」

「どの面下げてそこに戻ればいいんだ!」

「大丈夫、顔は隠せているから仮面を変えればバレないよ」

「そんな事言ってる場合か!」


どうも彼女はどっかおかしい。

複数の属性魔法を使いこなせるほどの実力者の癖に言動が無茶苦茶である。

話は通じているはずなのに彼女の言動と行動が理解できない。

こっちをリラックスさせる為にジョークを言ってるのだろうか。

そう思いつつ慣れ親しんだ宿屋に行く道を進んでいく。


「きゃああああああああ!誰かッ!誰かあああッ!!」


前方から女性の甲高い悲鳴が響いてきた。

周囲を警戒しつつ建物の陰から悲鳴が消えてきた所を覗き込んだ。


そこには3人の王国兵が武器を構えてピンク色の肌をしてる巨人を見上げていた。

一方、彼らと対峙している巨人は鎧を纏って武器を持っている。

手にしている武器も巨人の全長と同じくらいの両手剣であった。


その巨人が両手を振り上げて王国兵の1人を叩き斬ろうとする。

彼は慌てて槍を構えて柄で斬撃をガードしようとするがそれは紙細工のように容易く柄どころか鎧すらも両断された。

傍に居た王国兵が激高し両手剣で斬り掛かるが蹴り飛ばされてしまった。

そして巨人が呪文のようなものを呟いたと思うと【火の玉】が掌から打ち出されて衝撃で身動きが取れない兵士を焼き尽くす。


「ぎゃあああああああああああああ!!!!あああああああーーーーっ!!」


焼かれた兵士がすべての力を振り絞った断末魔の叫びは圧巻だった。

火を消そうとじたばた転げ回っていたがすぐに動かなくなっていた。

その2人の壮絶なる死に様を傍観していた生き残っている最後の兵士は、覚悟を決めたのか槍を構えて突撃をする。

しかし、剣でなぎ倒されて兵士は近くの建物の石壁に激突してそのまま動かなくなった。

こうしてこの場で抵抗を試みた王国軍の部隊は全滅した。

そしてその惨劇は、刹那に起こった出来事だった。


この街ならどこでも発生してる出来事であるがまだ事態は悪化しようとしていた。

兵士3人の命を散らした巨人の視線の先には座り込んで泣いていた女性達が居た。

1人の少女とその母親とみられる若い女性が壁際に座り込んでいたのだ。

失禁でもしたのか新鮮な小水の匂いが漂ってきておりゴブリン的本能を刺激するも興奮するどころか逆にその()()()の脅威を引き立て居るスパイスになっていた。


新たな惨劇が生まれようとしていても身体が全く動かなかった。

その巨人は、ゴブリンの上位互換種である豚巨人(オーク)だったからだ。


豚巨人(オーク)

【Bランク討伐対象】


そのピンク色の肌は、鋼の様に硬くジャイアントゴブリンと比較しても一回り大きく強靭な巨体である。

しかも賢くて『火炎魔法』を唱える事が出来るうえに鍛錬を怠らずに積極的に防具を身に着けて武装している。

ただでさえ1体の豚巨人(オーク)は、ベテランの冒険者である【Bランク】に匹敵する戦闘力を持っているのに仲間思いで全体主義のせいか仲の良く生活してるのが更に危険度を上げている。

同種には雌が存在しており他種族や家畜の雌でしか子孫を増やせないゴブリンとは色んな意味で上位互換の種族である。


【本能】は〈勝てるわけない!必死に逃げるんだよ!〉と騒いでいて

【理性】は〈今すぐに死んだフリをしてやり過ごそう!〉と説いている。


3人の兵士が眼中で無残に殺されて恐怖で座り込んで震えている2人の女性。

その彼女達に向かってゆっくりと笑いながら歩んでいる豚巨人(オーク)

それを遠巻きから見ながら声援を挙げている8体の豚巨人(オーク)

そしてその惨劇を指を咥えて見ている事しかできないゴブリン。

こうして新たな惨劇の幕上げが…。


ここで1人の存在を忘れていた。

後ろにいるはずのエルティアナに向かって振り向く。

すると彼女は()()()()()()

ただ顔の火傷跡と右瞼の傷も相まって青い瞳は身が凍り付くほど怪しく輝いている。

目は全く笑っておらず殺意で満たされていた。


「ゴブタロウ準備はできたか?」

「ああ、うん、できたよ」

「じゃあ、行こう」


安心させる為なのか彼女は、一瞬だけ優しく微笑んで1体の豚巨人(オーク)を見据える。

左腕を突き出して掌を両手剣を持った豚巨人(オーク)に見せつける。


「氷結 初級魔法“氷の弾丸(アイスブレッド)”!」


彼女の掌から高速で放たれた小さな氷塊は、新たな獲物をじわじわと追い詰めていく豚巨人(オーク)の頭部を吹っ飛ばした。

司令塔を失った肉体は、失禁した彼女たちの目の前に倒れ込む。

その一瞬の出来事に何が起こったのか分からずオレ達以外は呆然としている。


「ゴブタロウ!あの子たちを頼む!」

「分かった!」


オレは身動きが取れない彼女たちに無我夢中で駆け出した。


「貴様ラ!ヨクモ同胞ヲ!!」

「オノレ!絶対ニ許サンゾ!!!」


ようやく不意打ちに気付いた豚巨人(オーク)達は武器を構えて激高して叫んでいた。

それやったのオレじゃないから!

だからオレに向かって叫ぶのは止めてください。


「我ラヲ照ラス焔ヨ凶弾トナリ敵ヲ焼キ尽クセ 火炎 初級魔法 “火球(ファイアボール)”」


嫌な予感して呪文を唱えたと思われる奴を見る。

1体の豚巨人オークの掌から放たれた火の球がエルティアナの方に向かって高速で飛んで行った。


「エルティアナ!」

「てい!」

「えっ」


彼女は、なんと眼中に飛び込んできた火の球を片手剣で弾き返した。

まさか魔法を弾かれるとは思っていなかったのだろう。

火炎魔法を放った豚巨人(オーク)が呆気に取られて自身が放った魔法に焼き殺された。


なんでエネルギー体を剣で弾いて詠唱者にぶつけられるのかさっぱり分からん。

まあ、精鋭部隊に居た人なんだし地獄の特訓に耐えて取得した技能(スキル)なんだろう。

彼女の顔にある火傷はその時にできたと考えて女性たちの方に向かう。


「おい大丈夫か?」

「ああああ、ああ、あ、はい だ 大丈夫です」

「お母さん!お母さんー!」

「ジュリー!大丈夫よ大丈夫だから!」


どうやらこの座り込んでいる2人は母娘のようだ。

だからといってこのまま放置してるわけにもいかない。

エルティアナがヘイトを集めて囮になっているとはいえ、いつこっちに飛び火してくるか分かったものではなくオレが来てもここが危険なのは変わりがなかった。


「ここじゃ危険だから移動するぞ」

「早く!早く立って行こう!」

「ご ごめんなさい。腰が抜けてしまって」


まあ、地獄のような場所で自分たちを守ろうとして踏み止まった兵士達が無残に殺されたを傍観していたらそうなるか。

仕方なく辺りを警戒しながら近づいて母親に向かって手を差し伸べる。

この時に跪いて視線の高さを合わせると良いとエルティアナ・ゼミナールで習った。

そんなことを考えているとオレの手を取って立ち上がった母親が娘を立たせていた。

一先ず彼女たちを戦場から離脱させる為に見渡して脱出経路を考える!


「ああああお母さん!お母さん!あそこに!!あそこにいい!!」


失禁しているせいか小水の匂いがゴブリンの嗅覚を刺激して思考が乱れている時に女の子が震えながらオレの後方を指して叫んでいた。

慌てて振り返ると殺意剥き出しの豚巨人(オーク)がこちらを睨んでいる。


「嗚呼!大イナル火精蜥蜴(サラマンダー)ヨ!我ハ汝ト契約セシ者。ソノ灼熱ノ息吹デ灰燼ニ帰セ 火炎 中級魔法“広範囲・火炎爆弾ワイドレンジフレイムボム”!」


奴が何かを叫んだかと思うと掌から赤く発光する何かをこっちに向かって放出した。

それは赤く軌道を描いてこっちに向かって飛んでくる。


「強力な火炎魔法だ!伏せろ!!」


見たことあるな…と思ったらエルティアナがゴブリンの群れを凍死させて砕いた氷結魔法の火炎バージョンだとすぐに察した。

だがとてもではないが回避できそうになかったので頭を手に覆って伏せる。

その行動は、少しでも火傷の範囲を抑える為の本能が選んだ防衛手段であった。


「塊土 中級魔法“土塊防壁(クロッドバリア)”!」


エルティアナが何かを叫んだと思う。

大きな音と共に地面が大きく揺れて地震が起きたと感じた。

その揺れはすぐに収まった。

その直後、前方から爆音と共に発生した衝撃で身体が大きく揺れておりまるで暴風雨に遊ばれている小舟の如く立て続けの振動で気持ち悪くなる。

揺れが収まってもなお、熱さを感じられなかったので起き上がって確認をする。


前方には民家ほどの高さに盛り上がった大きな土の壁があった。

一瞬で石畳を突き破った大質量の土壁が広範囲を焼き尽くす火炎魔法を防いだのだ。

誰がやったかって?

もちろん、複数属性の魔法を使いこなすエルティアナだ。


ちょうど豚巨人(オーク)の群れとオレ達を分断するかのように作られた土壁。

それを上手く利用してない手はなかった。


「よし今のうちに逃げるぞ」

「ああ!ゴブリンがゴブリンが!!」


母親とみられる女性がオレに向かって指差してゴブリンを連呼している。

鉄仮面が外れたのかと思って顔を確認したが特に問題はなかった。

ゴブリンはオレが原因ではなかった。

もう1つの可能性を考えて慌てて振り返ってみる。


そこには、こん棒を持ったジャイアントゴブリンが居た。


〈女だ!それも複数居るぞ!げへへへ!〉


ここで発生した戦闘で駆けつけてきたのだろう。

邪悪な笑みを浮かべながらこっちに歩んでくる。


左には土壁が右には建物が連なっておりここは通路のようになっていた。

そして前方には、ジャイアントゴブリン、後ろには震えて立ち竦んでいる民間人。

左右に展開できず退路も断たれてしまった。


こいつをさっさと片づけないとまずい。

更なる増援が来る可能性があったしなにより白兵戦で分が悪かったからだ。

その時、名案が浮かびすぐさま実行に移した。


「暗雲に囚われた我の肉体に刹那の助けを 電撃 中級魔法“雷系身体活性化(エレキテルドーピング)”!」


もはや慣れた感じで魔力を体内に巡らせて強化魔法で身体能力を底上げにする。

そうとは知らずに絶望感を増やすために呑気にゆっくりと歩んでいるジャイアントゴブリンに向かって駆け出して奴の股間をグラディウスで斬り付けた。

オレの動きに反応できなかったのか股間にクリティカルヒットをしてしまい叫びながら倒れ込んで斬られた股間を押さえて悶えている。

その隙に図体がでかい奴の背中に左手を当てた。


身体中を巡っている魔力を奴に放出するようにイメージをする。

ぎゅっと集めて左手に向かって押し出す感じをした。

しかしイメージを繰り返しても何も起きなかった。


「ああ、大切な事を忘れてた」


そこで血塗られた(ブロッドスミアード)大鷲(ホーク)を黒焦げにした時を思い出して何かが足りないことに気付く。


「我の領域に踏み込む者に無慈悲な裁きを 電撃 中級魔法“接触防衛放電エレクトリックディスチャージ”!」


魔法を発動させる呪文を唱える。

それと同時に体内にあった魔力が強力な電撃魔法となったようで、触れた手を通じてジャイアントゴブリンに襲い掛かり瞬く間に奴の命を奪い取って肉体を黒焦げにした。


「まさか本当にできるとは…」

「攻撃できて強化魔法を解除できるし一石二鳥だな」


オレが使っている強化魔法は、指定されているはずの時間制限がない。

魔力の供給が途切れるか自分で解除されない限り永続してしまうのだ。

逆に考えれば生み出した魔力を少しずつ消費して身体を強化していることになる。

その魔力を利用して攻撃魔法として使うことはできないのか。

ジャイアントゴブリンと対峙して思いついた案をやってみたが成功して良かった。


以前、ゴブリン退治の時に同格であるジャイアントゴブリンを相手にしたときは、かなり手こずっていたのを踏まえると自身の成長が実感できる。

目の前の脅威を退けた以上、この場に長居は不要だ。

そう思い女性たちに声を掛けようとする。


ところが急に過呼吸になって吐き気を伴った。

何が起こったか分からずに思わず座り込んでしまった。

何度も身体が嘔吐させようとするが口元を負う布を取って素顔を曝け出すわけにはいかないので必死に抑え込む。

まるで運動不足の人が急勾配の坂を20分以上走ってきた様な疲労と吐き気を催している。

身体に何が起こったか分からないがなぜそうなったかは想像できる。


過去にないほど連続して魔法を使用したのだ。

その行為は、肉体的にも精神的にも負荷が掛かっているのはすぐに分かる。

もしかしたら魔力のコントロールをしないとこうなってしまうのかもしれない。

そう考えていると過呼吸が落ち着いてきたので再び立ち上がった。


「だ 大丈夫ですか!?」

「ハァハァちょっと魔法の使い過ぎで…もう動けるから心配しないでくれ」


守るべき人に心配されるなど恥にもほどがある。

だが恥じてる場合ではなくこの場を後にしなければならない。


「あとで魔法のコントロールの仕方を教えてもらうか」

「えっ?何か仰いましたか?」

「いやなんでもない」


彼女達を伴って隠れるように土壁に沿って警戒しながら歩いていく。

いつの間にか周りが静かになっており戦闘が終わっているのを暗に告げている。

そして目の前で土壁が途切れているのを見てそっと戦闘があった場所を覗き込んだ。


そこには複数の豚巨人(オーク)が地面を倒れ込んでおりピクリとも動いてなかった。

横たわっている彼らは、両断されたのか上半身を失っていたり凍結した上半身の半分が砕け散っていたりしており既に事切れているのは一目見て分かった。


そんな凄惨な現場で立っているのは2人。

右手で片手剣を構えているエルティアナ。

もう1人はどこから拾ってきたのか全裸の女の首元に刃を突き付けて怯えた様子で震えている豚巨人(オーク)である。

わざわざそんな事をしているということはあの女性は生きているのだろう。

あの行為をみるとある事を思い浮かべる。


【肉の盾】

大体追い詰められたゴブリンがやる最後の手段である。

要するに人質だ。

たまに肉の盾のせいで動き難そうに突っ込むアホが居るがそれはどうでもいい。


後ろの姿しか見えないせいでエルティアナの表情を窺うことはできない。

ただ、彼女の性格からして絶対にそれを許さないのは想像できる。

とはいえ下手に動けば人質の命は危うくなる。

そしてそのまま時間を稼がれるとこっちが不利になるのは明白である。

予断を許さない状況下で静止している間、時間が刻々と過ぎていく。


ここで下手に飛び出せば彼女に迷惑を掛けるだけだと思うので護衛対象達に後ろを警戒してもらってオレは、固唾を呑んでこれから起こる動向を見守った。


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